銀の鱗の上。 翼竜に乗った仲間が叫んだ。「リラ !! 振り落とされんな !! 」「大丈……。っ !!? みんな、西 !! 別のがいる !! 」 シルバードラゴンにあと一息でトドメというところで、夕日の中に別のドラゴンのシルエットが見えた。「オスじゃねぇーの !? せっかく引き離したのに !! 」「戦闘が長引きすぎたな。シエル、回復薬は ? 」「もう無いよ ! とてもじゃないけど連戦できない ! レイ、どうするの !? 」「……っ。全員離脱用意。このドラゴン討伐は……諦めるしか……」 この時。 わたしは出来ると思った。 本当はパーティの全員に支えられてきた自信と実力だったのに。 それを過信したんだ。「カイ ! 双剣を貸して !! 」「はぁ !? 俺、魔銃は使えねぇよ ! 」「替えの装備あるでしょ !? わたしがゴルドラの気を引く ! 討伐は続けて !! 」 一人、シルバードラゴンの背から魔法を伝い風に乗る。「風よ ! 」 風で弧を描く身体の先、ブーツから水蒸気の雫が光る。 ギィィィンッ !! その回転した反動を利用して、敵意剥き出しの雄竜に思い切り刃を向けた時。頭部へ一撃、全力で打ち込んだのに、ゴールドドラゴンは更に鋭い牙をギギッと剥くだけだった。 自分の判断が間違いだと気付いた。「くっ、硬っ !! 」 剣が弾かれる。その直後聞こえた、不穏な風切り音。 ヒュオッと耳の側で鳴った後、視界の端に叩き落とそうとする尾の先が見えた。「リラァッ !! 」 反撃を受けて、魔法が切れる感覚。 真っ逆さまに落ちていく風の音。 冷たい空気。 視界の中で、ゴールドドラゴンがシルバードラゴンの背の上目掛けて火を吹いているのが最後の記憶。 その記憶だけを残して。 わたしは仲間の記憶を無くした。
Last Updated : 2025-04-23 Read more