一度誰かを意識すると、不思議とその人に何度も会うものだ。 彼女もそうだった。 いつも一人でいるか、せいぜい数人の友人と一緒にいる彼女。 変わらないのは、どんな時でも淡々としたその表情だ。 ある日、教授が急用で、隣のクラスの授業と合同になったことがあった。 大教室に集められた学生たちの中に、また彼女の姿を見つけた。 その時初めて知った。 彼女は同じ学年で、隣のクラスだったのだ。 だけど、彼女は私のことを覚えていなかった。 あの日、トレーをひっくり返してしまった時のことも、全く。 それが何とももどかしかった。 正直、私はこれまで異性に困ったことなんてない。 周りにはいつだって誰かがいる。 でも、彼女に対して自分が抱いている感情が一時的な興味なのか、それとも本気なのかが分からなかった。 彼女に惹かれる理由が「好奇心」なのか、「恋」なのか――それすらも曖昧だった。 その後、実習や研修で忙しくなり、彼女と会うこともなくなった。 そして、少しずつ彼女への思いも薄れていった。 それでも時々、あの時もっと勇気を出していれば――そんな後悔が胸をよぎることもあった。 だからこそ、もう一度彼女に会えた時は本当に驚いた。 ドアの向こうに立つ彼女。 あの淡々とした表情は変わらないけれど、目元にはわずかな哀しみが宿っている。 こんな偶然があるなんて。 この研修に参加して、本当に良かったと思った。 「Hello,I'm very hungry and can't stand Western food. Can I borrow some food from you?」 (こんにちは。お腹が空いて西洋料理が耐えられないの。何か食べ物を分けてもらえない?) 「俺、日本人だから日本料理が少し作れるよ。よかったら一緒に食べる?」 もちろん、彼女は私のことを覚えていない。 でも、それでいい。最初からやり直せばいいだけだ。 お盆の夜、わざと彼女を誘い、一緒に酒を飲んだ。 ただ、彼女の酒量があまりに低いのには驚いた。 たった二杯で酔いつぶれるなんて……まるでお酒を飲んだことがない人みたいだ。 彼女が夢の中でつぶやいた言葉を聞いて、さらに驚いた。 「悠真……悠真……」 その名前を聞
最終更新日 : 2024-12-02 続きを読む