少し離れた街灯の下に、時也が立っていた。その姿はまるで夜の闇を背負いながらも、ひときわ輝いているようだった。私は彼のもとへ歩み寄り、その腕に自分の手を絡めると、気持ちを切り替えるように明るく微笑んだ。「行きましょう」車に乗り込むと、彼は私のシートベルトを丁寧に締め、スマートフォンを手渡して運転席へ戻った。「国内のことは詳しくないけど、いくつかレストランをリストアップしておいた。どれがいいか選んでみて」彼とは味覚が似ていて、海外で彼が選んだレストランはどれも期待を裏切らなかった。スマートフォンの画面には五つのレストランが表示されていたが、私は迷わずランキング1位の「サンセットレストラン」を指差した。「ここにしよう。何度も行ったことがあるけど、味は間違いないから」レストランでは、過去に美味しいと思った料理を迷いなく注文しながら、彼に微笑みかけた。「これ全部美味しいわ。帰国後の最初の食事、あなたの就職活動がうまくいくように乾杯」豪華で洗練された雰囲気、そしてバイオリンの美しい旋律。かつて「もう二度と来たくない」と心に決めたこのレストランに、二年ぶりに再び訪れるとは思わなかった。しかし、今回の私は、あの頃の孤独感を少しも感じていなかった。時也はワイングラスを持ち上げ、私のグラスに軽く当てた。夜景が揺れるグラス越しに、シャンデリアの光が彼の端正な顔立ちを柔らかく際立たせていた。「今日は君をお祝いする約束だったけど、俺の分もついでにいいかな?」「明奈、来週、俺の両親が帰国するんだ。一緒に会いに行ってくれないか?」私は彼の真摯な瞳を見つめ、自然と微笑みが浮かんだ。「うん、いいよ」
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