Lahat ng Kabanata ng 君と奏でるトロイメライ~今度こそ君を離さない~: Kabanata 11 - Kabanata 20

40 Kabanata

思いがけない再会 05

そんなある日のこと、郵便受けに一通の手紙が届いていた。「お母さんから?」差出人は春花の母からだったが、開けてみるとまた封筒が入っており、その宛先は実家の住所が書かれていた。実家に届いた郵便を、わざわざ母が春花に転送してくれたのだ。「何だろう?」封筒の裏面を確認して、その差出人の名前に春花は心臓が止まるのではないかと思うほどドキッとした。「……桐谷くん?」走り書きのように名前だけ書かれたその字体は紛れもなく静の筆跡で、もう卒業してずいぶん経つというのに高校生の頃を彷彿とさせる。静の筆跡を忘れるわけがない。ドクンと心臓が高鳴る。緊張だろうか動揺だろうか。春花は震える手で封を開ける。すると、ペラっと一枚だけコンサートのチケットが入っていた。手紙は添えられていない。ただ、一枚のチケットのみだ。――桐谷静ピアノコンサート  十八時開演――「すごい、桐谷くんのコンサート……。え、明日じゃん!」日付を確認して春花はチケットとカレンダーを交互に見る。ちょうど明日は早番で、レッスンも夕方に一つあるだけだ。職場からすぐにコンサートホールへ行けばギリギリ開演時間に間に合うだろう。春花はごくりと唾を飲んだ。高校生の頃ずっと好きだった桐谷静。一時は同じ夢を見て切磋琢磨したあの日々が、春花の脳裏にまるで昨日のことのようによみがえる。「チケット、送ってくれたんだ……」感動に似た喜びが体の奥からわき上がり、春花はチケットを見つめながら胸がいっぱいになった。
last updateHuling Na-update : 2025-03-05
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思いがけない再会 06

いつもより少しフォーマルな服を着て、いつもより少し化粧にも気合いが入った。春花は鏡の前で角度を変えながら何度も自分の姿を確認する。乱れたところはないだろうか。春花と静は高校を卒業してから一度も会っていないが、静が益々魅力的な男性になっていることを春花は知っていた。それは街に掲げられているポスターであったり、テレビを賑わすワイドショーから得た静の情報だ。静は高校生のときもかっこよくて優しくて思いやりがあって、春花は何度も告白しようと思った。けれど告白してもしフラレたら、もう一緒にピアノを弾くことができなくなるかもしれない。この幸せな時間が一瞬で崩れ去るかもしれない。そう考えると、どうしても告白する勇気が出なかった。ずっとキラキラした綺麗な思い出として残しておきたかったのだ。今さら静とどうこうなる気はない。だがそんな気持ちとは裏腹に、春花は無意識に身なりを整えていた。駅前の花屋で足が止まる。花束を持っていったら迷惑だろうか。そんなことを思いつつも春花の気持ちは高まりを抑えられない。「すみません、花束を……」今できる最大限のお祝いをしたい。春花は静のイメージである淡い色合いの花を見繕ってもらい、胸に抱えて会場へ急いだ。会場では花束受付と書かれた専用のスペースが儲けられており、すでにたくさんの花束で溢れていた。その花々はとても豪華で美しく、春花は自分の持っている花束と比べて落ち込んでしまう。急にみすぼらしく思えてしまったのだ。「花束の受付はこちらです」「あ、はい、すみません」声をかけられて春花は急いで受付へ花束を託す。「こちらにお名前のご記入をお願いします」「……はい」ご芳名と書かれた紙に山名春花と書く。このたくさんの花束の中では春花の花束は埋もれてしまうだろう。名前を書いたとしても、果たして本人に見てもらえるかわからない。(有名人だもの、直接渡せなくて当たり前よね)頭の中では理解しているものの、やはり一言静にチケットのお礼を言いたかった。静は有名人だとわかっていても、同級生なのだから簡単に会えるのではないか、そんな甘い考えでいた春花だったが、静はもうずいぶんと遠いところにいってしまったという実感がわく。春花の手の届かない、遥か先にいるのだ。
last updateHuling Na-update : 2025-03-06
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思いがけない再会 07

