父の日記。2016年3月12日また初夏が来た。あの事件さえなければ、芳子はきっと私の側にいただろうに。2016年9月27日今日も外で浅野に会った。憎い、殺してやりたい。あいつさえいなければ、芳子もこんなに長く家を離れずに済んだのに。2016年12月5日もう八年になる。この人生で芳子の結婚式を見ることができるだろうか。あの時、芳子をしっかり守れなかった私が悪い。死んでも妻に顔向けできない。......2017年7月30日芳子が帰ってきた。本当に嬉しい。だが浅野はまだ芳子に付きまとっている。なぜだ、なぜこれほどの年月が過ぎても芳子を放っておかないのか。私が芳子のために何かをすべき時が来たのかもしれない。2017年8月4日今日、家具の移動を口実に、芳子に滑車を買いに行かせた。完璧な密室殺人の方法を思いついた。2017年8月9日ようやく二人は死んだ。もう誰も芳子を傷つけることはない。だが今日来た警察官の芳子を見る目つきが変だった。まさか芳子を犯人だと?このままではいけない。自首しなければ。芳子を巻き込むわけにはいかない。私はもう年老いた。それほど長くは生きられない。......「もう、読まないで」築き上げた強がりが一瞬で崩れ落ち、私は日記を奪い取り、顔を覆って泣き崩れた。「この日記は一年以上前に書かれたもので、筆跡鑑定の結果、そして紙への染み具合も、記載された日付と一致しています」「これらの証拠は全て、お父様が犯人であることを示しています」「私にも娘がいます。だからこそ、お父様の気持ちは分かります」木村警部は溜息をつきながら言った。「しかし、私は被害者のために真実を明らかにしなければなりません」私は涙を流しながら言った。「被害者のための真実?では、私の真実は誰が明らかにしてくれるんですか?」彼は長い間、黙っていた。 「なぜ自白したんですか?」私は顔を上げた。まだ感情を抑えきれない。「父は何十年も教壇に立ち、自分の名誉を何より大切にしていました。死んでからまで殺人者の汚名を着せるわけにはいきません」声を詰まらせながら。「私はずっと悪夢の中で生きてきました。もういっそ、このまま終わりにしたかったんです」
最終更新日 : 2024-12-02 続きを読む