夏のとある暑い日。またひよこのコッコちゃんがアヒルさんの家を訪ねてきました。
「ぴよー! 海いくぴよ!」
ひよこは水着にうきわにシュノーケルにゴーグル。泳ぐ気満々です。
「しょうがないくわね……。いくかノワール」
「海? よくわからないけどいくかあ!」
アヒルさんとカラスの子も海パンを履くとコッコちゃんを伴ってまずは川に向かいます。
「かあ? ここは川かあよね? 川が海なのか?」
「川を下ると海にいけるのくわ」
そういってアヒルさんはもってきたゴムボートを膨らませると、カラスの子とコッコちゃんを伴って乗り込みました。
「かああああああ!!」
カラスの子の絶叫とともに激流川下りは始まりました。アヒルさんは慣れた調子でゴムボートを操ります。
「ぴよおおおおお!!」
因みにコッコちゃんはアトラクション感覚で楽しんでいました。
◆◆◆
「かあ……かあ……」
カラスの子がさけびつかれた頃、ようやく浜辺につきました。パラソルを立てて拠点を作ったアヒルさんとコッコちゃんはさっそくあそび始めます。それを見たカラスの子も負けじと海に突撃します。三人は仲良く海水をかけあいます。ふいにカラスの子の口に海水が入ります。「かあ! しょっぱいかあ!」
「海水だからねぴよ!」
ひとしきり海あそびをすると海の家でひとやすみ。かき氷でリフレッシュです。アヒルさんは練乳、コッコちゃんはレモン、カラスの子は宇治金時です。カラスの子は初めて食べるかき氷に感動してぱくぱくぱく、あたまキーンです。
「かあ! 頭いたいかあ!」
「急いで食べちゃだめくわよ」
今度はスイカ割りです。目隠ししたカラスの子は右へ左へふーらふら。
「右右右ー! 左左左ー! 上上下下右左ABぴよ!」
コッコちゃんの適当な指示でカラスの子は右往左往。仕方なくアヒルさんがガイドします。
「もっと右。そこくわ!」
ぽこん
カラスの子の力では割れませんでしたが、見事スイカを叩くことには成功しました。海の家で包丁を借りてスイカを切ったアヒルさんは、コッコちゃんとカラスの子にスイカを配りました。海を眺めながらスイカを食べているともう夕暮れ。海に沈むきれいな夕陽を眺めながら、三人はたっぷりと海を満喫するのでした。
遅くまで海で遊んだアヒルさんたちは、アヒルさん御用達の海辺のお宿に向かいました。少し古そうな宿を見てコッコちゃんは一言。「ぼろっちいぴよなあ」「文句があるなら帰れくわ」 慣れた様子でチェックインするアヒルさんをしり目に、カラスの子とコッコちゃんは宿の中をきょろきょろ。外見はぼろいけど、中はしっかりお掃除されていて綺麗でした。「ほら部屋いくぞ」 鍵を受け取ったアヒルさんに連れられて部屋に入ったカラスの子とコッコちゃんはオーシャンビューの窓からの景色に歓声をあげます。「ぴよー! 夜の海きれいぴよー!」「かあかあ!」 はしゃぐ二人をしり目にお茶をいれたアヒルさんは静かに一服するのだった。そうして思い思いに時間を過ごしていると夕飯が運ばれてきた。海の幸と山の幸がふんだんに使われた夕食。メインはタイの煮つけでした。「いただきます!」 三人は競い合うようにおいしい夕飯を食べるのでした。◆◆◆ お腹いっぱいごはんを食べた三人はしばらく部屋でゴロゴロしていたが、おもむろにアヒルさんが立ち上がりました。「風呂いくわ」 コッコちゃんも慌てて起き上がります。「ぴよも!」 カラスの子もつられて立ち上がります。「かあ!」 こうして三人は連れ立ってお風呂に向かいました。「ここの貸切風呂は最高くわよ」 アヒルさんはそう言いながら貸切風呂のドアを開けました。みんなが中に入ってから鍵を閉めると、脱衣場のかごに浴衣をおきます。そしてお風呂場の扉を開きます。「ぴよお!」「かああ!」 そこにはオーシャンビューのお風呂が広がっていました。思わずコッコちゃんとカラスの子はダッシュします。しかし湯船に飛び込む前にアヒルさんに捕まります。「まずはかけ湯くわ」「?」 コッコちゃんとカラスの子は首をかしげますが、アヒルは容赦なく湯船の温泉を二人にかけます。「ほら入っていいくわよ」「ぴよおおおお!」「かあああああ!」 コッコちゃんとカラスの子は勢いよく湯船にダイブします。ほんとはマナー違反ですが、貸切風呂なのでアヒルさんは多めに見ることにしました。自身もかけ湯をするとゆっくりと湯船につかって一息です。ゆったりと海を眺めるアヒルさん。温泉で泳ぐコッコちゃんとカラスの子。飛び跳ねる水しぶきがアヒルさんの顔に何度も何度もかかり、アヒルさんはぷるぷる震えます。そし
