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第2話

著者: 赤くない柿
last update 最終更新日: 2024-12-16 10:59:53
「誤解なんかじゃないわ」

義母は歯を噛みしめながらバッグから下着を取り出し、私の目の前に投げつけた。

「これはお前のだろう」

義母は怒りをあらわにして続けた。

「鈴木おばさんが息子の家で見つけたのよ。昨日、お前が息子の家に入っていくところを見たって言ってるんだ」

怒りが増すたびに義母の声は荒々しくなり、私の足を思いきり蹴りつけた。

「そんなお腹の大きい体で、よくもそんな恥ずかしいことができたものね。

息子も目が曇っていたわ、こんな不貞な女を嫁に選んで」

鈴木おばさんは私の隣人で、息子夫婦は別棟に住んでいる。

毎日息子夫婦に手作りの食事を届ける、団地でも評判の過保護な母親だった。

その下着を見て私は混乱した。確かに私の持ち物とそっくりだが、昨夜もタンスで見たはずだった。

「これは私のものではありません。私の下着はタンスにあるはずです」

私は必死に訴えた。

ベッドを支えに立ち上がろうとしたが、先ほどの蹴りで足の感覚が鈍くなっていた。

タンスを開けて探してみると、頭が真っ白になった。私の下着が見当たらない。

義母が近づいてきて、冷ややかな目で言った。

「見つかったのかい?」

顔色が青ざめた。

「おかしいです......昨夜確かにここにあったのに。誰かが持ち出したんです」

そう言いながら、昨夜の出来事が思い出された。

風呂上がりに義妹が私の部屋にいて、何か怪しい様子だった。

問いただしたが、彼女は何も認めなかった。

「もしかして、由美が......」

「この嘘つき!」

義母は再び私の髪を掴み、壁に押しつけた。

平手打ちを繰り返しながら、足で蹴りを入れた。

「よくもそんな嘘がつけるわね。

由美はまだ女子高生なのに、どうしてあんたの下着を着て男の家に行くなんてことができるの?

ただの言い逃れじゃない?」

私は打たれ続けて耐えきれず、反射的に腕を上げて義母の平手打ちを防いだ。

「お母さん、やめてください。

何か誤解があるはずです。落ち着いて話し合いましょう」

その瞬間、義母が言っていた鈴木おばさんが突然現れて、私に二発殴りかかってきた。

「昨夜、嫁が夜勤の間にあんたがうちの息子の家に出入りするのを、この目で見たのよ。

まだ知らん顔するつもりなの?

あんたが二つの家庭を台無しにしているんだ」

彼女たち二人だけでなく、周りのおばさんたちも罵声を浴びせてきた。

「ほんとうに恥知らずね。こんないい旦那さんと義母さんがいるのに」

「妊婦のくせに、恥ずかしくないの?」

「前から怪しいと思ってたわ。妊娠中なのに毎日派手に着飾って、人の旦那を誘惑してたんだ」

普段から噂話を楽しる主婦たちの言葉は、耳を覆いたくなるほど酷かった。

それらの言葉を聞くと、涙が止まらなくなった。

「違います。本当に違うんです。信じられないなら、その方を呼んで確かめましょう」

「図々しい女。まさかうちの息子まで巻き込むつもり?

