その日、私は悠司のクリニックを訪れ、毎月恒例の再診を受けることにした。同時に、婚約解消の意思を伝えるつもりだった。目の前に座る悠司は金縁のフレームなし眼鏡をかけ、上品で整った顔立ちが際立っていた。彼はいつも通り、淡々とした調子で私にいくつかの質問を投げかけた。私はそれに一つ一つ正直に答えた。だが不思議なことに、悠司のクリニックに来ると、漂う心地よい香りのせいか、いつも安心感に包まれる。その結果、彼の言葉には無意識に従ってしまうのだ。心理カウンセリングを終えた後、悠司は今月分の薬を準備しに部屋を出た。その時、彼のソファに置かれたスマホが「ピン」という通知音を立てた。ふと目をやると、LINEのメッセージが届いている。送り主の名前は「ルル」と書かれていた。【悠司兄ちゃん、忙しいの?】この呼び方、見たことあるぞ。攻略経験豊富な私には一目で分かった。これ、典型的なビッチだろう!疑念が募る中、私はスマホを手に取り、画面をタップしようとした。すると、また「ピン」という通知音が響いた。「悠司兄ちゃん、明日はあの女との結婚式だよね。計画の方は......」文末は見切れていたが、私を指して「あの女」と言っているのは明らかだ。それに、計画?一体何の話だ?その瞬間、心臓が高鳴るのを感じながら、私は悠司のスマホをロック解除することにした。以前、彼が「君の誕生日がパスワードだから、安心して」と話していた記憶が断片的に蘇った。誕生日を入力すると、驚いたことにあっさりとロックが解除された。悠司、お前は本当に隠し事がないのか、それとも私が携帯を見ないと思い込んでいるのか。きっと私が見ないと思っているだろう。だが残念ながら、私は以前の「真奈」ではない!画面が開くと、ルルから続けざまにメッセージが届いていた。【悠司兄ちゃん、あなたが抱きしめてくれないと、いつも悪い夢を見ちゃうの。早くあの女と別れて、私と結婚してね!】そして、その前のメッセージにはこう書かれていた。【悠司兄ちゃん、明日はあの女との結婚式だよね。計画は順調に進んでる?】私は震える手でスクロールしようとしたが、それ以前のメッセージは全て削除されていた。落ち着きを装って、私は悠司の口調を真似て彼女に返信を送った。【次の計画、忘れてないよな
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