旅館にお泊りした次の日。荷物を旅館から宅配してもらうことにしたアヒルさん一行は、せっかくなので帝都を観光していくことにしました。帝都にはたくさんのお店が立ち並び、たくさんのアヒルたちで賑わっていました。その様子にカラスの子とコッコちゃんは目を輝かせましたが、人混みが嫌いなアヒルはちょっぴり辟易です。「あれはなにかあ?」「これはなにぴよ?」 なんにでも興味を示す2人のお世話をしていると、不意に後ろから声がかけられました。「お、王子!? 王子ではありませぬか!?」「?」 三人が振り返ると、そこにはおじいさんカラスがいました。「おお、そのご尊顔! 間違いなく王子! よくぞご無事で!」「かあ? かあはノワールかあ。おうじなんて名前じゃないかあ」「なにをおっしゃいます。ほらこれをお持ちください」 おじいさんカラスは黒い宝石を取り出してカラスの子にもたせました。するとびっくり。宝石が光りだしました。「それは王家の秘宝〝ヤタガラスの眼〟、王族がもったときだけ光輝くのです」「……かあ? じゃあかあは王子なのかあ?」「そうです。王子は誘拐されたショックで記憶が混乱しているのでしょう。ですがどうか国にお戻りを。そして王となって民を導いてください」「王になるって、今の王様……19代目カラス王はどうしたのくわ?」 さすがにアヒルさんが話に割り込みます。「それが……」 おじいさんカラスは声を潜め、アヒルさんにだけ聞こえるように答えました。「実は王子が誘拐されるときに王様もお后様も……その……」 それでアヒルさんは察しました。カラスの子はほんとにひとりぼっちなのだなと。「ともかく王子。急いでカラスの国に……」「いやかあ! かあはアヒルさんたちと一緒にいるかあ!」「王子……」「いやかあ! いやかあ!」「そう嫌がるなノワール。案外居心地いいかもしれんくわよ」「でもいやかあ……」「……仕方ないくわね。くわも一緒にいってやるくわ」「かあ!? でもアヒルさんはほかの国が苦手なんじゃ……」「くわ。でもおまえのためだからがんばるくわ」「ならぴよもいくぴよー! 王宮にいけばごちそう出るよね!」「もちろんです。王子の帰還を祝してパーティーを開きます」「やたああぴよおお!」 こうして一行は、一路カラスの国へ向かうのでした。
カラスの国の王宮についたアヒルさん一行は大変な歓待をうけました。カラスの子は奇蹟の生還を果たした王子様として。アヒルさんはそのカラスの子を助けた英雄として。コッコちゃんは……まあお客様として。 そんなこんなで三人は王宮のひろーいベッドの上でまくらを並べて横になっていました。カラスの子とコッコちゃんはぐっすりでしたが、アヒルさんは一人考え事をしていました。(王子様くわ……王様になるにしろならないにしろ。これから大変なのは間違いないくわ……) アヒルさんは決めました。カラスの子がどんな選択をしようとも、自分がカラスの子を支えようと。◆◆◆ そして次の日、おじいさんカラスがアヒルたちの部屋にやってきました。「王子。どうか王となっていただけませぬか」「でも……」「お願いいたします! 民が待っているのです!」「かあ……」 カラスの子は悩んでいるようです。因みにコッコちゃんはまだ寝ています。なのでアヒルさんがカラスの子に優しく言いました。「くわ。おまえがどんな選択をしてもくわはおまえの味方だ。すきな道を選べ」「かあ……! わかりましたかあ! かあ王様になるかあ!」(王様になればアヒルさんに恩返しもできるはずかあ!)「おお! 20代目カラス王ノワール様! どうぞ、王冠です」 王冠をかぶったカラスの子はついに20代目カラス王となりました。
「カラス王様。最初のお仕事はいかがいたしましょうか」 おじいさんカラスが聞きました。「かあ。かあはアヒル帝国に大変お世話になったかあ。まずは皇帝アヒルさんにお礼をしにいかあと思うかあ」「わかりました。会談の準備をすすめます」「かあ、アヒルさんもついてきてくれるかあ?」 アヒルさんはうなずきました。「ぴよ! コッコちゃんもいくぴよ! 皇帝アヒルさんがくれる食べ物はおいしいって聞くし!」 コッコちゃんも行く気まんまんです。「わかりました。ではアポイントメントをお取りします」◆◆◆ それから数日後、アヒルさん、カラスの子、コッコちゃん、おじいさんカラスはアヒル帝国の宮殿の前にやってきました。大きな門が開かれると、皇帝アヒル自らお出迎えしてくれました。「カラス王殿、ようこそくわ!」 皇帝アヒルは挨拶としてカラスの子にハグをしました。それからアヒルさんに声をかけます。「おぬしがカラス王殿を助けてくれたらしいな。大儀くわ!」「もったいないお言葉ですくわ」 アヒルさんはぺこりとお辞儀しました。「では応接間まで案内するくわあ」 気さくな皇帝アヒルに連れられて、一行は宮殿に入りました。きらびやかで立派な宮殿にカラスの子とコッコちゃんはあちこちきょろきょろきょろ。そうしている間にメイドアヒルの手によって応接間の扉が開かれました。