二人きりになった。尚之とあの日、不愉快なまま別れて以来、初めての再会だった。あの日から、私たちはもう一生、何の接点もないだろうと思っていたのに。でも、運命はまるで私を試すみたいに、こんな形で、しかもこんな状況で再び引き合わせてきた。険しい顔をした尚之が、一歩一歩近づいてくる。そのたびに、私は無意識に後退したい衝動に駆られた。けれど、その余裕すら与えられずに手首を掴まれ、そのままレジカウンターに押し付けられた。尚之は全身で私を囲うように立ちはだかり、片手を私の腕のそばについて体を少し傾けながら、私を見下ろした。「俺と瑠奈がペアリングされたけど、じゃあ君は誰とペアリングするつもりだった?大崎か、それとも神浜の大物の誰か?」尚之のその口ぶりは、まるで私が値札を付けられた商品みたいだった。前にも彼が同じようなことを言っていたのを思い出した。そのせいで、彼の中で私はどういう存在になっているのか、もうわかりきっていた。それでも、その侮辱的な物言いにはどうしても怒りを抑えられない。私は尚之をじっと見つめ、わざと挑発するように笑った。「あなたの予想では、私、どっちを選ぶと思う?」「遥!」尚之は歯ぎしりするように私の名前を呼び捨てた。私はゆっくりと手を伸ばし、彼の顔に触れようとした。でも、あと少しというところで、その手で彼を突き放した。「でもね、どっちを選ぶにしても――あなたを選ぶことはないわ」笑みを引っ込め、冷たい表情で勢いよくその場を去った。店を出た瞬間、藍が駆け寄り私の手を握った。「遥、大丈夫?」私は首を振ったが、もう買い物を楽しむ気分ではなくなった。「もう帰ろう」「うん」藍はすぐに家の運転手に連絡して、私たちはすぐにその場を離れた。その場を去る時、ずっと私を見つめる視線を感じたが、振り返りたくもなかった。ただ、この場所から少しでも早く離れたかった。清水家に戻った後、すぐに部屋に戻ろうと思っていたら、藍の両親が大学入試の前日に海外から飛んで戻ってきて、愛娘と過ごすためだった。藍は大喜びし、両親に飛びついて「パパ、ママ!」と甘え声で叫びながら抱きついた。私はその場に立ち尽くし、どうすべきか一瞬わからなくなった。10秒くらいは呆然としていただろうか、そっとリビングから抜け出した。
最終更新日 : 2025-01-02 続きを読む