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アヒルさんはパパ?

Penulis: スナオ
last update Terakhir Diperbarui: 2025-03-31 14:46:11

 ツンツン。ツンツン。

 何かがアヒルの頭をつついています。

 ツンツンツン。

 ――は……!

 アヒルさんは目を覚ましました。どうやら看病をしながらベッドに突っ伏して寝てしまっていたようです。

 寝不足のお目目を翼でこすると、ベッドから起き上がったカラスの子がいました。

「くぅわあ!」

 カラスの子は元気いっぱいです。アヒルも思わず笑顔になりました。

「元気になったくわか」

「くわ! くわ! あなたがかぁのパパですか?」

「くわ!?」

 アヒルさんは慌てて首を左右に振ります。

「違うくわ! くわはアヒル! おまえはカラスくわ!」

「アヒル? カラス?」

 カラスの子はよくわからないらしく首をかしげます。

「じゃあかぁのパパとママは?」

「知らないくわ」

 アヒルさんの冷たい言葉にカラスの子の瞳に涙が溜まります。

「くぅわあ! くぅわあ!」

 とうとうカラスの子は大声で泣きだしてしまいました。

「くわわ! わかったくわ! カラスの国の国境まで連れて行ってやるからパパとママを探すくわ!」

「くぅわ?」

 アヒルさんはカラスの子をどうにか泣き止ませると、彼を伴い国境へと続く森を歩きます。しばらく歩いているとカラスの子が言いました。

「……おなかすいた」

 アヒルさんは仕方ないなあと思いながらリンゴの木を探すと実をひとつ取ってやりました。それを半分に割ると片方を差し出します。

「ほら、朝ごはんくわ」

「くぅわ!」

 2羽はリンゴをしゃくしゃく食べながら森を歩きました。

「見えた。あれが国境くわ」

 国境付近にたどり着くと、アヒルさんはカラスの子の背中を軽く押しました。

「くぅわ?」

「ここからさきはくわはいけないくわ。1羽でいくわ」

「くぅわあ……」

 カラスの子はさみしそうに鳴くと、また瞳に涙を溜めます。また泣かれては敵わない! アヒルは慌てて逃げ出します。

「くぅわ……!」

 逃げ出したアヒルさんをカラスの子は必至に追いかけます。でも慌てて走ったからでしょう。脚が絡まって転んでしまいました。その痛みでカラスの子はまた泣いてしまいます。

 その姿を不憫に思ったアヒルは走るのをやめてカラスの子のところに戻るとケガの具合を見てやりました。

「くわ。ケガはしてないから大丈夫くわ」

「くぅわ……。かぁ……アヒルさんと一緒がいいかあ」

「くわわ……」

 アヒルさんは困ってしまいました。しかしやがて仕方ないと溜息をつくといいました。

「パパとママが見つかるまでくわよ」

「くぅわ?」

 アヒルさんはカラスの子を背負うとまた自分の家に向かって歩き始めました。

「おまえは名前は?」

「くぅわ? なまえ?」

「わからないのくわ? ……じゃあノワールと呼ぶくわ」

 ノワールとは、アヒル帝国がかつて戦った国の言葉で「黒」を意味しています。

「ノワール……かぁはノワール!」

 カラスの子はとてもうれしそうです。

「かあかあ。アヒルさんのなまえは?」

「くわは ブロンくわ」

 ブロンとは同じ国の言葉で「白」を意味します。

「ブロン! ブロン!」

 こうして、白と黒の共同生活が始まりました。

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    「ぴよの故郷にいこーよぴよ!」 カラスの子が王様の仕事にすこしなれたころ、とつぜんコッコちゃんが言い出しました。カラスの子もアヒルさんも困惑しましたが、コッコちゃんが言い出したら聞かない性格なのを理解しているため、次のお休みの日にお忍びでコッコちゃんの故郷である〝にわとりの里〟に向かうことにしました。 にわとりの里はアヒル帝国から見て東にあり、朝日とともに大きな鳴き声がとどろくことから、朝の里とも呼ばれています。「ついたよついたよ! ここがぴよの故郷!」 コッコちゃんは里の入り口で楽しそうに踊りだします。「くわあ。ここに来るのはひさしぶりくわあ」「アヒルさんはここに来たことがかあ?」「くわ。まあ入り口までだがなあ」「さあ! いくぴよ!」 コッコちゃんはしゃべる二人の羽をつかんでずんずん進みます。まずは商店街をぶらりと散策です。「ここは里でいちばんの商店街ぴよ! そしてこれがあーー!」 コッコちゃんは三人分の飲み物を買ってきます。「ひよこの里名物! 生みたて卵のミルクセーキぴよ!」 ひよこから受け取ったアヒルさんとカラスの子は顔を見合わせてからストローを口にします。「あまい!」 二人は同時に言いました。「ぴよぴよ。それがいーのぴよー!」 コッコちゃんはおいしそうにごくごく飲むのでした。 そうしてひよこたちが歩いていると、ひときわ大きなにわとりに守られた、おしゃれなにわとりの一団をみかけました。「あ、あのにわとりたちはこの里で一番偉いうこっけーさんたちぴよな。ぼでーがーどをしているのは、里で一番つよいしゃもさんぴよ。ぴよもうこっけーさんみたいにきれーなにわとりになりたいぴよ!」 コッコちゃんの説明を聞きながら、アヒルさんとカラスの子は一団を眺めるのでした。◆◆◆ そしてコッコちゃんは自分の巣へ2人を案内しました。元気よく巣の扉を開けます。「ぱぱー! ままー! ただいまぴよー!」「あらあらこけこけコッコちゃん。おかえりなさい。……あら、そちらはこけ?」「ブランとノワールぴよ!」「こけ? ノワール? そういえば最近即位されたカラスの国の王様がそんな名前だったような?」「ぴよ? カラス王本人ぴよよ?」「こ、こ、こけえええええええ!?」「ぴよよ、今日ぴよの巣に泊めるからー」 コッコちゃんはいつでもどこでもマイペースな