先を歩く皇帝アヒルが上座に座ります。「よいしょくわ。さあ、みなさんお座りくださいくわ」 コッコちゃん、カラスの子、アヒルさんの順番で手近な椅子に座りました。おじいさんカラスはカラスの子の斜め後ろに立ちました。「かあかあ。この度はお目通り?いただけてうれしいです皇帝アヒルさま。改めまして20代目カラス王ですかあ」 カラスの子がたどたどしく挨拶します。「くわくわ。くわこそ初めての訪問先にくわが国を選んでくれてうれしく思うくわ」「アヒルさんやこの国にはたくさんお世話になりましたかあ。故郷と思ってますかあ」「くわ、くわが国と民はカラス王殿にどううつりましたかな」「みんないい人かあ。カラスとアヒル、もっと仲良くなりたいですかあ」「くわ。くわもみんな仲良くがいいと思うくわ。みんな兄弟姉妹くわ。そうくわ!」 皇帝アヒルは羽をぽんと打ちました。「20代目カラス王の就任のお祝いとして盛大なお祭りを両国合同でやろうく
「ぴよの故郷にいこーよぴよ!」 カラスの子が王様の仕事にすこしなれたころ、とつぜんコッコちゃんが言い出しました。カラスの子もアヒルさんも困惑しましたが、コッコちゃんが言い出したら聞かない性格なのを理解しているため、次のお休みの日にお忍びでコッコちゃんの故郷である〝にわとりの里〟に向かうことにしました。 にわとりの里はアヒル帝国から見て東にあり、朝日とともに大きな鳴き声がとどろくことから、朝の里とも呼ばれています。「ついたよついたよ! ここがぴよの故郷!」 コッコちゃんは里の入り口で楽しそうに踊りだします。「くわあ。ここに来るのはひさしぶりくわあ」「アヒルさんはここに来たことがかあ?」「くわ。まあ入り口までだがなあ」「さあ! いくぴよ!」 コッコちゃんはしゃべる二人の羽をつかんでずんずん進みます。まずは商店街をぶらりと散策です。「ここは里でいちばんの商店街ぴよ! そしてこれがあーー!」 コッコちゃんは三人分の飲み物を買ってきます。「ひよこの里名物! 生みたて卵のミルクセーキぴよ!」 ひよこから受け取ったアヒルさんとカラスの子は顔を見合わせてからストローを口にします。「あまい!」 二人は同時に言いました。「ぴよぴよ。それがいーのぴよー!」 コッコちゃんはおいしそうにごくごく飲むのでした。 そうしてひよこたちが歩いていると、ひときわ大きなにわとりに守られた、おしゃれなにわとりの一団をみかけました。「あ、あのにわとりたちはこの里で一番偉いうこっけーさんたちぴよな。ぼでーがーどをしているのは、里で一番つよいしゃもさんぴよ。ぴよもうこっけーさんみたいにきれーなにわとりになりたいぴよ!」 コッコちゃんの説明を聞きながら、アヒルさんとカラスの子は一団を眺めるのでした。◆◆◆ そしてコッコちゃんは自分の巣へ2人を案内しました。元気よく巣の扉を開けます。「ぱぱー! ままー! ただいまぴよー!」「あらあらこけこけコッコちゃん。おかえりなさい。……あら、そちらはこけ?」「ブランとノワールぴよ!」「こけ? ノワール? そういえば最近即位されたカラスの国の王様がそんな名前だったような?」「ぴよ? カラス王本人ぴよよ?」「こ、こ、こけえええええええ!?」「ぴよよ、今日ぴよの巣に泊めるからー」 コッコちゃんはいつでもどこでもマイペースな
コッコちゃんの部屋で一行は、ジュースで乾杯をすると、お菓子を開けてプチパーティーを始めます。おいしいジュースとお菓子、そして楽しい会話に花を咲かせていると、ふとカラスの子が思いついたように尋ねました。「そういえばコッコちゃんとアヒルさんはどんなふうに出会ったのかあ?」「ぴよ? そうあれはアヒル帝国で夜ごはんをさがしていたとき……」◆◆◆ その日、コッコちゃんは森を歩いていたぴよ。 そうしたらおいしそうなにおいがしたのぴよ! コッコちゃん走ったぴよ! そうしたらアヒルさんのおうちがあったぴよ! アヒルさんがお庭でカレー作ってたのぴよ!「おいしそうなカレーぴよね!」 アヒルさんはコッコちゃんに見向きもしなかったぴよ。だからアヒルさんの周囲をぐるぐる回ってやったぴよ。「なんの用ぐわ」「そのカレーわけてぴよ!」「いやぐわ」「わけてぴよ!!」 コッコちゃんはまたアヒルさんの周りで騒ぎまくったぴよ。「……っ。わかったくわ。皿をもってくるくわ」「わーいぴよ」 コッコちゃんはさっそくアヒルさんの家から皿をもってきて一緒にカレーをたべたのぴよ。◆◆◆「これがコッコちゃんとアヒルさんの出会いぴよー。なつかしぴよー」 そのとき部屋の扉がノックされ、扉が小さく開きました。「こけ……カラス王様、一応夕飯を用意いたしましたこけが……」「かあ。それはありがたいかあ。ごちそうになってもよいのかあ?」「こけ……。粗末なものしかありませんこけがどうぞこちらにこけ」「ぴよー! ごはんぴよー! いくぴよ!」 コッコちゃんは2人を引っ張って食卓に向かいます。食卓にはホカホカのパンケーキが1人10枚重ねで用意されおり、たっぷりのバターとメープルシロップがかけられておりました。さらにベーコンとポテトも添えてあります。「わーい! いただきますぴよ! うん、うまい!」 コッコちゃんがガツガツ食べるのを見て、カラスの子とアヒルもフォークとナイフを持ち、「いただきます」をしました。そして一口。「甘くておいしいかあ」「くわ!」 3人は美味しくパンケーキを食べるのでした。