嫁にバレなければいいと思ってるんでしょうね」

鈴木おばさんは歯を食いしばり、さらに平手打ちを加えた。

何度も叩かれ、頬は腫れ上がり、口の中に血の味が広がった。

その頃には、玄関の前に野次馬が集まっていた。

「何があったんだ?」

「どうやら不倫した女を懲らしめているみたいだ」

「妊婦のくせに、恥ずかしくないね」

その中から、一人のおじさんが声を上げた。

「やめてください、妊婦に手を上げるなんてあまりにもひどいです。

たとえ何かあったとしても、それは夫婦の問題でしょう」

義母は声を荒らげて怒鳴った。

「何よ?心配しているの?もしかして、あんたも彼女と寝たことがあるの?」

おじさんは顔を真っ赤にして反論した。

「彼女は息子さんの妻でしょう。そんな言い方はおかしいんじゃないですか」

「事実を言ってるだけよ。皆さん、よく覚えておきなさい。

うちの嫁の田中美咲はそういう女なの。あんたたちの旦那も、すでにに手を出されてるかもしれないわよ」

この屈辱的な仕打ちに、私は涙が止まらなかった。

でも、これが地獄の始まりに過ぎないなんて、その時はまだ知る由もなかった。

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    義母の表情の変化に、周りのおばさんたちが身を乗り出した。鈴木おばさんが鑑定書を覗き込むと、目を見開いた。「親子関係確定......あら、まさか。節子さん、確か息子の子じゃないって言ってたわよね?」その言葉に、部屋中が静まり返った。義母は眉をひそめ、震える手で鑑定書を私の目の前に突きつけた。「検DNA鑑定センターの人と示し合わせたんでしょう?私を馬鹿にして、偽造した書類で誤魔化そうとしてるんじゃないの?」床に横たわったまま、私はもう声すら出なかった。それでも最後の力を振り絞り、義母の顔面に唾を吐きかけた。義母の顔が一瞬にして憤怒に歪み、また手が振り上がった。その時、ようやく誰かが義母の腕を掴んで制した。「節子さん、もうやめて!!」そのおばさんは床に広がる血を指さした。「このまま放っておいたら大変なことになりますよ。早く病院に連れて行かないと」義母は床一面に広がる血を目にして、初めて我に返ったように顔を青ざめさせた。「大げさね......大したことじゃ......」声は強がっていたものの、おばさんたちは事態の深刻さを察したのか、次々と言い訳を並べて立ち去っていった。私もついに意識が途切れそうになる。目を閉じかけた瞬間、玄関に人影が映るのが見えた。夫が息を切らして駆け込んできた。「母さん、一体何をしているんだ!」気が付いた時には、私は病院のベッドに横たわっていた。まるで車に轢かれたかのように、体中が痛みに包まれていた。目を開けると、夫と義母が激しく言い争っているのが聞こえた。「母さん、なぜこんなことをしたんだ。家庭を壊すつもりか」義母は毅然とした態度で言い返した。「バカな息子ね。私は家庭を守ろうとしてるのよ」夫は苦悶な表情を浮かべた。「妻を殴って家庭を守るだって?子供に何かあったら、絶対に許さないからな」「その子はあなたの子じゃないのよ。この女に騙されているだけよ」夫は怒りで声を震わせた。「どうして私の子じゃないって決めつけるんだ。妊娠時期だって完璧に合ってるじゃないか」「そういう問題じゃないの、文彦。もう隠す必要はないわ。この女のせいで文彦の体は壊れてしまった。子供なんてできるはずがないのよ」夫は呆れ果てた様子で問いただした。「

  • 義母の誤解で流産した私の復讐   第3話

    義母が周りの人たちに話し終え、涙に濡れた私の顔を見つめた。群衆の中から冷ややかな声が上がった。「よくもまあ、こんな非道なことをしておいて、あんなに愛らしく泣けるもんだ。男たちがころっと騙されるのも無理はない」その言葉が義母の逆鱗に触れたのか、義母は怒りをあらわにした。「そうよ、あの顔で最初から息子を手玉に取ったのよ。息子はすっかり骨抜きにされて、体まで壊してしまった」言いながら、テーブルから果物ナイフを掴んだ。「今日こそ、この色気づいた面を叩き潰してやる」血走った目でナイフを握りしめる義母を見て、私は思わず後ずさった。ナイフを目にしたおばさんの一人が、事態の重大さに気付いたようだ。「節子さん、冷静になって。刃物を使ったら大変なことになるわよ」義母の手が一瞬止まった。その束の間の安堵も、鈴木おばさんの一言で吹き飛んだ。「やってしまいなさいよ。嫁が言うことを聞かないんだから、しつけるのは義母の役目でしょう。最近の義母は優しすぎるのよ。だから嫁たちが調子に乗る。それに、こんな尻軽女の顔を潰すのは、世のためになるわ」「その通りよ。みんなだって、自分の息子がこんな女に家庭を壊されたくないでしょう?」鈴木おばさんの言葉に、周りから賛同の声が次々と上がった。この異様な空気に本物の恐怖を感じ、私は震える手でポケットから携帯を取り出し、警察に通報しようとした。すぐ横にいた義母が素早く携帯を奪い取った。画面に「110」と表示されたのを見た義母は激怒した。「まだ警察なんか呼ぼうっていうの?もっと恥を掻きたいの?」義母が目配せすると、たちまち二人のおばさんが両脇から私の腕を掴んで動けなくした。ナイフを握り締めた義母が一歩一歩近づいてくる。光る刃先に私の全身が恐怖で震えた。「お母さん、誤解です。私は文彦を裏切るようなことは何もしていません。文彦のため、そしてお腹の赤ちゃん、孫のためにも......」子供の話を聞いた瞬間、義母の表情が一変した。「よくも孫の話ができたものね。私がどれだけこの子を待ち望んでいたと思ってるの?なのに他人の子を押し付けようなんて、許せない!」躊躇うことなく、義母はナイフで私の頬を切り裂いた。鋭い刃が肉を裂く激痛に、体が震える。温かい液体が頬を伝い、

