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プロローグ

作者: 水沼早紀
last update 最終更新日: 2025-01-23 18:52:22

【プロローグ】〜副社長との出会い〜

* * *

「大変お待たせ致しました。 角切りりんごと紅茶クリームのパンケーキになります」

「うわぁ……」

 お、美味しそう……! そして何より、見た目が美しいっ!

 フワフワで厚みのある茶葉入りのパンケーキに、香り豊かな紅茶クリーム。そしてその周りを囲む、黄金色が輝く美しい角切りりんご。

「美しいっ……」

 これぞカフェのパンケーキ。 いや、もはやそれ以上かもしれない。

 見た目のクオリティに関して言うと、パーフェクトすぎるくらいだ。 これは女子受け、間違いなしのスイーツだ。

 わたしはすぐにカバンからスマホを取り出し、一番いい位置から写真を撮影し、それをInstagramにハッシュタグを付けて上げる。

 これがわたしの休みの日のルーティンだ。休みの日はどこかのカフェに出向き、そのお店のオススメのスイーツを必ずチェックしている。

 もちろん、新作のスイーツや期間限定のスイーツなどは外せないため、必ずチェックするようにしている。

 こんなことをしているせいか、わたしには彼氏など出来ない。

 今のわたしには、恋愛することよりもスイーツを食べる方が優先なのだ。

「それでは……いただきます」

 Instagramにあげた写真をチェックした後、ナイフとフォークを両手に持ち、出来たばかりのパンケーキに手を伸ばしていく。

「うん、美味しいっ」

 何これ、めちゃくちゃ美味しい。フワフワなのに軽い口どけのパンケーキに、甘さ控えめなのにしっかりと紅茶の風味を感じるクリームとの相性がバツグンすぎる。

 何よりこの角切りされたりんごはシナモンが少し入っていて、口に入れた瞬間の爽やかなりんごの酸味とシナモンのフワッと香るほんのりとした香りが更に美味しさを引き立てている。

 これは間違いなく、文句無しで美味しいスイーツだ。絶対に食べた方がいい。

 くどくないし、クリームの口どけも滑らかなのに軽く食べられてしつこくないし。甘いものが苦手な人でも食べやすいように出来ている。

「やばっ、止まらない……」

 あまりにも美味しくて、ナイフとフォークが止まらなくなる。

「ごちそうさまでした」

 あまりにも美味しくて、あっという間にパンケーキを食べ終えたしまったわたし。

「うん」

 これは評価高いな、もう一度食べたくなる。

 そしてお会計しようと席を立ったその時……。

「きゃっ……!?」

 誰かにぶつかってしまったみたいで、わたしはその衝撃でフラついてしまったようだ。

「おっと……!」

 どうやらそんなフラついたわたしを、身体で受け止めてくれた人がいたようだ。

「大丈夫ですか?」

「あ、す、すいません……!」

 わたしはすぐにその人から慌てて離れた。

「ケガはないですか?」

「は、はい。すみません、わたしの不注意で……!」

「いや、ケガがなくて何よりだ」

 と咄嗟に謝って顔を上げた瞬間に、わたしはその人から目を逸らせなかった。

「……えっ」

 ウソッ……。この人って……。

「どうかしました?」

 この人……。株式会社【スリーデイズ】の副社長さんじゃない……?

 なんでこんな所に、スリーデイズの副社長がいるの……?

「あっ……い、いえ! 本当にすみませんでした!」

 わたしは一瞬、頭の中がパニックになった。

 だって目の前にいるのが、メディアでも取り上げられているあの有名なスリーデイズの副社長、天野川大翔(あまのがわひろと)だったからだ。

 その姿を間近で見て、つい見惚れてしまいそうになった。

天野川大翔は、冷凍食品を取り扱っている食品会社【スリーデイズ】の副社長だ。

 でもテレビで見るよりもイケメンだったし、顔も整っていて、肌も美しかった。

 それに背も高くスラッとしていて、顔が小さかった。

 驚いたな……。ここにあの天野川副社長がいるなんて。

「にしても、いいニオイだったな……」

 なんかこう、天野川大翔のニオイに一瞬頭がクラっとしそうだった。

 理性が崩れるかと思ったくらいだ。

「……って」

 なんでわたし、そんなことを考えてるんだろう……。やっぱり目の前に有名人とかがいたからかな?

「それにしても、美味しいパンケーキだったな」

 とても美味しくて、幸せだった。やっぱり甘いスイーツは人を幸せにする。

 イヤなこととか辛いことがあったとしても、スイーツを食べれば笑顔になるし、幸せな気持ちになる。

 スイーツは、人を幸せにする魔法だ。スイーツ好きにはたまらないひと時だ。

「あ、あれは、天野川大翔……?」

 交差点の巨大なモニターに映し出された天野川大翔を見て、さっきのことを思い出す。

 あれがわたしと天野川大翔との出会いだった。

 そしてまさか、あんなことを言われるとは……。この時は想像もしていなかったのだけど。

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