「こほこほ」 にわとりの里からカラスの国の宮殿に帰ってきたアヒルさんは、1人自室で咳をしていました。もともとヒナの頃にひどい環境でそだったアヒルさんはあまり身体が丈夫ではありませんでした。そんな折、部屋の扉がノックされました。「どうぞくわ」「失礼しますか。アヒルさん、相談があるかあ」「どうした?」「実は……」 カラスの子は1枚の写真をアヒルさんに見せました。そこには珍しい白いカラスが写っていました。「かあ、この子にひとめぼれしてしまいましたか! どうすればいいか?」「くわあ?」 アヒルさんもあまり恋愛関係は得意ではありませんでした。とはいえカラスの子の悩みをむげにもできません。「とりあえずラブレターを書くわあ」「かあ!」 さっそくつくえにむかったカラスの子は、アヒルさんの添削を受けながらラブレターを書きました。そうしてラブレターを送ったカラスの子ですが作戦は見事に成功。愛しの白カラスと文通にこぎつけました。しばらくは手紙のやり取りをつづけていましたが、カラスの子はアヒルさんのアドバイスで、お城で開かれる舞踏会に誘ってみることにしました。そして今日は舞踏会の日、カラスの子は朝から緊張していました。「そんなに固くなるなくわあ」「でもおでもおかあ」 そんな状態で舞踏会は始まりました。カラスの子がきょろきょろと白カラスを探すと、舞踏会のはじっこにちょこんといるのを見つけました。カラスの子は急いで駆け寄ります。「か、かあ! はじめましてか!」「はじめまして。カラス王様。この度はお招きいただき誠にありがとうございます」「あ、あの! かあと1曲踊っていただけませんか!」「もちろんです」 2人はしっとりとした曲が流れる中、ゆっくりとダンスを楽しみました。でもカラスの子は白カラスの羽を握ったことでドッキドキでした。2人の長くて短いダンスはやがて終わりを迎えました。でもカラスの子は白カラスの羽を離しません。白カラスは不思議そうにしましたが、カラスの子は意を決したように口を開きました。「……かあと、かあの、お后様になってくれませんかあ」 白カラスは驚きましたが、すぐに優しく微笑みました。「わたくしでよろしければよろこんで」「……え? ほんとにいいかあ?」「はい」「……やったかあ!」 カラスの子はうれしくて白カラスを抱きしめました。そ
それからカラスの子と白カラスの盛大な結婚式が開かれました。お后様をえたカラスの子は成長し、立派な王様になりました。そしてたくさんの子宝にも恵まれました。 カラスの子はアヒルさんへの今までの感謝の気持ちを込めて、彼にナイトの称号を与えました。なんとカラス以外がカラスの国のナイトになったのは初めてのことでした。そしてナイトになったアヒルさんはいつまでもカラスの子と一緒にいて、公私ともにカラスの子を支えました。 さてひよこのコッコちゃんも立派なにわとりになりました。そして熱烈な求婚をへてアヒルさんと結婚しました。にわとりになったコッコちゃんは毎日カラスの国に朝を伝えるお仕事をすることになりました。 そんなたいへんながらも楽しい日々は過ぎていき、アヒルさんはかつてカラスの子と過ごしたアヒル帝国の家に帰ってきていました。アヒルさんは重い重い病気になってしまったからです。 アヒルさんはかつてカラスの子と一緒に寝た思い出のベッドで、ぐったりと横になっていました。その周りにはカラスの子とコッコちゃん、そしてアヒルさんとコッコちゃんの子どもがいました。「かあ……死なないでアヒルさん……」「……もう、おまえはひとりぼっちじゃないからだいじょうぶくわ」「そんなこと言わないでかあ……父さん……」 カラスの子はずっと呼びたかった呼び方でアヒルを呼びました。「父さん」と呼ばれたアヒルは少しだけ微笑みました。「……ノワール、コッコ、そしてくわが子よ。楽しかったぞ」 そういってアヒルさんは目を閉じました。カラスの子やコッコちゃんたちが泣いているような気がしましたが、アヒルさんにはもうどうすることもできませんでした。 そしてアヒルさんは永い永い夢をみるのでした。生まれてから、今日までのことを。 カラスの子と過ごした日々。 コッコちゃんと過ごした日々。 すべてがアヒルさんの大切な思い出です。 優しい眠りの中でアヒルさんはとても、幸せでした。
