リノアはエレナを探しながら集団に目を走らせ、村人たちの表情を一人ひとり観察した。顔の表情で大体、察しは付く。 私たちのことを良く思っていない人たちは、頬を上げて笑っているように見せていても目は笑っていない。 エレナは広場の端に立っていた。その落ち着いた姿は不思議と彼女を周囲から浮き上がらせる。喧騒の中でもエレナの存在だけが際立ち、時間がエレナの周りだけ遅れて流れているかのように見える。 若者がエレナに近づき、耳元に顔を近づけた。儀式に参加するという予想外の知らせを聞いたエレナは一体、どのような反応を示すのだろうか。 リノアはその様子を見つめながら、役割を託された日のことを思い出していた。私にその役割を担う力があるのか、村人たちの期待を裏切ることになるのではないか。不安が胸を締め付けた。 一瞬、驚きの表情を見せたエレナは、すぐにこちらをまっすぐに見つめ返し、静かに、そして力強く頷いた。揺るぎない覚悟が垣間見える。 リノアはクラウディアの横顔に目を向けた。この村に何か大きな危険が迫っていることをクラウディアは既に察しているのだろう。きっと私たちの為を思っての行動だ。一人より二人の方が安全だと思って……。 エレナが近づいてくる間、リノアは祭壇の前で佇みながら、村人たちの視線を背中に感じた。ざわめきが背後で広がり、断片的な声が耳に届く。「あの二人がシオンの代わりか……」 その声は疑念と不信が入り混じったものだ。中には蔑んだ目を向ける者もいる。 エレナが隣に立ち、リノアはエレナと視線を交わした後、正面を向いた。そのわずかな仕草だけで、心の奥底で意思が通じ合っていることが感じ取れる。言葉は必要ではない。 肌に貼りつく感覚を覚える中、リノアは手に力を込めた。これから二人で村を守って行かなければならない。 村人たちのざわめきが次第に強まり、広場を覆い始める。「シオンが死んでから森がおかしくなったんだ。何かの呪いじゃないのか?」「森が弱ってるって聞いたが、本当なのか? 木が枯れるなんて聞いたことがないぞ」 村人たちの不安が波のように広がり、次第に動揺へと変わった。 それでもリノアとエレナは祭壇の前にまっすぐ立ち、揺るぎない視線を前方に向け続けた。私たちが動揺するわけにはいかない。 村人たちのざわめきが風のように流れる中、リノアとエレナの立ち姿が、
Terakhir Diperbarui : 2025-03-28 Baca selengkapnya