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第169話

「嵐君、いくらだって?」

日向里香は自分の耳を疑った。

「500億だよ」と伊吹嵐は淡々に言った。

一瞬にして、みんなが電撃を受けたかのように立ち上がり、腹を抱えて大笑いした。

「嵐君、お前は以前勉強しすぎてバカになったのか?500億って、500億がどれほどのものか分かってるのか」

「函館市の一年間のGDPを全部足しても、500億には届かないぞ。函館市で一番の金持ちの高藤誠に500億出させたら、一晩で破産するだろうな」

高木朔は思い切り煙を吸い込んで言った。

「嵐君、金がないのは構わないが、くだらないことを言わなくていい。そうすれば、まだお前のことを人間扱いしてやれる」

「500億円、本当によくそんな嘘がつけるなあ。ははは」

と新城礼子は笑いをこらえきれない。

「思わなかったよ。嵐君、社会の底辺で何年ももがいて、足を地に着けるどころか、下層の人間が好む大言壮語の悪い癖を身につけたなんて」

「ああ、礼子、お前がこんなアホのために、俺の求愛を何度も断ったなんて」と今村晋吾は目を細めて言った。

「あの時は若くてわからなかったんだからよ」

と新城礼子は今村晋吾の肩に頭を寄せて、妖艶に甘えた。

日向里香もしばらく呆然として、底知れぬ失望の色が目からにじんだ。

彼女は伊吹嵐が一時的に落ち込んでいるだけで、以前のあの強い意志がまだ残っていると思っていた。

まさか…社会が、実に多くの人を変えてしまったのだ。

「嵐君、ありがとう。でも私が今必要としているのは、もっと実質的なものかもしれない」

と日向里香は悲しそうに言った。

彼女は相手が大げさに話していることを知ったが、相手を傷つけるに忍びない。

「500億円で実際的じゃないか」と伊吹嵐が言った。

「500億は実際的すぎるね」と高木朔は親指を立て、嘲笑うように大声で笑った。

「本当に実際的だな、ははは。ただのカードを出して、中に500億円があるって言うんだ!大きく出て、五千億円、5兆円と言ってみろよ」

「カードの真偽を検証するいい方法を思いついたぞ」

突然、今村晋吾がひらめき、指を鳴らすと、すぐにウェイターが小走りで近づいてきた。

「この方、何が御入用でしょうか」

「ここの一番高いお酒、どのいくらかかるか」

「85年のロマネコンティです。82年のラフィットよりも名高い赤ワインで、現在
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