永い永い夢の中をまどろんでいたアヒルさん。でもずっとずっとずっと、だれかに呼ばれている気がしました。だからアヒルさんはがんばって目を開きました。するとそこには泣きながらも笑う、カラスの子とこっこちゃんがいました。「どうして……」 泣いているんくわ? という言葉は声になりませんでした。カラスの子とこっこちゃんに抱き着かれたからです。2人に抱き着かれたアヒルさんは、そのぬくもりにほほえみました。 優しいものがたりは、これからも続きます。 というわけで、カラスの子とコッコちゃんはアヒルさんの回復祝いをすることにしました。 アヒルさんのおうちの庭には、唯一人間界から持ち込みアヒルさんが育てた大きな桜の木がありました。 その木の下にレジャーシートを敷いて、コッコちゃんががんばって用意したごちそうを並べます。 いつもは料理をするアヒルさんも今日はお祝いされる側、しずかに桜の木の下でさくら色をしたジュースを飲んでいました。 アヒルさんにカラスの子が質問します。「アヒルさん、アヒルさん、この桜の木にはどんな想い出があるんですかあ?」「くわ? そうくわなあ。この木はくわが人間界から逃げるとき、助けてくれた存在からもらった小さな木から育てたのくわ。いつの間にかおっきくなったがなあ。くわくわ」「……人間界、やっぱり怖い場所なのかあ?」「……人間にもいろいろいるくわが、凶悪なのが多いくわな」「そうなのかあ」 人間とお友達になってみたいカラスの子はざんねんそうです。「まあまあこけこけ、とりあえずたべましょうこけ」 コッコちゃんがお通夜ムードを盛り上げます。 新鮮な卵を使った野菜の揚げ物をカラスの子に勧めます。「いただきます。……おいしいかあ!」「こういった「料理」をつくったのも人間くわあ」「かあ? 人間って不思議かあ」 カラスの子が首をかしげる中、お花見は続きました。
それからカラスの子と白カラスの盛大な結婚式が開かれました。お后様をえたカラスの子は成長し、立派な王様になりました。そしてたくさんの子宝にも恵まれました。 カラスの子はアヒルさんへの今までの感謝の気持ちを込めて、彼にナイトの称号を与えました。なんとカラス以外がカラスの国のナイトになったのは初めてのことでした。そしてナイトになったアヒルさんはいつまでもカラスの子と一緒にいて、公私ともにカラスの子を支えました。 さてひよこのコッコちゃんも立派なにわとりになりました。そして熱烈な求婚をへてアヒルさんと結婚しました。にわとりになったコッコちゃんは毎日カラスの国に朝を伝えるお仕事をすることになりました。 そんなたいへんながらも楽しい日々は過ぎていき、アヒルさんはかつてカラスの子と過ごしたアヒル帝国の家に帰ってきていました。アヒルさんは重い重い病気になってしまったからです。 アヒルさんはかつてカラスの子と一緒に寝た思い出のベッドで、ぐったりと横になっていました。その周りにはカラスの子とコッコちゃん、そしてアヒルさんとコッコちゃんの子どもがいました。「かあ……死なないでアヒルさん……」「……もう、おまえはひとりぼっちじゃないからだいじょうぶくわ」「そんなこと言わないでかあ……父さん……」 カラスの子はずっと呼びたかった呼び方でアヒルを呼びました。「父さん」と呼ばれたアヒルは少しだけ微笑みました。「……ノワール、コッコ、そしてくわが子よ。楽しかったぞ」 そういってアヒルさんは目を閉じました。カラスの子やコッコちゃんたちが泣いているような気がしましたが、アヒルさんにはもうどうすることもできませんでした。 そしてアヒルさんは永い永い夢をみるのでした。生まれてから、今日までのことを。 カラスの子と過ごした日々。 コッコちゃんと過ごした日々。 すべてがアヒルさんの大切な思い出です。 優しい眠りの中でアヒルさんはとても、幸せでした。
「こほこほ」 にわとりの里からカラスの国の宮殿に帰ってきたアヒルさんは、1人自室で咳をしていました。もともとヒナの頃にひどい環境でそだったアヒルさんはあまり身体が丈夫ではありませんでした。そんな折、部屋の扉がノックされました。「どうぞくわ」「失礼しますか。アヒルさん、相談があるかあ」「どうした?」「実は……」 カラスの子は1枚の写真をアヒルさんに見せました。そこには珍しい白いカラスが写っていました。「かあ、この子にひとめぼれしてしまいましたか! どうすればいいか?」「くわあ?」 アヒルさんもあまり恋愛関係は得意ではありませんでした。とはいえカラスの子の悩みをむげにもできません。「とりあえずラブレターを書くわあ」「かあ!」 