私たちを隔てるもの のすべてのチャプター: チャプター 21

21 チャプター

第21話

「今まで散々シャンスを与えたのに、それを無駄にしたのはあなた自身よ!」春日の声は怒りに震えていた。初めて湊が雪葉を連れて海外移住を提案したとき、彼女は耐えた。二度目も、彼女は耐えた。チャンスはいくらでもあったのに。千秋は静かに首を振り、鋭い目つきで湊を見つめた。「永遠にわからないだろうな。君が踏みにじったのは、彼女の真心そのものだ」結局、湊は刑務所送りとなった。だが、判決はたったの1ヶ月だった。というのも、誰一人として下剤の被害を受けていなかったからだ。実は、千秋は湊が結婚式を利用して春日に復讐しようとしていることを知っていた。そこで、偽の情報を流し、わざと湊をおびき寄せることにしたのだ。いわば、事前のリハーサルとして。結果、湊は本当に現れた。彼は知恵を絞り、強力な下剤を持参し、一つのテーブルだけに仕込むという手段に出た。重大犯罪を避けるための策だったのだろう。翌日、春日は燕とアフタヌーンティーを楽しんでいた。湊が1ヶ月しか服役しないと知った燕は悔しそうに言った。「なんだか惜しいね。8年、いや10年くらいは刑務所に入れておきたかったのに」春日はお茶を一口飲み、薄く微笑んだ。「私もそう思ったけど、旦那はそう考えてないのよ」「旦那?」燕は驚き、わざとらしく感嘆の声を上げた。「ちょっと見てよ、今のあなたのこの状態!前より何倍も幸せそうじゃない」「前は湊があなたから搾取してたけど、今の結婚は千秋があなたを満たしてる感じ」「でも千秋がどう思ったんだろうね?普通なら、湊をそう簡単に許すはずがないじゃない」春日は口元を少し持ち上げ、微笑みを浮かべた。「私たちはね、最初から湊を長く刑務所に入れるつもりなんてなかったの」「千秋はすでに湊の両親に連絡して、彼が出所したら精神病院に送ることに同意させてるわ」これこそが千秋が結婚式を餌にした本当の目的だった。犯罪の証拠は揃っていなかったが、今回の件を交渉の材料にして湊を精神病院に2年間入れる計画を立てていたのだ。燕は眉をひそめ、不思議そうに聞いた。「まさか同意したの?」春日は穏やかに笑い、そっと首を振った。「夏山母は最近妊娠していてね、たぶん男の子だろうって言われてるの」「もう湊は使い物にならないって判
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