満員のコンサートホールの中央前列を指定された春花は、先程からソワソワと落ち着かないでいた。後ろの方や端ならともかく、舞台から近いここは明らかに特等席なのだ。自分がいていい場所なのだろうかと何度もチケットを確認するが、席の番号は間違いない。ブザーが鳴り、ホールが薄暗くなった。ざわざわとしていたホール内も波が引くようにしんと静まり返る。その刻が近づくにつれて、春花の心臓はドキドキと高まっていった。パッと舞台に照明が輝き、舞台袖にスポットライトが当たる。わき起こる拍手に春花は肩をびくつかせながら、遅れて手を叩いた。カツカツと足音が聞こえる距離に、心臓がきゅっと音を立てる。タキシードに蝶ネクタイ。スラリと伸びた手足はスタイルのよさを引き立てる。かっちりとセットされた髪の毛は高校生のときとは違って、大人になったことを証明しているようだった。(これがピアニスト桐谷静……)あまりの美しさに見とれていた春花だが、ふと目が合った気がしてまたドキッと肩を揺らした。その流した目線は春花をとらえるとしばらく留まっていた気がしたのだ。(まさかね、偶然でしょ?)煌々と照らす照明は客席からは舞台がよく見えるが、舞台から客席はほとんど見えないはずだ。例え見えていたとしてもうっすらで、目が合うようなことはないだろう。それでも春花の気持ちは益々高揚していった。グランドピアノが照明によってより一層厚い存在感を出しているのに、舞台に立つ静はそれに負けないくらいの圧倒的存在感を醸し出していた。まだピアノに触れてさえいないのに、静の立ち振舞いは春花の心を揺さぶり続ける。
last updateHuling Na-update : 2025-03-07
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思いがけない再会 08

しんと静まり返るなか、ポロン……と演奏が始まった。普段聴いているCDの音源とは似て非なる重厚なグランドピアノの音。力強い音も繊細な音も、その音一つ一つを静が紡ぎ出していることに春花は鳥肌が立つほど体が震えた。鍵盤を叩く音の響きのみならず弾いている動作までもが美しく、静も含めすべてが芸術作品のようで観る者を魅了して止まない。これが、ピアニスト桐谷静の魅力なのだろう。春花は余計なことを考える余裕もなくなって、じっと静の演奏を見つめていた。静の繰り出す音楽という優しい空間に身を委ねる。それはまるで海の中を漂う海月のように、ふわふわ、ふわふわ、と。圧巻の演奏が終わり拍手喝采で幕が閉じた。ホールの照明が灯りまわりの客がぞろぞろと出口に向かって歩き始めるも、春花はしばらく呆然としていた。演奏の余韻が体中に広がって感動に包まれる。(すごかった……)感動を胸に、春花も遅れてホールを出た。外はすっかり暗くなっている。携帯電話の電源を入れて時間を確認し、最寄り駅まで歩き出したときだった。「山名!」突然背後から名前を呼ばれ、春花は振り向く。「……桐谷、くん?」息を切らしながらそこに立っていたのは、タキシードの上着を脱いだ軽装の桐谷静だった。
last updateHuling Na-update : 2025-03-08
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思いがけない再会 09

静はまわりに配慮しながら春花を人気の少ないところへ誘導する。先程まで演奏していた静が姿を現したとなれば大騒ぎになってしまうからだ。春花もそれを察知し、こそこそと隠れるように身を隠した。もう手の届かないところにいると思っていた静が春花の目の前にいる。高校のときと変わらず「山名」と苗字を呼んでくれる。その事実が何よりも嬉しかった。「山名、来てくれたんだ」「うん。桐谷くん、今日は素敵な演奏ありがとうございました。チケットも」会話をするのは実に五年ぶりだというのに、二人の間にぎこちなさはまったくない。むしろ再会できたことの喜びが溢れ出てくるような、そんな気持ちの高まりがある。「うん。来てくれて嬉しいよ」「夢を叶えたんだね、本当にすごいよ」「山名はピアノ続けてる?」「うん。楽器店で働きながらピアノの先生をしてるよ。まあ、桐谷くんとは雲泥の差だけどね」自虐的に笑いながら、春花は感傷的な気分になった。静との差を自ら評価してしまったことでなんだか惨めな気持ちになる。「山名……」静が口を開くと同時に、春花の携帯電話がけたたましく鳴り出す。ビクッと肩を揺らしながら春花は携帯電話を取り出す。誰からの着信か大方予想はついていたが、春花は画面に表示された名前が思っていた通りの人物で、ガックリと肩を落とした。
last updateHuling Na-update : 2025-03-09
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思いがけない再会 10