さっそくつくえにむかったカラスの子は、アヒルさんの添削を受けながらラブレターを書きました。そうしてラブレターを送ったカラスの子ですが作戦は見事に成功。愛しの白カラスと文通にこぎつけました。しばらくは手紙のやり取りをつづけていましたが、カラスの子はアヒルさんのアドバイスで、お城で開かれる舞踏会に誘ってみることにしました。そして今日は舞踏会の日、カラスの子は朝から緊張していました。「そんなに固くなるなくわあ」「でもおでもおかあ」 そんな状態で舞踏会は始まりました。カラスの子がきょろきょろと白カラスを探すと、舞踏会のはじっこにちょこんといるのを見つけました。カラスの子は急いで駆け寄ります。「か、かあ! はじめましてか!」「はじめまして。カラス王様。この度はお招きいただき誠にありがとうございます」「あ、あの! かあと1曲踊っていただけませんか!」「もちろんです」 2人はしっとりとした曲が流れる中、ゆっくりとダンスを楽しみました。でもカラスの子は白カラスの羽を握ったことでドッキドキでした。2人の長くて短いダンスはやがて終わりを迎えました。でもカラスの子は白カラスの羽を離しません。白カラスは不思議そうにしましたが、カラスの子は意を決したように口を開きました。「……かあと、かあの、お后様になってくれませんかあ」 白カラスは驚きましたが、すぐに優しく微笑みました。「わたくしでよろしければよろこんで」「……え? ほんとにいいかあ?」「はい」「……やったかあ!」 カラスの子はうれしくて白カラスを抱きしめました。そ
コッコちゃんの部屋で一行は、ジュースで乾杯をすると、お菓子を開けてプチパーティーを始めます。おいしいジュースとお菓子、そして楽しい会話に花を咲かせていると、ふとカラスの子が思いついたように尋ねました。「そういえばコッコちゃんとアヒルさんはどんなふうに出会ったのかあ?」「ぴよ? そうあれはアヒル帝国で夜ごはんをさがしていたとき……」◆◆◆ その日、コッコちゃんは森を歩いていたぴよ。 そうしたらおいしそうなにおいがしたのぴよ! コッコちゃん走ったぴよ! そうしたらアヒルさんのおうちがあったぴよ! アヒルさんがお庭でカレー作ってたのぴよ!「おいしそうなカレーぴよね!」 アヒルさんはコッコちゃんに見向きもしなかったぴよ。だからアヒルさんの周囲をぐるぐる回ってやったぴよ。「なんの用ぐわ」「そのカレーわけてぴよ!」「いやぐわ」「わけてぴよ!!」 コッコちゃんはまたアヒルさんの周りで騒ぎまくったぴよ。「……っ。わかったくわ。皿をもってくるくわ」「わーいぴよ」 コッコちゃんはさっそくアヒルさんの家から皿をもってきて一緒にカレーをたべたのぴよ。◆◆◆「これがコッコちゃんとアヒルさんの出会いぴよー。なつかしぴよー」 そのとき部屋の扉がノックされ、扉が小さく開きました。「こけ……カラス王様、一応夕飯を用意いたしましたこけが……」「かあ。それはありがたいかあ。ごちそうになってもよいのかあ?」「こけ……。粗末なものしかありませんこけがどうぞこちらにこけ」「ぴよー! ごはんぴよー! いくぴよ!」 コッコちゃんは2人を引っ張って食卓に向かいます。食卓にはホカホカのパンケーキが1人10枚重ねで用意されおり、たっぷりのバターとメープルシロップがかけられておりました。さらにベーコンとポテトも添えてあります。「わーい! いただきますぴよ! うん、うまい!」 コッコちゃんがガツガツ食べるのを見て、カラスの子とアヒルもフォークとナイフを持ち、「いただきます」をしました。そして一口。「甘くておいしいかあ」「くわ!」 3人は美味しくパンケーキを食べるのでした。
「ぴよの故郷にいこーよぴよ!」 カラスの子が王様の仕事にすこしなれたころ、とつぜんコッコちゃんが言い出しました。カラスの子もアヒルさんも困惑しましたが、コッコちゃんが言い出したら聞かない性格なのを理解しているため、次のお休みの日にお忍びでコッコちゃんの故郷である〝にわとりの里〟に向かうことにしました。 にわとりの里はアヒル帝国から見て東にあり、朝日とともに大きな鳴き声がとどろくことから、朝の里とも呼ばれています。「ついたよついたよ! ここがぴよの故郷!」 コッコちゃんは里の入り口で楽しそうに踊りだします。「くわあ。ここに来るのはひさしぶりくわあ」「アヒルさんはここに来たことがかあ?」「くわ。まあ入り口までだがなあ」「さあ! いくぴよ!」 コッコちゃんはしゃべる二人の羽をつかんでずんずん進みます。まずは商店街をぶらりと散策です。「ここは里でいちばんの商店街ぴよ! そしてこれがあーー!」 コッコちゃんは三人分の飲み物を買ってきます。「ひよこの里名物! 生みたて卵のミルクセーキぴよ!」 