  • アヒルさんとカラスの子――和やかな日常――   カラスとアヒルのお祭り

    「カラス王様。最初のお仕事はいかがいたしましょうか」  おじいさんカラスが聞きました。「かあ。かあはアヒル帝国に大変お世話になったかあ。まずは皇帝アヒルさんにお礼をしにいかあと思うかあ」「わかりました。会談の準備をすすめます」「かあ、アヒルさんもついてきてくれるかあ?」 アヒルさんはうなずきました。「ぴよ! コッコちゃんもいくぴよ! 皇帝アヒルさんがくれる食べ物はおいしいって聞くし!」  コッコちゃんも行く気まんまんです。「わかりました。ではアポイントメントをお取りします」◆◆◆ それから数日後、アヒルさん、カラスの子、コッコちゃん、おじいさんカラスはアヒル帝国の宮殿の前にやってきました。大きな門が開かれると、皇帝アヒル自らお出迎えしてくれました。「カラス王殿、ようこそくわ!」 皇帝アヒルは挨拶としてカラスの子にハグをしました。それからアヒルさんに声をかけます。「おぬしがカラス王殿を助けてくれたらしいな。大儀くわ!」「もったいないお言葉ですくわ」 アヒルさんはぺこりとお辞儀しました。「では応接間まで案内するくわあ」 気さくな皇帝アヒルに連れられて、一行は宮殿に入りました。きらびやかで立派な宮殿にカラスの子とコッコちゃんはあちこちきょろきょろきょろ。そうしている間にメイドアヒルの手によって応接間の扉が開かれました。先を歩く皇帝アヒルが上座に座ります。「よいしょくわ。さあ、みなさんお座りくださいくわ」 コッコちゃん、カラスの子、アヒルさんの順番で手近な椅子に座りました。おじいさんカラスはカラスの子の斜め後ろに立ちました。「かあかあ。この度はお目通り?いただけてうれしいです皇帝アヒルさま。改めまして20代目カラス王ですかあ」 カラスの子がたどたどしく挨拶します。「くわくわ。くわこそ初めての訪問先にくわが国を選んでくれてうれしく思うくわ」「アヒルさんやこの国にはたくさんお世話になりましたかあ。故郷と思ってますかあ」「くわ、くわが国と民はカラス王殿にどううつりましたかな」「みんないい人かあ。カラスとアヒル、もっと仲良くなりたいですかあ」「くわ。くわもみんな仲良くがいいと思うくわ。みんな兄弟姉妹くわ。そうくわ!」 皇帝アヒルは羽をぽんと打ちました。「20代目カラス王の就任のお祝いとして盛大なお祭りを両国合同でやろうく

  • アヒルさんとカラスの子――和やかな日常――   20代目カラス王

     カラスの国の王宮についたアヒルさん一行は大変な歓待をうけました。カラスの子は奇蹟の生還を果たした王子様として。アヒルさんはそのカラスの子を助けた英雄として。コッコちゃんは……まあお客様として。 そんなこんなで三人は王宮のひろーいベッドの上でまくらを並べて横になっていました。カラスの子とコッコちゃんはぐっすりでしたが、アヒルさんは一人考え事をしていました。(王子様くわ……王様になるにしろならないにしろ。これから大変なのは間違いないくわ……) アヒルさんは決めました。カラスの子がどんな選択をしようとも、自分がカラスの子を支えようと。◆◆◆ そして次の日、おじいさんカラスがアヒルたちの部屋にやってきました。「王子。どうか王となっていただけませぬか」「でも……」「お願いいたします! 民が待っているのです!」「かあ……」 カラスの子は悩んでいるようです。因みにコッコちゃんはまだ寝ています。なのでアヒルさんがカラスの子に優しく言いました。「くわ。おまえがどんな選択をしてもくわはおまえの味方だ。すきな道を選べ」「かあ……! わかりましたかあ! かあ王様になるかあ!」(王様になればアヒルさんに恩返しもできるはずかあ!)「おお! 20代目カラス王ノワール様! どうぞ、王冠です」 王冠をかぶったカラスの子はついに20代目カラス王となりました。

  • アヒルさんとカラスの子――和やかな日常――   カラスの子は王子さま!?

