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第四十一話。

Penulis: 愛月花音
last update Terakhir Diperbarui: 2025-03-15 09:51:33

「あぁ、前に企画書を見た取引社が気に入ってな。今度、計画されている遊園地の広告をぜひ松井にやってもらいたいと申し込んできた」

 なんと大型の遊園地の広告を亜季が担当としてやらせてもらえることになった。

 小さな広告をいくつか担当させてもらったことはあったが、こんな大きいのは初めてのことだ!

 いつか大きな広告を……そう思って、今まで必死にやってきたので大抜擢だった。

 亜季は嬉しくて思う。

「は、はい。頑張ります」

 こんなチャンスは二度と来ないかもしれない。

 そのためにも、ぜひ成功させて次のステップアップにしたいと思った。

 亜季は意気込み、仕事にも力が入ってくる。

 全て順調そのはずだった。あの噂を聞くまでは……。

 それは、あれから一週間後のことだった。

「亜季~大変、大変」

「どうしたの? 美奈子。そんなに慌てて?」

「いいから、ちょっと来て」

 頼まれた資料を届けに行ったはずの美奈子が慌てて戻ってきた。

 そして強引に給湯室に連れて行かれてしまう。

 給湯室まで連れて行かれると、亜季と向かい合わせにさせられる。

「いい? 落ち着いて聞いてね? 櫻井課長……海外の会社に飛ばされるらしいわよ!?」

 美奈子は興奮気味に、そう言ってきた。

「えぇっ!?」

 亜季は驚きを隠せなかった。だって、どうして櫻井課長が海外の会社に飛ばされるのだろう??

 しかしハッとする。もしかして、社内恋愛が知られたから?

 だけど、この会社は社内恋愛は禁止ではないはずだが?

「それって……私が原因なの?」

「分からないわ。私も男性社員が噂をしているところをたまたま聞いただけだから」

 亜季は頭の中が真っ白になった。

 もしその噂が本当なら櫻井課長は、上司ではなくなってしまう。

 我が社にも居なくなってしまう。そんなの……嫌だ。

 原因は、やっぱり自分あるのだろうか?

 櫻井課長は実績も高いし、他の上司からの信頼もある。大きなミスや小さなミスもしない。

 几帳面な性格の櫻井課長が失態をするとなると、自分のこと以外は考えられないだろう。

(どうしよう……私のせいだ)

 まだ自分のせいだと分かったわけではないが、責任を感じてしまう。

 櫻井課長の人生を壊してしまった。亜季の頭の中は混乱する。

「ちょっと亜季。しっかりして!? あくまでも噂で、それが真実だと決まったわけではないから」

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    (あ、照れているわ!?) 気づくと少し嬉しくなった。あぁ、やっぱり似ていると。 亜季は心の中でそう思った。雰囲気だけではない。 無愛想の中に、ちゃんと優しさが隠れているところ。笑うと何だか可愛いところまで。 心臓がトクンッと高鳴った。これは、どちらに高鳴ったのだろうか? そしてコーヒーを飲み終わると、帰ることに。 亜季は自分の代金を出すために財布を取り出そうとする。「いい……君の分も俺が払うから」「えっ……でも」「泣かせた上に、金まで払わせていたら男の面目が立たない」 青柳は、そう言うと亜季の分まで支払ってくれた。 泣いたのは自分が原因で彼のせいではない。何だか逆に、申し訳ない気持ちになっていく。 亜季は、お店を出るとお礼を言う。「あの……ご馳走様でした」「いや、こちらこそ悪かったな。じゃあ」 そのまま青柳は、立ち去ろうとする。 すると亜季は「あの……」と思わず彼に声をかけて止めてしまった。 何故、止めたのか亜季自身も分からない。気づいたら呼び止めてしまったからだ。「……何?」 青柳は振り向いてくれた。 止めた理由を何も考えていなかったため、亜季は戸惑ってしまう。 何か言わなくては、余計に気まずい。頭の中が混乱してきた。「よ、良かったらメッセージアプリのⅠDを教えて下さい」「はぁっ?」 青柳は驚いて聞き返してきた。それもそうだろう。 迷惑かけただけではなく、急にこんなことを言ってくるのだから。 亜季は、自分でも何を言い出すんだと思ってしまう。 体中が熱くなってしまう。どうも時々、大胆なことを言う癖がある。 櫻井課長の時もそうだった。焦りなのか、ただの無鉄砲なのか分からないけど。「いえ……何でもありません。今、言ったことは忘れて下さい」 亜季は、火照ってしまった顔を隠すために下を向いた。 馬鹿なことを言ってはダメ。彼は櫻井課長ではないのに。 恥ずかし過ぎて涙が出てくる。「別にいいけど」「えっ……?」 亜季は驚いて思わず頭を上げた。 今、確かにいいって言ったような気がする。聞き間違いではないのなら。 青柳を見ると、黙って亜季を見つめていた。本当に?「泣かれたあげく、落ち込まれると逆に気になってしまう。相談ぐらいなら乗ってやる」「あ、ありがとうございます」 ぶっきらぼうながらも、そう言ってく

