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3.セロ

ผู้เขียน: 神木セイユ
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-04-25 09:52:38

「始まるね。あいつにとっても初めてのステージだ」

一部の客席がステージを見上げる。

ドクンッ !!

「……っ !! 」

セロがステージに上がった時、心臓が跳ねる。

この感覚って何 ?

一挙一動……なにか分からないけど……既視感 ? まさか。

それは無い。

わたしは彼を知らない。

セロが弓を大きく振りかぶり、第一音を鳴らす。たった一つのチューニング音。

それだけで酒場全体の時が止まる。比喩じゃない。みんなセロを見上げて次の音に耳を立てている。

透き通るような音色。

女性嫌い ? 本当に ? そんな精神状態でステージって立てるものなの ?

荒くれ者みたいな人も多いし、異性と遊びに来て楽しんでる人も多いのに、音楽って聞いて観て貰えるものなの ?

セロの狐弦器が鳴る。

唸りをあげるという方が強い。

音が重い……。切なくて、地を這うようなスローなメロディ。

シンプルに言えば、暗い曲だよね。

でもこの曲の雰囲気。

嫌いじゃない。

「……」

「……無理だよ……」

舞台上からわたしへの、セロの鋭い視線。さっきまでは目も合わせなかった癖に。

でも、分かるよ。

あいつ。わたしを探ってる。音楽の好み ? それともステージへ上がる意思 ?

冗談じゃない。わたしは冒険者。吟遊詩人じゃないもの。

でもこの衝動は何 ?

巧みにさばかれるピッチング。

弓のテンポが上がる。

もっと。

もっと聴きたい 。

側で永遠に。

この音色は……ずっと聞いていられる。

「来たな」

「……自分でもわからないの」

わたしは、気がついたらセロのそばにいた。

歌いたいとかじゃない。でも、この音色を側で聞くにはわたし以外にいない。

いないはず。

この思いってなに ?

「思い切り声量あげて。音は合わせる」

出来る。何故 ? 分からないけど、わたしならセロの音楽に見合った歌を当てられる。根拠の無い自信。

大きくブレスを挟むと、思いのままに喉を震わせた。

「うぉ〜 !! いいぞぉ〜 ! 」

酔ったおじさんが拳を突き上げる。その場のノリでも、ちょっと嬉しいかも。

「はぁ……はぁっ…… ! 」

一曲歌いきっただけで、凄い消耗 ! 緊張で足に感覚がない。

楽しい !

セロを見ると、額に少し汗が浮かんでいた。

「セロ、大丈夫だった ? おかしくなかった ? 」

「別に。普通じゃない ? 」

うぅ ! 素っ気な !

ステージ上がったわたしが出しゃばりみたいじゃん ! 降りよ。今日はセロの演奏をするんだし……。

「あ、待っ……」

ステージを降りようとするわたしにセロが何か呟く。呟くというか、囁く。オドオドしながら。

「もー……っきょ……」

「 ? ホー、ホケキョ ? 」

「もう一曲。いい ? 」

この人、本気 !?

セロは恥じらうように、視線も合わさずに聞いてくる。女性……苦手なんだよね ?

でも、もしかして音楽の事なら話してくれる ?

「えと……あのね、狭い音域だと逆にファルセットが上手く捌けなくて……幅を広げて欲しいんだけど」

わたしも何言ってるんだろう ? 専門的な知識なんて……。

「分かった。音域のアップダウンの激しい感じでテンポも限界まであげる」

間違いない。この人、音楽の事ならまともに意思疎通出来るんだ !

「わたし、本当に記憶無いの。この気持ち、何なんだろう…… ? できそうな気がするの」

「そんな事、俺は知らないよ。旅路で似たような事してたんじゃ……あ……」

セロの瞳がわたしの胸元に止まる。

「な、何 ? 」

「その魔石……。自分の ? 」

「これ ? 魔石 ? ただの宝飾品だよ」

「いや、希少石だ。かつて歌声一つで国を再建した女王がいる。その女性の名から付いた魔石 DIVA」

どうしよう。言葉の意味が分からない。なにか物語の話かなにかしてるの ?

それに胸元のこの石はただのネックレスじゃないの ? 装備してる他の魔石とは色が違うし。というか、今の今までそう思ってたんだけど、よく見下ろしたら今までと違う色に変色してる。

「な、何これ ! このせいなの ? ど、どうしたらいいの ?! 」

「説明面倒臭い。感じたままに振る舞えばいい」

「……し、失敗するかも」

「失敗はしない。保証する」

凄い他人事じゃん !

セロの演奏が二曲目に入る。テンポアップとはいったけど、やたらコミカルで明るい陽気な曲。印象が違いすぎ !

大丈夫。

気持ちを切り替えろ !!

弾くようなリズム。身体が自然とスキップしたくなるような、そんな高揚感があるダンスミュージック。

軽く。明るく。おどけて。慎重にでも大胆にワードを選んで声を乗せる。

目の前にいた中年男性が小樽から酒を零しながらステップを踏む。床に落ちる雫。すぐにそれ

は、別な客の足で踏まれる。見ていた別のテーブル客も踊り出す。

楽しい !

頭がhighになって……。

セロの音色はどこまでも爽やかで、わたしの寂しい部分を風通しするように響く。

まるで空の上で飛んでるような……そんな幸福感。

そう、空を飛ぶような……。

ふわふわ……フラフラ…… ?

ガシャーン !

「う……うぅ……ん」

「おい、ねーちゃん倒れたぞ !!? 」

「だ〜めだ、目回ってら。水持ってこい ! 」

急に床が逆さになって……天井が見える ???

「おい、リラ !? 」

「アチャ〜。ごめん。あんた酒弱かったのね〜っ ? 」

心配そうなレオナとジルが覗き込んでるのが見える。そうなんだ。

わたしってお酒、飲めないんだ。

わたしのネックレスって魔石だったんだ。

わたしって、歌が好きなんだ……。

「あはは、レオナ凄い〜 ! わたし、やばい〜 ! 」

「はいはい。肩に掴まってなよ ? 」

「おい、セロ。部屋に運ぶぞ」

「俺、女に触れない……」

「ったく ! 村長にリラの仮住まい聞いてこい ! 」

「大丈夫大丈夫セロ〜、あっちの、あの辺だから ! 大丈夫だよ ! 」

「……ダメだこりゃ。セロ、マジで。誰か呼んできて」

場所、説明したのに !

その後の記憶は無い。

人生二度目の記憶喪失。

うぅ……。

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