ひよこから受け取ったアヒルさんとカラスの子は顔を見合わせてからストローを口にします。「あまい!」 二人は同時に言いました。「ぴよぴよ。それがいーのぴよー!」 コッコちゃんはおいしそうにごくごく飲むのでした。 そうしてひよこたちが歩いていると、ひときわ大きなにわとりに守られた、おしゃれなにわとりの一団をみかけました。「あ、あのにわとりたちはこの里で一番偉いうこっけーさんたちぴよな。ぼでーがーどをしているのは、里で一番つよいしゃもさんぴよ。ぴよもうこっけーさんみたいにきれーなにわとりになりたいぴよ!」 コッコちゃんの説明を聞きながら、アヒルさんとカラスの子は一団を眺めるのでした。◆◆◆ そしてコッコちゃんは自分の巣へ2人を案内しました。元気よく巣の扉を開けます。「ぱぱー! ままー! ただいまぴよー!」「あらあらこけこけコッコちゃん。おかえりなさい。……あら、そちらはこけ?」「ブランとノワールぴよ!」「こけ? ノワール? そういえば最近即位されたカラスの国の王様がそんな名前だったような?」「ぴよ? カラス王本人ぴよよ?」「こ、こ、こけえええええええ!?」「ぴよよ、今日ぴよの巣に泊めるからー」 コッコちゃんはいつでもどこでもマイペースな
「カラス王様。最初のお仕事はいかがいたしましょうか」 おじいさんカラスが聞きました。「かあ。かあはアヒル帝国に大変お世話になったかあ。まずは皇帝アヒルさんにお礼をしにいかあと思うかあ」「わかりました。会談の準備をすすめます」「かあ、アヒルさんもついてきてくれるかあ?」 アヒルさんはうなずきました。「ぴよ! コッコちゃんもいくぴよ! 皇帝アヒルさんがくれる食べ物はおいしいって聞くし!」 コッコちゃんも行く気まんまんです。「わかりました。ではアポイントメントをお取りします」◆◆◆ それから数日後、アヒルさん、カラスの子、コッコちゃん、おじいさんカラスはアヒル帝国の宮殿の前にやってきました。大きな門が開かれると、皇帝アヒル自らお出迎えしてくれました。「カラス王殿、ようこそくわ!」 皇帝アヒルは挨拶としてカラスの子にハグをしました。それからアヒルさんに声をかけます。「おぬしがカラス王殿を助けてくれたらしいな。大儀くわ!」「もったいないお言葉ですくわ」 アヒルさんはぺこりとお辞儀しました。「では応接間まで案内するくわあ」 気さくな皇帝アヒルに連れられて、一行は宮殿に入りました。きらびやかで立派な宮殿にカラスの子とコッコちゃんはあちこちきょろきょろきょろ。そうしている間にメイドアヒルの手によって応接間の扉が開かれました。先を歩く皇帝アヒルが上座に座ります。「よいしょくわ。さあ、みなさんお座りくださいくわ」 コッコちゃん、カラスの子、アヒルさんの順番で手近な椅子に座りました。おじいさんカラスはカラスの子の斜め後ろに立ちました。「かあかあ。この度はお目通り?いただけてうれしいです皇帝アヒルさま。改めまして20代目カラス王ですかあ」 カラスの子がたどたどしく挨拶します。「くわくわ。くわこそ初めての訪問先にくわが国を選んでくれてうれしく思うくわ」「アヒルさんやこの国にはたくさんお世話になりましたかあ。故郷と思ってますかあ」「くわ、くわが国と民はカラス王殿にどううつりましたかな」「みんないい人かあ。カラスとアヒル、もっと仲良くなりたいですかあ」「くわ。くわもみんな仲良くがいいと思うくわ。みんな兄弟姉妹くわ。そうくわ!」 皇帝アヒルは羽をぽんと打ちました。「20代目カラス王の就任のお祝いとして盛大なお祭りを両国合同でやろうく
カラスの国の王宮についたアヒルさん一行は大変な歓待をうけました。カラスの子は奇蹟の生還を果たした王子様として。アヒルさんはそのカラスの子を助けた英雄として。コッコちゃんは……まあお客様として。 そんなこんなで三人は王宮のひろーいベッドの上でまくらを並べて横になっていました。カラスの子とコッコちゃんはぐっすりでしたが、アヒルさんは一人考え事をしていました。(王子様くわ……王様になるにしろならないにしろ。これから大変なのは間違いないくわ……) アヒルさんは決めました。カラスの子がどんな選択をしようとも、自分がカラスの子を支えようと。◆◆◆ そして次の日、おじいさんカラスがアヒルたちの部屋にやってきました。「王子。どうか王となっていただけませぬか」「でも……」「お願いいたします! 民が待っているのです!」「かあ……」 カラスの子は悩んでいるようです。因みにコッコちゃんはまだ寝ています。なのでアヒルさんがカラスの子に優しく言いました。「くわ。おまえがどんな選択をしてもくわはおまえの味方だ。すきな道を選べ」「かあ……! わかりましたかあ! かあ王様になるかあ!」(王様になればアヒルさんに恩返しもできるはずかあ!)「おお! 20代目カラス王ノワール様! どうぞ、王冠です」 王冠をかぶったカラスの子はついに20代目カラス王となりました。
