友作は調査報告書を弥生に手渡した。弥生が報告書を開くと、それが確かに弘次の言っていたものであり、日付も1か月前のものだと確認できた。さらに、この報告書は細かい部分まで非常に丁寧に調査されていた。報告書を読み終えた後、弥生は大きく息をついた。幸いなことに、弘次が帰国を考えているのは本当に彼自身の理由であり、自分が原因ではないと分かった。これで、彼女の心も少し落ち着いた。「ありがとう」弥生は調査報告書を友作に返した。「この報告書、持ち帰ってじっくりご覧になってもいいですが」「大丈夫よ」「わかりました。再度ご覧になりたくなりましたら、またお知らせください。すぐにお持ちしますから」穏やかに弥生を送り出した後、友作は自分の席に戻り、額の汗を手でぬぐいながら、手に持った調査報告書を見つめた。ふと、報告書を作成するよう弘次に指示された時のことを思い出した。「細かく調べて」「はい」友作はその意味を図りかねて尋ねた。「どの程度細かく調査すればよろしいでしょうか?」「できる限り」しかし、その後、報告書が完成してもずっと彼の手元に置かれ、しばらく使われることはなかった。今日になって弥生が取りに来て初めて、友作はその意図を理解した。弘次が「細かく」と言った理由は、すべて弥生のためだったのだ。しかも、彼女のためにここまでしていながら、それを悟らせるつもりもない様だった。友作は思わず感慨深く思った。「これが社長か?俺の知ってるあの冷徹な社長とは、ずいぶん違うじゃないか」とはいえ、変わらないのは彼の本性だった。思い返せば、かつての弘次の苛烈な手腕を知る友作は、想像するだけで寒気を覚えた。「霧島さんが社長に愛されるのは、果たして幸運なのか、それとも不幸なのか......」会社を立ち上げると決めた後、弥生は忙しい日々を送っていた。以前は昼休みの時間を取る余裕があったが、最近では昼休みどころか、夜の時間すら削られる日が続いていた。準備しなければならないことが山ほどあり、何度も徹夜をしてようやく初期の計画案を仕上げた。今日の昼になってようやく少し休む時間ができたため、友人の由奈と昼食を取る約束をした。弥生の顔色を見た由奈は、苦笑いしながら首を振った。「会社を始めるっていっても、そこまで自分を追
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