私が誘拐された時、夫は毎月28回誘拐される幼馴染を救っていた
夫の柊南斗はボディーガード協会の総隊長だが、私が犯人に殺されそうになっているその時、彼は腕の中でしくしく泣く幼馴染を慰めていた。
犯人たちがサービスエリアで食事をしている隙に、私は冷静に五回、彼の仕事用の電話にかけた。
やっと繋がったと思ったら、電話口から彼の激しい叱責が飛んできた。
「媛は今、犯人から助け出されたばかりで、俺が必要なんだ。もし俺に家に帰ってきてほしいなら、嫉妬で誘拐されたふりをしたり、猿真似みたいなことはするな!」
傍らで佐藤媛が可愛らしい声を上げているのが聞こえた。彼と口論している時間はない。私は協会のホットラインに電話をかけた。
しかし、オペレーターから、三十分前に柊南斗が佐藤媛を救うため、市内のボディーガードを総動員したと告げられた。
犯人たちが戻ってきて、柊南斗がボディーガードを総動員し、誘拐された少女を救出した武勇伝を嘲笑っていた。
私の記憶が正しければ、佐藤媛が誘拐されたのは、今月で二十八回目だ。
犯人がライフルとスタンガンを持ってこちらに歩いてくるのを見て、私は絶望のあまり目を閉じた。
死ぬ前に、私は最後の力を振り絞って、彼にメッセージを送った。
「どんなことがあっても、私はあなたを愛していた。さようなら」
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