長旅も九日が経つと流石に慣れてきた。今更ながら思ったが、女性連中の風呂はどうしているのだろう。アレンさんやクロウリーさん、そして僕らは男だからまあ我慢すればいい。といっても毎日寝る前に濡れた布で身体くらいは拭いているが、女性はそれだけで満足はできないはずだ。「アカリ、風呂ってどうしてんの?」「?お風呂なんてどこにもないけど」「いや、それは分かってるけど。もしかして僕らと同じで濡れた布で身体を拭くだけ?」「そうだけど」驚いた。こっちの世界の女性は案外その辺り気にしないらしい。清潔感という面だけ見ればやはり日本の圧勝のようだ。「身体を拭いただけでさっぱりできる?」「うん」冒険者だからだろうか。しかしソフィアさんはそういうわけにはいかないだろう。そこで僕は彼女に聞いてみる事にした。「ソフィアさん、この旅の間はお風呂に入れていないと思いますけど大丈夫ですか?」「何の事かしら?それは当然でしょう。ああ、もしかして気にしないのかという事?」「そうです。皇女様なのにその辺り大丈夫なのかなと思いまして」「気にしないわね。どうせ外にいれば汚れるのだからいちいちお風呂で身体を清めても意味がないわ」まあそれはそうかもしれないが皇女様であろうお方がそれでいいのかと思ってしまう。姫様って綺麗好きなイメージがあったのに。「流石に臭いには気を付けているわよ、ほら」ソフィアさんが手を広げバタバタすると、ふんわりと花の香りが漂ってきた。香水かな、なんとも心が洗われる匂いだ。「香水は乙女の嗜みね。これがあるから多少身体が汚れていてもきにならないのよ。貴方の世界では違ったのかしら?」「そうですね……人によると思いますが、一日に二度お風呂に入らないと気が済まない女性もいましたよ」僕の姉である。綺麗好きがいきすぎて毎日朝と夜にお風呂に入っていた。僕がその話をするとソフィアさんは顔を顰める。
Last Updated : 2025-04-27 Read more