◆◆◆◆◆ 部屋に、静かな沈黙が落ちた。 紅茶の香りだけが微かに漂う空間で、遥は冷めたカップを見つめたまま思考を巡らせる。 コナリーの言葉を否定したのは自分だった。 それなのに、彼が自分から離れていくのではないかと、不安に駆られている。 (……何を考えてるんだ、俺。) 遥は内心で自分を叱咤した。 自分が答えを出したのに、コナリーの気持ちが遠のくことに怯えるなんて、都合が良すぎる。 けれど、さっきのコナリーの表情を思い出すと、胸の奥が冷たくなった。 (……なんで、そんな顔するんだよ。) 普段と変わらぬ穏やかな表情。 それなのに、その奥には何かを押し殺したような、冷えた影が見えた気がした。 遥が「俺より大事な人ができたら」と言ったとき、コナリーの瞳がわずかに揺れた。 けれど、彼はそれ以上何も言わず、ただ静かに頷いた。 それが、妙に引っかかった。 (なんか……このまま距離が開いていく気がする。) 無性に焦りを覚えた遥は、何か話題を変えようと口を開いた。 「なあ、ハリーと夏美に何かプレゼントを贈ろうと思うんだけど。」 不意に投げかけた言葉に、コナリーがわずかに眉を上げた。 「プレゼント、ですか?」 「ああ。婚約のお祝いにさ。」 遥は、努めて軽い調子を装いながら言った。
Last Updated : 2025-03-11 Read more