  • 義母の誤解で流産した私の復讐   第2話

    「誤解なんかじゃないわ」義母は歯を噛みしめながらバッグから下着を取り出し、私の目の前に投げつけた。「これはお前のだろう」義母は怒りをあらわにして続けた。「鈴木おばさんが息子の家で見つけたのよ。昨日、お前が息子の家に入っていくところを見たって言ってるんだ」怒りが増すたびに義母の声は荒々しくなり、私の足を思いきり蹴りつけた。「そんなお腹の大きい体で、よくもそんな恥ずかしいことができたものね。息子も目が曇っていたわ、こんな不貞な女を嫁に選んで」鈴木おばさんは私の隣人で、息子夫婦は別棟に住んでいる。毎日息子夫婦に手作りの食事を届ける、団地でも評判の過保護な母親だった。その下着を見て私は混乱した。確かに私の持ち物とそっくりだが、昨夜もタンスで見たはずだった。「これは私のものではありません。私の下着はタンスにあるはずです」私は必死に訴えた。ベッドを支えに立ち上がろうとしたが、先ほどの蹴りで足の感覚が鈍くなっていた。タンスを開けて探してみると、頭が真っ白になった。私の下着が見当たらない。義母が近づいてきて、冷ややかな目で言った。「見つかったのかい?」顔色が青ざめた。「おかしいです......昨夜確かにここにあったのに。誰かが持ち出したんです」そう言いながら、昨夜の出来事が思い出された。風呂上がりに義妹が私の部屋にいて、何か怪しい様子だった。問いただしたが、彼女は何も認めなかった。「もしかして、由美が......」「この嘘つき!」義母は再び私の髪を掴み、壁に押しつけた。平手打ちを繰り返しながら、足で蹴りを入れた。「よくもそんな嘘がつけるわね。由美はまだ女子高生なのに、どうしてあんたの下着を着て男の家に行くなんてことができるの?ただの言い逃れじゃない?」私は打たれ続けて耐えきれず、反射的に腕を上げて義母の平手打ちを防いだ。「お母さん、やめてください。何か誤解があるはずです。落ち着いて話し合いましょう」その瞬間、義母が言っていた鈴木おばさんが突然現れて、私に二発殴りかかってきた。「昨夜、嫁が夜勤の間にあんたがうちの息子の家に出入りするのを、この目で見たのよ。まだ知らん顔するつもりなの?あんたが二つの家庭を台無しにしているんだ」彼女たち二人だけで

  • 義母の誤解で流産した私の復讐   第1話

    遠くに嫁いで十年目、私は夫の田中文彦との間に初めての子供を授かった。念願の子供だったため、二人で大切に育てていこうと誓い合った。妊娠が分かってからは、安静に過ごすため会社を退職した。夫は遠方での仕事が続き、月に二度の帰省がやっとだった。私の身の回りの世話のため、義母と義妹に同居してもらうことになった。義母はずっと私たちの子供を望んでいたはずなのに、同居が始まってからは私に冷たい目を向け続け、意地の悪い物言いばかりするようになった。妊娠六ヶ月目のある日、図らずも義母の電話を耳にして、その理由が明らかになった。義母は私のお腹の子が夫の子ではないと確信していたのだ。「うちの息子は七ヶ月前から海外出張で三ヶ月も不在だったのよ。それなのに帰国したら彼女が妊娠二ヶ月だって言い出したの。この子が息子の子であるはずがないでしょう」「近所の噂じゃ、男を頻繁に連れ込んでいるそうよ。それなのに息子は私に彼女の面倒を見ろだなんて。ふん、厚かましい女め。いつか必ず息子のために清算してやる」その会話を耳にして、私は悔しさで胸が潰れそうだった。確かに夫は海外出張に行ったけれど、その時私は会社に休暇を取って一緒に同行したのだ。家によく来ていたのは男性じゃなく、いつもボーイッシュな格好をしている親友だった。夜遅くまでの残業の後、一人で帰るのが怖くて泊まってもらっていただけなのに。私は涙を堪えながら、義母にこの二つの真実を打ち明けた。しかし、義母は頑なに首を振った。「美咲と文彦は十年も子供に恵まれなかったのに、たった一度の海外出張で妊娠できるなんて。文彦は信じ込んでいるようだけど、私には到底信じられないわ」義母の言葉に私は悔し涙が止まらなかった。潔白を証明するため、夫を呼び戻し、一緒に親子鑑定を受けに行った。今日は結果が届く日だった。鑑定センターから自宅に結果が送られてくるはずだった。朝起きると、義母の姿が見当たらなかった。朝食を済ませ、寝室で義母に電話をかけようとした時、玄関の開く音が響いた。「お母さん、おかえりなさい。今日の朝ご飯はは何がいいですか?」突然、髪の毛を強く引っ張られた。思わず悲鳴を上げ、見上げると、見上げると義母の怒りに満ちた目が私を睨んでいた。義母は私の髪を掴んだ

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