     旅館にお泊りした次の日。荷物を旅館から宅配してもらうことにしたアヒルさん一行は、せっかくなので帝都を観光していくことにしました。帝都にはたくさんのお店が立ち並び、たくさんのアヒルたちで賑わっていました。その様子にカラスの子とコッコちゃんは目を輝かせましたが、人混みが嫌いなアヒルはちょっぴり辟易です。「あれはなにかあ?」「これはなにぴよ?」 なんにでも興味を示す2人のお世話をしていると、不意に後ろから声がかけられました。「お、王子!? 王子ではありませぬか!?」「?」 三人が振り返ると、そこにはおじいさんカラスがいました。「おお、そのご尊顔! 間違いなく王子! よくぞご無事で!」「かあ? かあはノワールかあ。おうじなんて名前じゃないかあ」「なにをおっしゃいます。ほらこれをお持ちください」 おじいさんカラスは黒い宝石を取り出してカラスの子にもたせました。するとびっくり。宝石が光りだしました。「それは王家の秘宝〝ヤタガラスの眼〟、王族がもったときだけ光輝くのです」「……かあ? じゃあかあは王子なのかあ?」「そうです。王子は誘拐されたショックで記憶が混乱しているのでしょう。ですがどうか国にお戻りを。そして王となって民を導いてください」「王になるって、今の王様……19代目カラス王はどうしたのくわ?」 さすがにアヒルさんが話に割り込みます。「それが……」 おじいさんカラスは声を潜め、アヒルさんにだけ聞こえるように答えました。「実は王子が誘拐されるときに王様もお后様も……その……」 それでアヒルさんは察しました。カラスの子はほんとにひとりぼっちなのだなと。「ともかく王子。急いでカラスの国に……」「いやかあ! かあはアヒルさんたちと一緒にいるかあ!」「王子……」「いやかあ! いやかあ!」「そう嫌がるなノワール。案外居心地いいかもしれんくわよ」「でもいやかあ……」「……仕方ないくわね。くわも一緒にいってやるくわ」「かあ!? でもアヒルさんはほかの国が苦手なんじゃ……」「くわ。でもおまえのためだからがんばるくわ」「ならぴよもいくぴよー! 王宮にいけばごちそう出るよね!」「もちろんです。王子の帰還を祝してパーティーを開きます」「やたああぴよおお!」 こうして一行は、一路カラスの国へ向かうのでした。

  • アヒルさんとカラスの子――和やかな日常――   みんなで温泉

     遅くまで海で遊んだアヒルさんたちは、アヒルさん御用達の海辺のお宿に向かいました。少し古そうな宿を見てコッコちゃんは一言。「ぼろっちいぴよなあ」「文句があるなら帰れくわ」 慣れた様子でチェックインするアヒルさんをしり目に、カラスの子とコッコちゃんは宿の中をきょろきょろ。外見はぼろいけど、中はしっかりお掃除されていて綺麗でした。「ほら部屋いくぞ」 鍵を受け取ったアヒルさんに連れられて部屋に入ったカラスの子とコッコちゃんはオーシャンビューの窓からの景色に歓声をあげます。「ぴよー! 夜の海きれいぴよー!」「かあかあ!」 はしゃぐ二人をしり目にお茶をいれたアヒルさんは静かに一服するのだった。そうして思い思いに時間を過ごしていると夕飯が運ばれてきた。海の幸と山の幸がふんだんに使われた夕食。メインはタイの煮つけでした。「いただきます!」 三人は競い合うようにおいしい夕飯を食べるのでした。◆◆◆ お腹いっぱいごはんを食べた三人はしばらく部屋でゴロゴロしていたが、おもむろにアヒルさんが立ち上がりました。「風呂いくわ」 コッコちゃんも慌てて起き上がります。「ぴよも!」 カラスの子もつられて立ち上がります。「かあ!」 こうして三人は連れ立ってお風呂に向かいました。「ここの貸切風呂は最高くわよ」 アヒルさんはそう言いながら貸切風呂のドアを開けました。みんなが中に入ってから鍵を閉めると、脱衣場のかごに浴衣をおきます。そしてお風呂場の扉を開きます。「ぴよお!」「かああ!」 そこにはオーシャンビューのお風呂が広がっていました。思わずコッコちゃんとカラスの子はダッシュします。しかし湯船に飛び込む前にアヒルさんに捕まります。「まずはかけ湯くわ」「?」 コッコちゃんとカラスの子は首をかしげますが、アヒルは容赦なく湯船の温泉を二人にかけます。「ほら入っていいくわよ」「ぴよおおおお!」「かあああああ!」 コッコちゃんとカラスの子は勢いよく湯船にダイブします。ほんとはマナー違反ですが、貸切風呂なのでアヒルさんは多めに見ることにしました。自身もかけ湯をするとゆっくりと湯船につかって一息です。ゆったりと海を眺めるアヒルさん。温泉で泳ぐコッコちゃんとカラスの子。飛び跳ねる水しぶきがアヒルさんの顔に何度も何度もかかり、アヒルさんはぷるぷる震えます。そし

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