「おっちゃん。これはなんだ?」不意にリザレリスが、ある品物を手に取った。それは不思議な薄青色の石を添えたストーンリングだった。「おっ、嬢ちゃん。見る目があるじゃねえか」「なんか特別な指輪なのか?」「それは魔法の指輪だ」「魔法の?」「そうだ」店主のオヤジはニヤリとする。「なかなか手に入らねーんだぜ?」「これでなにができるんだ?」「それは氷のリング。つまり、そいつを使えば強力な氷魔法が使えるってわけだ」「マジか!」「買ってくか?」「欲しい欲しい!」「でも嬢ちゃんは魔法を使えんのか?そんな感じには見えねえが」「えっ、誰でもいいってわけじゃないの?」「魔力持ちの魔法が使える奴じゃないと意味ないんだよそいつは」「魔法ならエミルが使えるぞ」リザレリスはエミルへ視線を投げる。「ほう。にーちゃんは魔法が使えんのか?」「多少は、心得はありますが」エミルは控えめに答えた。そこへリザレリスが即ツッコむ。「多少なんてもんじゃねーじゃん!おっちゃん、こいつはマジでスゲーんだぜ?」「ずいぶんと若いのに、にーちゃんは魔導師なのか?」「まあ、最低限の訓練は受けました」「なあエミル。これ買ってさ、氷の魔法をわたしに見せてくれよ」リザレリスは笑って言ったが、本音だった。二日前にエミルの魔法による凄まじい動きを見せられてから、魔法に興味を持ち始めていたのだ。「かしこまりました。リザさまがご所望ならば」王女殿下が喜ぶならばと、エミルは承諾した。そうしてエミルが店主と売買の手続きを開始しようとした時だった。「おっ、なんだよ。ここもシケてんなぁ」と突然、他の客が店に入ってきた。こんな雑貨屋には到底ふさわしくない、やけにスラっとした背の高い黒髪の美男子だった。身なりも実にきちんとしていて、どこかの貴族の子息かと思われる。歳はエミルよりもやや上だろうか。 「おい店主」黒髪の美男子は店主のオヤジを見つけるなりズカズカと三人へ近づいてきた。「お客さん。申し訳ねえけど今はこっちのお客さんの相手をしててね」店主はエミルから代金を受け取るところだった。「おっ、それって、魔法のリングか?」男は会計カウンターに置かれた指輪に視線を落とした。「よくわかったな。今からこちらのお二人さんが買ってくんだ」「その石の感じだと、氷のリングだろ」「あんた、魔導師なのか?
Huling Na-update : 2025-04-16 Magbasa pa