第2話

優香を罵った後、私はすぐにピアノ店に送金してこの件を決着させた。

このピアノは去年の4月に目をつけていたが、お金ができるたびに、ちょうど優香のために使ってしまっていた。

元々ピアノが上手だった私も、彼女のせいで長らくピアノに触れていなかった。

私がピアノの前に座るのを見て、優香の顔色がさらに悪くなった。

「直樹、誰があなたにこんな手段で私を引き付けろって教えたの？吐き気がするわ」

私は彼女を一瞥し、皮肉を十分に込めながら、ピアノで「犬にも劣る」という曲を弾いた。

優香は私のこんな冷たい顔を見たことがなかったようで、曲を聴くとすぐに反抗してきた。

「いいわ、直樹。その卑劣なやり方を続けなさい。私はそんな手には引っかからないわ！」

「悠太、行こう。ピアノのことは、私が高橋先生に相談に行くわ」

彼女は高橋先生が相変わらず彼女の言うことを聞くと勘違いしているようだ。

高橋先生は、私が雇った先生だというのに。

私は、彼女に私の優しさを知ってもらうために、コンクールの出場資格を譲っただけでなく、高橋先生も紹介してあげた。

しかし彼女はこのチャンスを悠太に与え、堂々と悠太を連れて授業に行き、さらに私を非難した。

「直樹、あなたは、私の成功があなたのおかげだとでも思っているの？あなたの思い込みで私の努力を侮辱しないで」

私はそれを聞いても怒らず、笑顔で彼女をなだめ、高橋先生に彼女への対応をどう伝えようか考えていた。

一曲弾き終わると、私は高橋先生に優香の特権を全て解除するよう通知した。

彼女の努力が、いったいどれほどの価値があるか、見てみたいものだ。

昼休みの前、二人は汗だくで私の行く手を遮った。

優香は悔しそうに言った。

「早くあのピアノを送ってきて。今回はあなたを許してあげる」

私は呆れて笑ってしまった。

高橋先生の冷たい態度を見て、彼女は妄想症になったのか？

優香の表情はますます険しくなった。

「でも、これからはこんな気持ち悪い手段を使わないで。悠太はあんなに清らかなのに、あなたのそのような手口を見すぎると気分が悪くなってしまうわ」

くそ！

私は前世では盲目だったに違いない。こんな嫌らしい人が理想のタイプだと思っていたなんて。

「優香、外のあの犬が見えるか？あいつは食べ物をもらえばしっぽを振ってお礼をするぞ。お前は犬以下だ。食べ物をもらっても冷めてると文句を言い、さらには唾を吐きかける」

優香は眉をひそめながら言った。

「直樹、これがあなたの唯一のチャンスよ」

「ふん！そんなチャンスなら、お前の親父にやればいい。お前の親父なら土下座して感謝するかもな」

優香は両手を握りしめながら言った。

「いいわ。あなたが跪いて私に頼みに来るのを待ってるわ」

私は心の中で彼女を罵った。

前世の私は本当に情けなかった。

優香が少しでも不機嫌になれば、私は跪き、許してほしいと頼み込んでいた。

だから彼女は今でも自分が私を操れると思っているのだ。

給食を取りに行った生徒たちが戻ってき始め、私の家から弁当を届けに来た家政婦の平田さんが笑顔で割り込んできた。

「これはあなたのよ」

彼女は適当に私に弁当箱を投げた。

そして二つの弁当箱を抱えて向きを変え、取り入るように言った。

「杉浦さん、これはあなたの大好きな豚角切り肉の炒めとあわびです。お嬢様、こちらは京料理です」

私の弁当箱には水で茹でた野菜と、わずかな肉しか入っていなかった。

前世では、私のために平田さんがその二人をこれほど大切にしたのだと思っていたが、死ぬ前に初めて、平田さんが悠太の実の母親であり、優香の父の愛人でもあったことを知った。

また、彼女が書斎から私の母の機密書類を盗み、優香と協力して我が家の企業を潰したのだった。

今世では、彼女にそんな機会は二度と与えない。

「平田さん、僕の料理はどうしてこんなに悪いの？」私は箸を投げつけた。

平田さんは説教するような口調で言った。

「坊ちゃま、イライラしているなら少し淡白なものを食べたほうがいいですよ。普段から贅沢しすぎて、お肌が黄色くなってしまっています。私はあなたの体調を整えようとしているのに、どうして私に八つ当たりするんですか？」

悠太は不満そうな顔をして言った。

「直樹、君がこういった下層の使用人を見下していることは分かっているけど、年長者をこんな態度で侮辱するべきじゃない」

「年長者だって？ただの使用人が先輩面するなんておこがましい。野鶏が尻尾を高く上げたからって本当に鳳凰になれると思ってるのか？」

「直樹、お前……言い過ぎだ！」

悠太は怒りで顔を真っ赤にしたが、優香はすぐに彼を守るように立ち、私を怒りの目で見つめた。

「直樹、悠太に謝りなさい」