「ちょっとごめんね」「ああ、うん」静に断りを入れてから、春花は電話を耳にあてた。「……うん、今仕事終わって帰るとこ。だから仕事だってば。……すぐ帰るから」やはり電話の主は高志で、今どこにいるんだ、帰りが遅いなどと文句を連ねる。ため息深く電話を切ると、静が怪訝な表情で春花を見ていた。「あ、ごめん、桐谷くん」「山名、もしかして無理やりコンサート来てくれた?」「え? ああ、いや、無理やりっていうか、桐谷くんのコンサートに来たかったのは本当。……実は彼氏の束縛が激しくて、内緒で来たの」「彼氏の束縛?」「あはは、もう、困っちゃうよね。束縛なんてさ」笑いながら何でもないように言う春花だったが、静の表情は益々強張った。そしてうかがうように聞く。「山名、今幸せ?」「え?」「彼氏に束縛されて幸せ?」ドクンと心臓が嫌な音を立てる。その確信を突いた問いは、春花の心をざわざわとさせて落ち着かない。「……ど、どうかな、あんまり幸せじゃないかも」「山名……」「ごめん、そろそろ帰るね。これからも頑張ってね」春花はふいと目をそらすと静の元を去ろうと足を踏み出す。だが、ガシッと左腕を掴まれ驚きのあまり足を止めた。「待って。次も来て」その意思の強い綺麗な瞳は、春花をとらえて離さない。春花は小さくすうっと息を吸い込んでから、「うん」と頷いた。その答えを聞いてから静はそっと手を離し、春花は控えめに手を振ると急いで夜道へ消えていった。静は複雑な気持ちで、春花の姿が見えなくなるまでずっと後ろ姿を見つめていた。
last updateHuling Na-update : 2025-03-10
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思いがけない再会 11

静に掴まれた手首がずっと熱を持っているようで、春花はあの日以来何度も左手を胸に抱えていた。事あるごとに高校時代が頭の中でよみがえり、そして変わらず素敵だった静の姿を思い出してはドキドキが止まらない。「山名さんも桐谷静のファン?」社員割引でCD購入の手続きをしていた春花に、店長の久世葉月《くせはづき》が声を掛けた。「え?」「毎回買ってるよね。いいよね、桐谷静」「はい、すごく癒されます。流れるような旋律がとても好きで目標です」「うんうん、わかる。山名さんのピアノ、桐谷静に似てるよね」「えっ? そうですか?」「何かこう、体全体で表現するとこっていうのかな。ピアノとの一体感が凄いっていうか。そうそう、山名さん、レッスンの評判もいいみたいね。これからも頑張ってね」「はい、ありがとうございます」葉月は敏腕店長で、楽器店の売上が横ばいだったり伸び悩む店舗が多い中、ここ数年は右肩上がりで売上を上げている。楽器を売ることはもとより音楽教室にも力を入れていて、指導に関して経験の乏しい春花も入社後は葉月によって鍛え上げられた。今では一人前に先生と呼ばれ、一度ついた生徒が辞めることは滅多にない。だからこそ、忖度なしの葉月の言葉は重みがあり、春花は嬉しくも照れくさい気持ちになった。
last updateHuling Na-update : 2025-03-11
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思いがけない再会 12

仕事が終わり家に帰ると、玄関には高志の靴が脱ぎ捨てられており、春花は無意識にため息をつきながら中へ入っていく。「遅い」開口一番、高志は不機嫌に言い、その言い草に春花もカチンとなって強い口調で言い返した。「来るなら来るって言ってよ」「言ったよな」「聞いてないよ」「仕事終わったか聞いたんだから、来るに決まってる。それくらいわかるだろ?」春花は帰る前に見た高志からのメッセージを思い出すも、それらしき会話をした記憶はない。「わからないよ」「わからないならお前はバカだ。理解力がない」どこまでもあげつらう高志は自分が正しいとばかりに春花を責め続け、相手をひれ伏さんとする。だが春花ももう限界を超えているのだ。いつまでも高志の言いなりにはならない。春花はぐっと拳を握る。「……もう帰ってよ」ようやく絞り出した声は少し震えてしまったが、それでも負けてたまるかという意志が込められている。「ふざけんなよ」高志の言葉は更にヒートアップし、手が出ることはないものの、春花の胸はえぐられるようにズキズキと痛んだ。悔しくて悔しくて、泣きたくないのに涙が溢れてきて、それを見た高志は更に勝ち誇ったように「泣けばいいと思って」と責め立て、ようやく長いケンカが終わったのは深夜になる頃だった。散々罵り春花を泣かせた高志は気が済んだのか、コロッと態度を変える。「俺は春花が好きだから、春花に会いたかったんだ。俺は春花がいないとダメなんだよ」甘えた声はただの耳障りでしかなく、春花は何も返事ができなかった。「春花、ほらおいで」高志は春花に優しい笑顔を向けながら、春花を包み込むようにぐっと抱きしめる。いつもならこれで仲直りをする。いい子でいたい春花は高志のことを許してしまうのだ。だけど今日の春花は違った。もううんざりだとばかりに、抱きしめられても腕はだらんと下ろしたまま、彼を抱きしめ返すことはなかった。
last updateHuling Na-update : 2025-03-12
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守るもの 01

