愛する価値がない
私は安西礼人(あんざい あやと)と結婚して八年、そして九回離婚した。
彼が結婚した後の歴代の恋人たちにも、私はみんな会ったことがある。
彼が飽きて相手を替えるたび、私は彼が別れを切り出す理由として、一番都合のいい存在になっていた。
「もしあなたが彼と結婚したら、私みたいに、ずっと彼のトラブルを片付け続けて、何度も何度も離婚する。でも、結局何も得られないわ」
大晦日の夜、私は彼が捨てた女の子の涙を拭いていた。
そして彼は、新しい恋人に街中の注目を集める花火を捧げた。
その子はティッシュを一袋使い切ってもまだ泣き続けていた。
私は、かつての自分の姿を見た気がした。
だから私は、初めて自分から礼人に離婚を切り出した。
彼は珍しく戸惑っている。
「三日もしないうちにまた再婚するんだから、離婚する意味あるのか?」
私は笑って首を振った。
もう再婚しない。
礼人、今度は私があなたを待たない。