銃剣は狂ったように、突然グリッチし始めた。さっき選択した≪壊滅虹一波(アークデストラクション・ワン)≫とはまた違う姿へと変わっていく。銃剣上部が開き、"階段のような不思議な点滅光"が幾つも現れ、反射した。その光とグリッチによって全体像が壊れ、どういった状態なのかはもう認識できないほどになっていた。分かる事は、この引き金をアイツに向けて引く、たったそれだけ。必死に態勢を整えようと下がるヤツに、この最後の認識できない一撃を。 この時ズノウの付与効果か、ロックオンされた三翼の天魔神は異常なほど動きが遅くなっていた。そんなヤツの顔面目掛けて放つと、一気に30個ほどの何かが一瞬でヤツへと飛んでいき、同時に幾つもの七色蝶の羽根が舞う。 その飛んでいった何かは、"グリッチ状の長細い光"という表現が正しいかもしれない。その光はヤツの体内へ侵入すると、容赦無く全身を切り刻んでいった。背中の翼も、白い少女も、黒い悪魔も、何もかも。次第に跡形もなくなるほど切られると、ヤツは霧状に消えていった。 選択したズノウの≪七色の戒壇特異点(セブンズ・ステアシンギュラリティ)≫も消えていくと、腹部に急激な痛みが走り、大の字に倒れた。すると、二人の駆け寄る足音が近付いてくるのが分かった。「おいッ!! 大丈夫かッ!? 一人でやっちまったのか!?」 なぜか視界が狭いが、微かにシンヤの顔が見える。たぶんユキが俺の頭を膝に乗せた、伝わる感覚でなんとなく分かる。「ちょっと疲れただけだ。そっちも終わったのか」「飯塚さんの言ってた、ズノウってのに助けられてね」 ここでユキの顔が視界に入った。「上手く⋯⋯使えたんだな」「おうよ! あんなクソ共に負けてなんていられねぇからな! ってかしんどそうだな、この後動けんのか?」「わりぃ⋯⋯今は動けそうにない」「プロトロアに車まで運んでもらいましょうか」「そうだなぁ。今の状態じゃ、次が来たら危ねぇだろうしよ」 横たわる俺の視線の先を二人も見てしまった。「おれの⋯⋯せいで⋯⋯アオさんが⋯⋯!」 何度見ても血の気が冷める。あの時、ヤツの攻撃先に気付けていれば⋯⋯後悔だけが頭を巡る。「こんな極限状態だったもの⋯⋯全員生きるのは⋯⋯無理だったのよ⋯⋯」「だけど⋯⋯ッ! あの時気付いていれば⋯⋯ッ!!」 悔しさのあまり唇を噛み締めると、血が溢れた。
Terakhir Diperbarui : 2025-04-11 Baca selengkapnya