スクリーンに映し出されたのは、リビングのソファで絡み合う、裸の男女の姿だった。喘ぎ声と共に揺れる映像。画面にはまだ顔が映っておらず、会場の空気はざわついた。「誰よあれ?まさか、賀川社長の結婚式をぶち壊す気か?後で絶対ひどい目に遭うわよ」「賀川社長って、あんなに恋人一筋だったのに……」だが。尚弥だけはすぐにわかった。あの男の体もあの女の癖も、何よりあの場所も。それは間違いなく彼自身と瑶だった。瞬間、彼の顔が青ざめ、壇上から怒声が響いた。「やめろ!!今すぐ止めろ!!」司会者も事前には内容を知らされていなかった。ただ「新婦からの映像」という指示だけを受けて再生していたのだ。 最初の数秒で事態の異常さに気づき、慌ててバックヤードに走るが、焦りから操作を誤り、再生中のパソコンはフリーズしていた。そのとき、スクリーンの映像は——決定的な場面へと差しかかった。男の肩に顔をうずめていた女がゆっくりと身を起こし、胸元に手をかけた。同時に、男もシャツのボタンに指をかけ、その手つきはあまりにも慣れたものだった。次の瞬間——画面に映るふたりの絡み合う裸身がはっきりと姿を現した。ざわめきが広がった。そこにいたのは他でもない——今日の新郎尚弥だった。そして彼にしなだれかかる女はこの場にいる誰もが見覚えのある顔。尚弥の傍にいつも控えていた秘書の瑶だった。会場が、一瞬で騒然となった。誰もが息を呑み、信じられないものを見るような目でスクリーンを凝視する。「まさか……あの男、賀川社長じゃない!?」 「信じられない……彼、ずっと恋人一筋って有名だったのに、しかも相手、いつもそばにいるあの秘書じゃない!?」 ざわつく声があちこちから漏れ始める中、メディア関係者たちはすでにカメラをスクリーンへと向けていた。誰よりも早く、衝撃の瞬間を押さえようとする視線が鋭く光る。そして、SNSの世界ではさらに速く、事態は拡散されていた。配信中のライブ映像には、五百万人近い視聴者が殺到。コメント欄には容赦ない言葉が怒涛のように流れていく。「は?賀川尚弥って、ただの浮気クズじゃん」「女に一途とか言ってたの、全部嘘かよ。前まで応援してた自分を殴りたい」尚弥の頭の中は真っ白だった。唯一の思考は「雨音にだけは見せちゃダメだ」彼は、これが競合他
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