  • 鬼課長とのお見合いで   第四十九話。

    「……ありがとうございます」 亜季は、そのハンカチを受け取ると遠慮しながらも涙を拭いた。 しかし、さすがに駅近くの商店街で涙を流しているわけにもいかず、とりあえず亜季と青柳は近くの喫茶店に入ることにした。。 お互いにコーヒーを頼み、沈黙したまま時間だけが過ぎて行く。 黙って泣き止むのを待っていてくれる青柳。彼もまた優しい人なのだろう。 亜季とは、合コンで会ったきりの関係。放って帰ってもいいはずなのに、そばに居てくれた。そのお陰なのか、少し落ち着いてきた。 店員が持ってきたコーヒーにミルクと砂糖を入れて、静かにかき混ぜる。 一口飲むとホッと気持ちが楽になった。「……落ち着いたか?」「はい。お見苦しいところをお見せして、すみませんでした」「また謝っている。 こういう時は、ありがとう……と言うものだ!」 申し訳なさそうに謝罪をすると青柳は、そう言って指摘をしてきた。 亜季は驚いて彼を見る。 彼は、黙ったまま自分のカップに口をつけていた。「えっと……ありがとうございます」 言われた通りお礼を言う。そうすると、こちらをチラッと見て静かに微笑んでくれた。「どういたしまして」と言いながら。 フッと微笑む表情まで櫻井課長に似ているからだろうか? 彼の行動に亜季はドキッと胸が高鳴り動揺する。そして気になってしまう。「あの……青柳さんって、おいくつなんですか?」 急に何を言い出したのか自分でも驚く亜季だった。でも話を続けたくて、思わず声が出てしまったようだ。。 青柳は一瞬目を丸くする。驚いたのだろう。「28だけど?」「えっ……えぇっ!?」 てっきり30代だと思っていた。意外過ぎる年齢に亜季は驚いてしまった。 しかも同い年だったとは。 落ち着いているせいか、またハッキリした顔立ちだからか。「み、見えませんね……28には」「それって、俺が老けていると言いたいのか?」「えっ? いや、そういう意味ではなくて。落ち着いているというか、その……大人っぽいていうか……」 亜季は必死にフォローするつもりが、なかなか上手くフォローができない。 むしろ必死過ぎて、自分でも何を言っているのか分からないぐらいだ。「結局は、老けていると言いたいのか?」「いや……けして、そういう意味では……すみません」 言えば、言うほど墓穴を掘ってしまう。結局

  • 鬼課長とのお見合いで   第四十八話。

    「えっと……雰囲気とか、話し方とか色々。あ、そんなことを言われても不愉快ですよね。すみません」「あんた。謝ってばかりだな」「えっ? 謝ってばかり?」 彼の言葉に驚いてしまった。そんなに謝っているのだろうか?「えっ……そうですか? すみません……あっ」 確かに本当だった。また謝っている。 申し訳ないと思っているせいかも知れないが。なんだか、余計に恥ずかしくなってきた。「……その櫻井課長って人。もしかして、あんたの好きな人か?」 何気ない青柳って人の発言にドキッとした。 返事に困っていると青柳は、「悪い。図星だったか?」と言って、謝ってきた。「いえ……好きな人ってよりも以前付き合っていた人です。残念ながら別れてしまいましたが」 亜季は寂しそうに苦笑いをする。 もう過去になってしまった人なのに、思い出して落ち込む自分が情けない。「ちょっと、そこの二人。何、葬式みたいに辛気くさい雰囲気を出しているのよ? せっかくの合コンなんだから、もう少し話して盛り上がりなさいよ!?」「……そう言われても」 美奈子に叱る亜季は困ってしまう。ガツガツしているわけでもないため、盛り上がれと言われても。 チラッと見ると青柳は気にすることもなく、お酒を飲み始めていたけど。 結局、その後も話が盛り上がる事もなく終わってしまった。 美奈子には呆れられてしまったが、どうしても次の恋愛がしたいと踏み切れなかった。意外と自分は未練が残る性格らしい。 情けないと思うけど、こればかりは、どうしようもない。 それから数日後。 何もないまま、ただ時間が過ぎて行く。窓から外を見ると、青空が広がり天気がいい。課長…元気だろうか? まだ、そう経っていないから変わらないと思うけど、会いたいと思ってしまう。。 別れを切り出したのは、自分のくせに会いたくて堪らない。 涙が溢れそうになりながらも、ただ青空を眺めていた。 夕方。仕事が終わり駅近くを歩いていた。 あの小料理屋には最近は行っていない。 行くと櫻井課長のことを思い出してしまうため遠慮していた。 亜季は一人でトボトボと歩いていると、向こうから見覚えのある人が歩いてきた。(あれ? あの人は……?) 合コンで出会った青柳って人だった。彼も亜季に気づいて立ち止まった。「あれ? あんたは……あの時の」「えっと……あの

