結婚前、私は夫と「子供を作らない生活」をするって決めていた。 だけど、それが今揺らぎ始めてる。 年末が近づいた頃、夫の母親が一人で家にやってきた。 最初は何も問題なかった。家事もテキパキこなしてくれて、口うるさいけどそこまで気になる感じでもなかったし。 でも最近になって、「子供を作らないつもりだ」って知ってるはずなのに、あれこれ遠回しに言ってくるようになった。 その日、仕事帰りにスーパーでフルーツコーンを買った。 家に帰って、それを「茹でてもらおう」と渡したら、みんなで食べることに。 そのコーンは甘くて、茹でた水までほんのり甘いくらいの美味しさだった。 テーブルの向かいで、お母さんが次々と2、3本平らげる。 「これ、ほんとにおいしいね」 「じゃあ、普段から買えばいいのに」 仕事の連絡を返しながら、私は何気なくそう言った。 その瞬間、彼女の顔が険しくなった。 「どういう意味? 私がケチだって言いたいの? こんな薬漬けのコーンなんて、新鮮なものに勝てるわけないでしょ! 若い人には分からないでしょ」 矢継ぎ早の言葉に、私は完全に言葉を失った。 「いや、そういう意味じゃ――」 だけど聞く耳を持たないらしい。顔を覆うようにして泣き出した。 「子供を育ててみなきゃ、親の苦労なんて分かりっこないの! だいたい、子供を作らない人間に親の気持ちなんて分かるわけがない!」 最初のうちは少し申し訳ない気持ちもあったけど、これを聞いた時点でイラッとしてきた。 「お母さん、それとこれとは別問題でしょ。 子供を作らないのは、結婚前から決めてたことなんです」 彼女は少し間を置いた。どうやら、以前「子供を産めなんて絶対言わない」と断言していた自分の発言を思い出したらしい。 そして、私の夫に向き直る。 「ねえ、知仁(ともひと)。どうしてあんたに『知仁』って名前を付けたか分かる?」 夫は、私と彼女の間で板挟み状態。どうにもできない様子で困り果てていた。 こうして、食卓は険悪なムードのまま終わった。 その夜、私は親友の如月灯花(きさらぎ とうか)にこの話をしてみた。 画面越し、のんびりとネイルをしていた灯花だったけど、話を聞き終えると真剣な顔になる。 「南(みなみ)、気を付けた
最終更新日 : 2024-11-22 続きを読む