Semua Bab 男聖女は痛みを受け付けたくない: Bab 21 - Bab 30

32 Bab

第二十一話 封じられた指輪

◆◆◆◆◆ 王宮の広間に、ルイスと王だけがいた。 王宮の奥深くにあるこの謁見の間は、普段よりも静かで、外の喧騒がまるで別世界のようだった。 ルイスは父である王を見つめながら、真剣な口調で進言した。 「魔王領の調査と開拓を正式に進めたいと考えています。」 王は微かに目を細める。 「魔王の領地をか……?」 「はい。魔王は討たれました。しかし、あの地には未だに強い魔力が残り、人々が踏み入ることができません。」 ルイスは王へと一歩進み出て、続けた。 「王国の領土として、魔王領を無秩序なまま放置すれば、他国の介入を許すことになります。」 王はゆっくりと指を組み、考え込んだ。 しばらくの沈黙の後、低く口を開く。 「……確かに、お前の言う通りだ。」 「では、許可を?」 「許可しよう。」 ルイスの胸に安堵が広がる。しかし、王の次の言葉が、その余韻を一瞬で断ち切った。 「だが、お前にはもう一つ、密かに果たすべき任務がある。」 王は横に控えていた侍従に合図を送り、小さな黒い箱を差し出させた。 「……これは?」 王は箱を開いた。 中には赤い宝石の指輪が収められていた。 透き通るような、深紅の輝き。 それはただの装飾品にも見えたが、どこか不吉な雰囲気を感じさせる。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-02-26
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第二十二話 魔王の囁き

◆◆◆◆◆ 遥がこの世界に召喚されたとき、最初に驚いたのは、言葉の違和感がまったくなかったことだった。 王国の言葉を話す人々の声が自然と耳に入り、自分の口から出る言葉も違和感なく通じる。文字も問題なく読めたし、歴史や地理といった基礎的な知識も、まるで生まれたときから知っていたかのように頭に入っていた。 聖女は世界に適応する力を持つ。神殿の者たちからそう説明され、遥も納得するしかなかった。 だからこそ、最初は特に疑問を抱かなかったのだ。 しかし―― 「なんで古代語だけ読めないんだ……」 図書館で広げた書物を前に、遥はため息をついた。 この国の歴史書や魔王討伐に関する文献には、時折古代語が使われていた。遥が知りたい情報が書かれていると思われる箇所ほど、意味不明な文字がずらりと並んでいる。 聖女としての力が失われた今でも、王国の言葉は読めるし話せる。しかし、古代語だけは最初から理解できなかった。 遥は頬杖をつきながら、机の上に散らばった書物を睨む。 「……どうにかして読めるようにならないかな」 何か方法があるはずだ。そう思いながら、頭の中でゲームの記憶を辿る。 ゲームの中では、物語の後半で「古代語を読めるアイテム」が登場していた。それは―― 「……赤い宝石……」 遥は眉をひそめた。 確か、王族の宝物庫に保管されているはずだった。貴重なアイテムで、ゲーム内では王族の信頼を得ることで入手できたはず。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-02-27
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第二十三話 揺れる心

◆◆◆◆◆  王城の回廊を歩いていたコナリーは、懐かしい顔に出会った。 魔王討伐で共に戦った魔法使い、エドワードだ。 「やあ、コナリー。久しぶりだな。」 「エドワード、お前も王都にいたのか。」 「最近は宮廷魔導士としての仕事が増えてね。お前も軍務顧問として忙しいんだろう?」 「まあな。」 軽く言葉を交わす二人だったが、エドワードはどこか誇らしげな笑みを浮かべていた。 「実は報告があるんだ。」 「報告?」 「契約した聖女と婚約した。」 コナリーは目を見開いた。 「……婚約?」 「そうだ。魔王討伐を終えて、改めてお互いの気持ちを確認したんだ。契約の時点で強い絆があったからな。今度は正式に、将来を共にすることにした。」 「……そうか。」 エドワードは少し照れくさそうに笑った。 「お前もどうだ? 契約していた聖女と、そういう話はないのか?」 「……遥とは、そういう関係ではない。」 即答したものの、自分の言葉にどこか引っかかりを覚える。 エドワードは肩をすくめて笑った。 「まあ、今はそうかもしれないがな。」 「……おめでとう。幸せにな。」 「ありがとう。じゃあ、またゆっくり話そう。」 軽く手を挙げ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-02-28
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第二十四話 指輪の秘密

