「もう、無駄話はやめて。パーティーまであと数日しかないんだから、さっさと仕事しよう。何をするにしても、お金を稼ぐのが一番よ」真依は羽織っていた上着をきっちりと着込み、気合を入れてデスクに向かった。紗月は仕事中毒の彼女を見て、ため息をついた。「まあね、最近は仕事が立て込んでるし。まだお客様たちにドレスを届けられていないし、届けた後も、きっと手直しが必要になる。確かに、無駄にできる時間はないわね」紗月の予想通り、パーティー当日まで、氷月は休む暇もなかった。尚吾から連絡が来ることもなく、真依も忙しくて、それどころではなかった。二人がドレスアップして、東興主催のファッションイベントが行われる邸宅の入り口に立った時、ようやく一息つくことができた。この4億円を稼ぐのは本当に大変だった。あの時、意地を張って財産分与を放棄するなんて言わなければよかったと、少し後悔した。あのクズ男からもっとお金を巻き上げておくべきだった。「ぼーっとしてどうしたの?フラッシュが眩しいわよ」紗月が、真依の脇腹をつつき、興奮気味に先を促した。そして、手に持っていた招待状を二枚彼女に渡した。「篠原さんから新しい招待状が届いたの。私たち二人の名前がちゃんと書いてあるわ。これで、堂々と入れるわね。誰にも文句は言わせない」真依は何気なく言った。「じゃあ、あなたが持っていて。これで、私たちもプライベートパーティーに参加したことがあるって言えるわね」紗月は皮肉っぽく言った。「彼は気が利くわね。あの家族そっちのけで他人を優先するクズ男より、ずっと頼りになる」東興はさすが芸能界でもトップクラスのエンターテインメント企業だ。プライベートパーティーとはいえ、今夜の邸宅はまるで人気アワードの授賞式のようだった。各業界の重鎮たちが勢揃いしていた。真依が二、三歩進んだところで、背後からどよめきが聞こえた。振り返ると、黒いスリットの入ったロングドレスを着た玲奈が、ダークグレーの高級スーツを着た尚吾に腕を絡ませ、車から降りてくるところだった。今夜の玲奈はいつもの可愛らしい雰囲気とは違い、華やかな装いだった。黒いロングヘアは片方を耳にかけ、胸元には豪華なルビーのネックレスが輝いている。記者たちが我先にと入り口に押し寄せる様子を見て、真依は皮肉な気持ちになった――結婚して3年間、彼は一度もこ
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