病院から2年間の海外研修の話が持ち上がったのは、まだ悠真と別れる前のことだった。 彼を置いて行くのが寂しくて断りたい気持ちと、せっかくのチャンスを無駄にしたくない気持ちで、どう切り出すべきか迷っていた。彼の意見を聞いてから決めたいと思っていたけれど、その前に私たちは別れてしまった。 今となっては、あの時すぐに断らなくて良かったと思っている。 研修の準備をするため、久々に英単語帳を開いた。英語の試験が終わってからずっと放置していたせいで、語彙力はすっかり落ちている。それに加えて、医療用語まで覚えなければならないのは本当に大変だ。 ふと、無意識に口をついて出た言葉に、自分で驚いた。 「悠真、お水持ってきて」 気づいた時には、彼がもういないのだと思い知らされる。それと同時に、もし彼がまだそばにいてくれたらと、切ない気持ちが胸を締めつけた。 そして再び、悠真に会うことになる。 それは思わぬ形で訪れた。胸の奥が締めつけられるような痛みとともに、遠くの席でサイコロゲームを楽しんでいる彼の姿を目にしたのだ。 彼の傍らには、卒業写真で見たあの女の子がいる。悠真は彼女の背もたれに軽く手を置き、柔らかく笑っていた。 「どうしたの?透子、ぼーっとして」 一緒に来ていた同僚が、不思議そうに声をかけてきた。 「ううん、何でもないよ。行こう」 私の送別会が行われたその日、ディナーの後で誰かが「クラブで踊ろう」と提案した。普段なら社交的ではない私は断るところだが、みんなの熱意に押されて仕方なく同行することにした。 まさか、その場で悠真たちに出くわすなんて思いもしなかった。 普段は酒をほとんど飲まない私が、この日はひたすらグラスを重ねていた。頭がぼんやりして、胸がじわりと痛む。 周りの喧騒に混ざれない私は、一人で隅に縮こまり、彼らが楽しそうに乾杯を繰り返す様子を眺めていた。 なんだかこの賑やかさが、自分にはまるで合わない気がした。今日の送別会は私が主役のはずなのに、どこかよそよそしい居心地の悪さを感じていた。 おしっこしたくなって、トイレに向かうことにした。ふらつく足取りで歩いていると、運悪く悠真たちと鉢合わせてしまった。 彼らのグループは、悠真とその女の子をからかって盛り上がっていた。 彼女は恥ずかしそうに悠真の腕の
Last Updated : 2024-12-02 Read more