◆◆◆◆◆  「遥、どうかしましたか?」 コナリーの落ち着いた声が響き、遥とルイスの肩がわずかに跳ねた。 遥は一瞬コナリーの方を見たが、すぐに視線を逸らしてしまう。その態度にコナリーはわずかに眉を寄せる。 そして、コナリーがさらに一歩近づいたその瞬間――ルイスが静かに遥の肩を引き寄せ、耳元で囁いた。 「私に話を合わせてください、遥。」 驚く遥だったが、ルイスの表情を見て、意味を察する。――今は本当のことを話すわけにはいかない、と。 わずかに戸惑いながらも、遥は小さく頷いた。 ◇◇◇ 「遥、顔色が優れませんが、大丈夫ですか?」 コナリーは心配そうに尋ねる。 「……いや、大丈夫だよ。」 視線を彷徨わせながら答える遥だったが、コナリーは疑念を拭えなかった。何かがおかしい――そう感じたのだ。 そして、ふと遥の手元に視線を落とす。 「――その指輪は?」 コナリーの低い声が響く。 遥は思わず左手を引っ込めたが、コナリーの視線は鋭く、逃がさなかった。彼の指輪を見つめる瞳には、明らかな動揺が浮かんでいた。 「ルイス様……その指輪、遥に贈られたものなのですか?」 沈黙が流れる。 その一瞬の間に、遥の鼓動は早鐘のように鳴った。 どうする? 何と言えばいい?
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-01
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第二十五話 封じられた指輪

◆◆◆◆◆  庭園を抜け、王城の内部へと足を踏み入れると、そこには冷たい石造りの廊下が続いていた。 「さあ、こちらに。」 ルイスの声が静かに響く。 遥は戸惑いながらも、彼の後に続いて王城の廊下を歩いた。 王族の居住区であるこのエリアは、他の区画とは明らかに違う。絢爛たる装飾が施された柱や壁、天井には精巧な彫刻が施され、随所に王家の威厳を示す紋章が刻まれている。 (すげぇ…やっぱ王族の居住区は豪華だな) 遥は緊張しながらも、好奇心が隠せずに周囲を伺う。 城内は静まり返っていたが、それでも衛兵たちが定間隔で配置されており、遥はその威圧感に思わず身を引き締める。 やがて、ルイスが歩を止めると、目の前には重厚な扉がそびえていた。扉の両脇には、王家直属の近衛兵が立っている。二人とも鋭い視線でルイスと遥を見つめていたが、ルイスが一歩前に進むと、すぐに敬礼をした。 「殿下、お帰りなさいませ。」 「ご苦労。」 ルイスは短く答えると、静かに続ける。 「この者と話がある。しばらくの間、部屋の外には誰も近づけるな。」 「承知いたしました。」 近衛兵たちは頷き、一歩後ろへ下がると、扉の前から移動した。 ルイスは扉に手をかけ、軽く押し開く。 「さあ、入りなさい。」 ◇◇◇ ルイスの自室は、王族らしい品格を感じさせる空間だった。 「お邪魔
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-02
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第二十六話 魔王の小指

◆◆◆◆◆ 「魔王の小指!? 冗談だろ?」 遥は驚愕し、反射的に左薬指の指輪を外そうとした。しかし、指輪は外れる気配すらなく、まるで遥の指の一部になったかのように馴染んでいる。 「私も冗談でこんな話をするほど暇ではない。」 ルイスは腕を組みながら、低い声で続ける。 「王は、これはただの宝石ではなく、魔王の小指が封じられている指輪だと言った。そして、“王都にある方が危険”だとも。」 「王都にある方が……危険?」 遥は眉をひそめた。 「そうだ。それゆえに、王はこの指輪を魔王領へ戻すよう私に命じた。」 「戻すって……魔王領に放置しろってことか?」 「そういうことだな。」 遥は言葉を失った。 ――魔王を封じた指輪を魔王領に放置するのは危険だ。直感的にそう感じた。 しかし、王が決めたのだから何かしら理由があるのだろう。そう自分を納得させようとしたが―― 「待てよ、それじゃあ――」 遥は自分の指に嵌まった指輪を見つめる。 「俺、このまま魔王領まで指輪ごと運ばれるってことか?」 「それも選択肢の一つだが……問題は、指輪を外せないことだ。」 ルイスは指を組みながら、じっと遥を見つめた。 「遥、何度やっても指輪は外れないのか?」 「……ああ。ダメだ、びくともしない。」 遥は指輪をつまみ、捻ったり引っ張ったりしてみ
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第二十七話 秘められた指輪

