心臓が一瞬で痺れるように感じ、指先までその痺れが広がっていった。瑛介は耐えきれず、低く唸り声を上げ、無意識に手を胸に当てた。弥生がその苦しそうな唸り声を聞き、彼の方に目を向けると、瑛介はハンドルに寄りかかり、顔色が悪くなっているのを発見した。二人は長年の付き合いだが、瑛介は常に健康そのもので、病気になったことなどほとんどなかった。初めて彼がこんなに辛そうな顔をしているのを見て、弥生は驚いて、すぐに彼を支えた。「どうしたの?体調が悪いの?」鈍い痛みが消えるどころか、弥生が手を触れた瞬間にさらに激しくなり、心の中の虚しさも広がっていった。しかし、弥生の素朴な顔に心配の色が浮かんでいるのを見て、その虚しさは徐々に別の感情によって埋めつくされていった。瑛介は何も答えなかったが、額には冷や汗がにじみ出ており、痛みに耐えきれない様子で、弥生は慌ててスマホを探し始めた。「救急車を呼ぶわ」しかし、彼女がスマホに手を伸ばす前に、瑛介は彼女の手首を強く握りしめた。瑛介の手は火のように熱く、強い力で彼女の肌は焼き付けられるかのようだった。彼は彼女の手首をしっかりと掴んだまま、突然身を乗り出し、彼女に迫ってきた。弥生は驚いて、瑛介が体調不良で倒れかかってきたのだと思い、すぐに彼を支えようとした。ところが、瑛介は彼女の目の前まで身を寄せ、彼女の唇までほんのわずかな距離で動きを止めた。薄暗い車内で、彼の漆黒の深い瞳が弥生の目に映った。痛みで彼の呼吸は乱れていた。それでもなお、瑛介は彼女の手をしっかりと握り、自分の胸に押し当てた。まるでそれで痛みが和らぐかのように。弥生は自分の手が触れている場所を見下ろすと、そこは瑛介の心臓の真上だった。彼の心臓が激しく鼓動しているのが、手から伝わってきた。こんな瑛介を見たことがなかった。「一体どうしたの?」明らかに苦しそうな彼が、なぜ彼女にこんなにも近づいてくるのだろう。瑛介は喉を鳴らし、薄い唇をきつく結んだ。「俺のことを心配してるのか?」「当たり前でしょ?」こんな状態になっていれば、彼のことを心配するのは当然のことだ。弥生は、瑛介がこの質問をするのが妙だとは思わなかった。ただ、彼の呼吸がどんどん乱れていくのを感じた。彼女は彼が倒れてしまうのではないかと
Last Updated : 2024-10-31 Read more