春花は以前よりも静のCDを聴く日が多くなった。静のピアノは春花の癒しになっている。むしろ今この音源が失くなってしまったら春花の心は崩れてしまうほどに、脆く壊れやすくなっている。静は春花の心の支えなのだ。そんな日々の中、また母から転送される形で郵便が届いた。それを目にした瞬間、春花の期待は一気に高まる。『次も来て』以前、静に掴まれた左手首が急に熱を持つような感覚を覚え、春花ははやる心を抑えながら封を開けた。ペラリと入っている一枚のチケット。 手紙も何もない、無機質な一枚の紙。それなのに春花にはずしりと重みを感じるものだ。「すごいよ、桐谷くん」ほう、とついた感動のため息は、久しぶりに春花の心を明るくさせた。静はどんどんと実績を上げ、自分の地位を確立している。そんな静の活躍に感化され、春花もまた、失いかけていた自分の在り方を見直していた。「私も頑張らなくちゃ」春花は携帯電話をぐっと握ると、ずっと言い出せずにいた言葉をゆっくりと文字に書き起こした。【もう別れよう】ずっと高志との関係を悩んでいた。嫌だと思いながらもずるずると高志のペースに流され、完全に自分の気持ちを押し殺していた。そんな情けない自分ともさよならしたい。春花は震える手で送信ボタンをタップする。すんなり別れてくれたら万々歳だ。だが高志のことだからねちっこく文句を言うかもしれない。いろいろと心の準備をしていると、案の定携帯電話が鳴り出した。春花は大きく深呼吸してから耳に当てる。『別れるってどういうことだよ?』怒り口調なのは想定していた。だから春花は冷静に言葉を紡ぐことができる。「……もう嫌なの。束縛されるのもつらい。いつも私は高志を怒らせちゃうし。別れるのがお互いのためだよ」『はあ? 何言ってんの? まさか好きなやつでもできたのか?』「違うよ」『春花がいないと俺は死ぬよ』怒り口調から、急に弱気な声になる。春花は惑わされないようぐっと堪えるが、妙な罪悪感に苛まれる。だがそれを打ち払うかのように首を横に振った。「……大丈夫だよ。今までありがとう」それだけ言うとそっと通話を終了し、深く息を吐き出した。 携帯電話を握りしめるその手はカタカタと震えてしまう。まずは一歩前進といったところだろうか。春花は緊張から解かれたかのようにベッドに身を投げ出した。
last updateHuling Na-update : 2025-03-13
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守るもの 02

◇静のコンサートはまたしても特等席が用意されていた。期待に胸を膨らませながら、春花は舞台を見守る。ここ数日、高志のことでいろいろありすぎて疲弊していた春花だったが、今日のこの日を楽しみにしていた。むしろこのコンサートを励みに日々を過ごしていたといっても過言ではない。やはりグランドピアノに劣らず存在感を放つ静は、スポットライトに照らされてより一層輝いて見えた。流れる旋律は耳に心地良く響いていく。(ああ、いいなぁ)静の音楽に癒されるだけではなく、弾いている姿は春花をうずうずとさせる。(私もピアノ弾きたいなぁ)静の演奏する姿を見ていると、高校の時のあの音楽室での思い出が鮮明によみがえってくるのだ。あの時が一番楽しくて輝いていた。春花はじんわりとした気持ちに思わず目頭を拭った。コンサートが終わるとロビーが人で溢れかえり、しばらくすると黄色い歓声が上がった。(何だろう?)出口に向かって自然と列が出来上がり、春花もその波に乗った。珍しくお見送りがあるのだ。お見送りとは、こういったコンサートの終演後、演奏家がお客様の元へ姿を現し言葉を交わしたりできる貴重な場である。一人ずつ丁寧に対応する静を遠巻きに見ながら、優しいところは昔と何も変わっていないのだと春花は嬉しくなった。
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