◆◆◆◆◆  ルイスの部屋を出る前、遥は改めて自分の左手を見下ろした。 その指には、未だ外れない赤い宝石の指輪が光っている。 「……これ、やっぱり目立つな」 遥が小さくぼやくと、ルイスが手袋を差し出した。 「そのための手袋だ。今からは常に着けておくようにしろ。」 遥は手袋を受け取りながら、少し困惑する。 「手袋も悪目立つする気がする。」 ルイスは微かに笑みを浮かべながら言った。 「王家の紋章が刻まれた手袋だ。不審に思っても、無理に外そうとする者はいない」 「まあ、そうだろうけど…」 遥は渋々ながらも、言われた通りに手袋をはめる。 指輪が見えなくなったことに、少しだけ安心する気持ちもあった。だが、元々はルイスの手袋のため、遥の手のサイズには合わずブカブカしている。 「ブカブカしてる」 「遥のサイズにあった手袋を用意する。それまでは我慢してくれ。」 「分かった……手袋を嵌めている理由を尋ねられたら?」 「手の火傷を隠すためだと言えばいい。」 「……火傷ねぇ。」 遥は苦笑しながら、手袋を指先までしっかりとはめた。 それを確認したルイスは、満足そうに頷いた。 「さて、遅くなったな。部屋まで送ろう。」 「送らなくていいよ。王城の中だし、一人で歩ける。」 
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-04
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第二十八話 隠せない嘘

◆◆◆◆◆  ルイスの背中が廊下の向こうへと消えていくのを見届けた遥は、そっと息をついた。 ――コナリーには指輪のことを話せない。 ルイスにそう忠告されたばかりで、胸の奥に得体の知れない重たさが沈み込んでいた。それでも、目の前にいるコナリーの姿を見た瞬間、その迷いは一時的にかき消された。 「コナリー。」 「お帰りなさい、遥。」 コナリーの声は温かくて、遥は思わず笑みを浮かべた。 「いつから待っていたの?」 「そう待ってはいません。」 コナリーは穏やかに微笑んだ。その表情は変わらず優しく、遥の心をほっとさせる。  ――けれど。 コナリーの視線がふと遥の手元へと向かう。 「それよりも……その手袋は?」 「……!」 予想していた質問だが、遥は思わず左手を握りしめ身構える。 「火傷をしたんだ。」 できるだけ平静を装いながら答えたが、一瞬の間ができたことを、コナリーは見逃さなかった。 「火傷……?」 コナリーの表情が曇る。 「傷を見せてください。治療はされましたか?薬は?」 矢継ぎ早に問いかけるコナリーに、遥は苦笑しながら手を振った。 「大したことないって。すぐ治るさ。」 「ですが――」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-05
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第二十九話 届かない距離

◆◆◆◆◆ コナリーは、遥の向かいに座りながら静かに紅茶を見つめていた。 目の前には、いつも通りの遥がいる。 だが、どこか遠くなったような気がしてならない。 ――指輪のことを話してくれないのか、遥。 契約を交わしていたときは、互いの痛みを感じ、まるで体が重なるような感覚さえあったのに。 それが今は、まるで目の前に見えているのに手が届かないような、そんなもどかしさがあった。 遥が自分から離れていく。 その現実を突きつけられるたび、コナリーの胸は締めつけられるようだった。 (私は……遥の何なのだろうか。) 聖女と契約した騎士――かつてはそうだった。だが今は、ただ王国の騎士として彼を守るだけの存在になってしまったのだろうか。 その答えを探すように、彼は別の話題を振ることにした。 「……今日、王城内でハリーと会いました。」 「ハリー?」 遥はカップを口に運びながら、小首を傾げる。 「魔法使いの?」 「ええ。」 コナリーは頷く。 「彼は契約聖女の夏美と婚約したそうです。」 「えっ……!」 遥は目を丸くした。 「ハリーと夏美が!? 婚約?」 「はい。魔王討伐を終えた後も二人は交流を深め、先日、ハリーが求婚し、受け入れられたとのことでした。」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-07
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第三十話 揺れる気持ち

◆◆◆◆◆  「私は本気です。」 コナリーの言葉が静かに響いた。 遥は思い切り紅茶を噴き出し、咳き込みながらコナリーを見つめる。 「お、お前……何言ってんの?」 慌てて袖で口元を拭いながら、遥は混乱したまま言葉を探した。 「だって、お前、俺が女でも男でも関係ないって……そりゃ、そういう考えの人もいるだろうけどさ。冗談だろ?」 「冗談ではありません。」 コナリーはまっすぐ遥を見つめ、静かに答えた。 「私は、遥がどのような姿であろうとも、貴方を大切に思っています。」 「……っ」 遥は言葉に詰まる。 普段と変わらぬ静かな口調。けれど、その言葉に宿る真剣さが、遥の胸を妙にざわつかせる。 冗談なんかではない。 コナリーは本気でそう言っている。 曖昧に笑って誤魔化そうとしたが、コナリーの表情を見て、それができる雰囲気ではないことを悟る。 「……いや、でも、俺は男だし?」 「それが何か問題ですか?」 「えっ……」 コナリーはわずかに首を傾げる。 「貴方が女性ならば婚約する可能性があった、と貴方は言いましたね。」 「あ、あれは冗談で……」 「貴方が女性だったら婚約を考えたのですか?」 「
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-10
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