旅館にお泊りした次の日。荷物を旅館から宅配してもらうことにしたアヒルさん一行は、せっかくなので帝都を観光していくことにしました。帝都にはたくさんのお店が立ち並び、たくさんのアヒルたちで賑わっていました。その様子にカラスの子とコッコちゃんは目を輝かせましたが、人混みが嫌いなアヒルはちょっぴり辟易です。「あれはなにかあ?」「これはなにぴよ?」 なんにでも興味を示す2人のお世話をしていると、不意に後ろから声がかけられました。「お、王子!? 王子ではありませぬか!?」「?」 三人が振り返ると、そこにはおじいさんカラスがいました。「おお、そのご尊顔! 間違いなく王子! よくぞご無事で!」「かあ? かあはノワールかあ。おうじなんて名前じゃないかあ」「なにをおっしゃいます。ほらこれをお持ちください」 おじいさんカラスは黒い宝石を取り出してカラスの子にもたせました。するとびっくり。宝石が光りだしました。「それは王家の秘宝〝ヤタガラスの眼〟、王族がもったときだけ光輝くのです」「……かあ? じゃあかあは王子なのかあ?」「そうです。王子は誘拐されたショックで記憶が混乱しているのでしょう。ですがどうか国にお戻りを。そして王となって民を導いてください」「王になるって、今の王様……19代目カラス王はどうしたのくわ?」 さすがにアヒルさんが話に割り込みます。「それが……」 おじいさんカラスは声を潜め、アヒルさんにだけ聞こえるように答えました。「実は王子が誘拐されるときに王様もお后様も……その……」 それでアヒルさんは察しました。カラスの子はほんとにひとりぼっちなのだなと。「ともかく王子。急いでカラスの国に……」「いやかあ! かあはアヒルさんたちと一緒にいるかあ!」「王子……」「いやかあ! いやかあ!」「そう嫌がるなノワール。案外居心地いいかもしれんくわよ」「でもいやかあ……」「……仕方ないくわね。くわも一緒にいってやるくわ」「かあ!? でもアヒルさんはほかの国が苦手なんじゃ……」「くわ。でもおまえのためだからがんばるくわ」「ならぴよもいくぴよー! 王宮にいけばごちそう出るよね!」「もちろんです。王子の帰還を祝してパーティーを開きます」「やたああぴよおお!」 こうして一行は、一路カラスの国へ向かうのでした。
遅くまで海で遊んだアヒルさんたちは、アヒルさん御用達の海辺のお宿に向かいました。少し古そうな宿を見てコッコちゃんは一言。「ぼろっちいぴよなあ」「文句があるなら帰れくわ」 慣れた様子でチェックインするアヒルさんをしり目に、カラスの子とコッコちゃんは宿の中をきょろきょろ。外見はぼろいけど、中はしっかりお掃除されていて綺麗でした。「ほら部屋いくぞ」 鍵を受け取ったアヒルさんに連れられて部屋に入ったカラスの子とコッコちゃんはオーシャンビューの窓からの景色に歓声をあげます。「ぴよー! 夜の海きれいぴよー!」「かあかあ!」 はしゃぐ二人をしり目にお茶をいれたアヒルさんは静かに一服するのだった。そうして思い思いに時間を過ごしていると夕飯が運ばれてきた。海の幸と山の幸がふんだんに使われた夕食。メインはタイの煮つけでした。「いただきます!」 三人は競い合うようにおいしい夕飯を食べるのでした。◆◆◆ お腹いっぱいごはんを食べた三人はしばらく部屋でゴロゴロしていたが、おもむろにアヒルさんが立ち上がりました。「風呂いくわ」 コッコちゃんも慌てて起き上がります。「ぴよも!」 カラスの子もつられて立ち上がります。「かあ!」 こうして三人は連れ立ってお風呂に向かいました。「ここの貸切風呂は最高くわよ」 アヒルさんはそう言いながら貸切風呂のドアを開けました。みんなが中に入ってから鍵を閉めると、脱衣場のかごに浴衣をおきます。そしてお風呂場の扉を開きます。「ぴよお!」「かああ!」 そこにはオーシャンビューのお風呂が広がっていました。思わずコッコちゃんとカラスの子はダッシュします。しかし湯船に飛び込む前にアヒルさんに捕まります。「まずはかけ湯くわ」「?」 コッコちゃんとカラスの子は首をかしげますが、アヒルは容赦なく湯船の温泉を二人にかけます。「ほら入っていいくわよ」「ぴよおおおお!」「かあああああ!」 コッコちゃんとカラスの子は勢いよく湯船にダイブします。ほんとはマナー違反ですが、貸切風呂なのでアヒルさんは多めに見ることにしました。自身もかけ湯をするとゆっくりと湯船につかって一息です。ゆったりと海を眺めるアヒルさん。温泉で泳ぐコッコちゃんとカラスの子。飛び跳ねる水しぶきがアヒルさんの顔に何度も何度もかかり、アヒルさんはぷるぷる震えます。そし