浮気夫の億万財産、私に奪われる
みんな私のことを「抜け目のない女だ」と噂している。
お腹の子どもを利用して、近藤家の夫人の座を勝ち取ったのだから。
それなのに、近藤智也の初恋の相手が海外から帰ってきた。
智也は心ここにあらずで、家にも帰らなくなった。
好奇心旺盛な人たちは私にこう言う。
「近藤夫人、もっと旦那さんのことを気にしたほうがいいですよ」
彼らはみんな私が転げ落ちる瞬間を待っている。
家柄も背景もない私が泥沼に落ち、誰からも踏みにじられる日を。
でも、私はまるで何も聞こえないかのように振る舞い、
智也の心がだんだん離れていくのを黙って見ていた。
魚を与えるよりも、釣り方を教えるべきだと私は思う。
私が欲しいのはいつだって後者、「釣り方」だから。