私の体があの簡素な手術台に置かれたとき、まだ少し温もりが残っていた。だが、誰もそれを気にしなかった。東野聡はメスを取り出し、ゆっくりと、そして細かく私の胸腔を切り開いた。「え、腎臓がひとつしか残ってないのか?」彼は少しだけ戸惑った。だが、すぐに手を止めることなく作業を続けた。その手際は滑らかで、さすがこの街で屈指の腎臓内科医とされるだけのことはあった。すぐに、血まみれの腎臓が取り出され、隣の特別な装置に置かれた。「病院に届けろ。すぐに葵に腎移植手術を手配するんだ」「この女の遺体はどうするんだ?買ったときにはすでに胴体しか残ってなかったが、なんだか妙な感じがするぞ。警察に通報したほうがいいんじゃないか?」そばにいた聡の友人、篠宮薫は手術台の上の胴体を見ながら口を開いた。聡は手に付いた血を洗い流し、その死体には目もくれなかった。口調は相変わらず気だるげだった。「念のため、処分してしまえ」
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