  • 鬼課長とのお見合いで   第四十七話。

     お昼休み。喫茶店でランチを食べていたところ。 見かねた美奈子がそう言ってくる。(失恋って。美奈子……その言葉は傷つく) それに合コンって。彼女の突然の発言に驚いてしまった。 行ったこともないのに。「いくら何でも……合コンは、ちょっと」「何を言っているのよ。、もしかしたら新しい出会いだってあるかも知れないじゃない。このまま失恋に浸っているよりも全然いいわよ!」「……美奈子」 失恋に浸る。確かに、このままだといけないと思う。 自分で終わらせた以上は、もう櫻井課長のことは忘れないといけないだろう。「合コンのセッテングなら、私が他の子に頼んであげるから。行くだけ行ってみなさい」 美奈子の強くそう言われてしまった。 そして、やや強引でもあるが亜季は合コンを引き受けることに。 そこに出会いがあるとは思えない。それでも櫻井課長を忘れる、きっかけになるのならと思ったからだ。 3日後。仕事が終わると美奈子に案内されて、お洒落な居酒屋に向かった。 フレンチ料理が多く、若い世代が人気そうなお店だ。 中に入ると、既に数人の男女が集まっていた。「お待たせ~」「美奈子~遅いわよ。ほら、座って座って」 1人の女性がそう言って招き入れてくれた。席に座ると、それぞれ自己紹介とアピールを始める。 美奈子はノリノリでアピールをするが、場慣れしていない亜季は完全に浮いてしまっていたが。 周りが慣れ始めた頃。私は1人の男性に目が行く。彼も慣れていないようだ。 皆と話していることもせずに1人でちびちびと隅で、お酒を飲んでいた。(あ、何だか智和さんに似ている) 怖くて近寄り難い雰囲気で物静かなところとか。顔立ちも似ている。 この彼は眼鏡をかけているが……。 少し寂しそうに見えるのは、自分とも似ている気がする。 亜季は少し彼のことが気になって、チラチラと見ていた。 (やっぱり似ているかも……智和さんに) すると酔った美奈子が亜季に声をかけてきた。「ちょっと、亜季。誰か気になる人でも居た? あ、もしかして、あの人が気になるの?」「えっ!?」 亜季は美奈子の言葉に驚いた。 ただ櫻井課長に似ていたから、少し見ていただけだ。慌てて首を振った。「違う、違う。そんなことないわよ」「いいじゃん。よし、席替えターイム」「ちょっ……美奈子!?」 美奈子

  • 鬼課長とのお見合いで   第四十六話。

     そして私達は別れる。 別れたと言っても会社に行けば、変わらずに上司と部下の関係。普通に顔を合わせるし、必要なら会話だってする。「課長。企画書のことですが。このような感じで、どうでしょうか?」「あぁ、そこに置いておいてくれ。電話の後で見るから」「はい。お願いします」 櫻井課長は電話をしながら、そう言ってきた。 亜季は返事をするとデスクに企画書を置く。自分の席に戻った。 いつもと変わらない櫻井課長の姿だ。 しかし、その姿を見られるのは……あと少しだけ。 部長になる話は引き受けたと別の人から聞いた。これで良かったのだ! これで櫻井課長は何も障害がなく前に進める。 部長として新たなスタートが切れると言うものだ。「ねぇ、あんた本当に後悔していないの? 別れて」 仕事帰りに久しぶりに美奈子と食事をした。いつものイタリアンのお店で。 バスタを食べていると美奈子が心配そうに亜季に尋ねてきた。「……後悔していないと言ったら嘘になるわね」「だったら別れなかったら良かったのに……」「無理よ。そうでもしないと彼は、あの話を断るわ。あの人は優しいから」 今でも胸が痛む。無意識に櫻井課長のことばかり考えてしまうぐらいに。 でも櫻井課長は亜季の気持ちを優先するばかりに、自分の気持ちを犠牲にする。 それだけは、してほしくなかった。「私から見たら……亜季。あんたも十分優しいわよ?」「えっ?」「今時、自分の気持ちを優先して揉めるカップルが多い中で、あんた達は、お互いに譲り合っているじゃない。それって……お互いに優しいからで、相手を想い合っているからよね。本当……お似合いだったと思うわよ。あんた達は」 呆れつつも美奈子は、そう言って励ましてくれた。「ありがとう。本当ね。支え合えるような恋人同士になりたかったな」 だけど別れてしまった自分たちには、もう何もできない。 自宅に着くとスマホを覗き込む。メッセージの着信0件。 あれから櫻井課長とはメッセージをしなくなった。 別れたのだから当たり前だけど……寂しい。 アドレスを消す人。未だに残したり、連絡を取り合う人。亜季は、ずっと消さずに残してある。 もしかしたらメール来るかも……とか、そんなことをつい考えてしまう。 櫻井課長は生真面目で気遣う人だから遠慮して、送って来るわけがないのに。(未練

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