この物語を始めるにあたり、始めにいささかの説明を必要とせざるを得ないことがある。それは主人公となるヒロインについてだ。なぜなら、彼女には三つのややこしい事情が存在するからである。ひとつは転生者であること。ひとつは転生前の記憶と人格をそのまま保持していること。ひとつは吸血鬼であること。 まずは、上記のことを踏まえた上で彼女のことを見ていただければと、お伝えしたい。それともうひとつ。彼女について、あらかじめご了承願いたいことがある。それは、彼女の転生前については多くを語りたくないということだ。理由は簡単だ。転生前の彼女...否、彼は、最大限言葉を選んで言えば、バカのつく遊び人だったからである。彼の特徴は二つ。長所→女にモテること。短所→女グセが悪いこと。さて、ここで簡単な算数の問題を考えてみよう。例えば「+10」と「ー10」があった場合に、それらを「かける(×)」とどうなるか?「ー100」だ。すなわち、それが彼である。そして大きくなった彼のマイナスは、いつしか彼の身に降りかかることになった。いや、こんな格好つけた表現、コイツにはいらない。彼は持ち前の女グセの悪さが災いし、数えきれないほど遊びまくった挙句に痴情の縺れで刺殺され、まだ若くしてその人生を終えたのである。どうだろう。おわかりいただけたであろうか。ヒロインの転生前について語りたくなかった理由が。叩けば埃が出まくりなのだ。そんなヤツが、何の因果か異世界の吸血姫に転生してしまったというのだから、この世はまことに奇妙というもの。いずれにしても......。新たな人生を歩んでいく彼女がどうなるのか。前世を反省して悔い改めるのか。前世を省みずバカを続けるのか。それはまだ誰にもわからない。そんな彼女を、あたたかい目で見守るも、冷たい目で突き放すも、皆様の自由です。しかし、願わくば皆様が、彼女の行く末に、どうか一喜一憂し賜らんことを。
Terakhir Diperbarui : 2025-03-14 Baca selengkapnya