共有

第2話

私は本田暖子に600ccの血を輸血した。手術台から下りると、全身がふわふわとした感覚に包まれていた。

私は体を支えられながら、看護師に助けられて出口へと向かった。澤村勝雄の姿を見た瞬間、私は鼻がツーンとして、むせび泣きながら言った。「勝雄さん、私......」

だが、澤村勝雄は私を一瞥もせず、看護師のところへ真っ直ぐに向かって行った。「暖子はどうなった?」

私は拳を握りしめた。澤村勝雄の心の中での本田暖子の位置を知っていたけれど、今はどうしても無性に悔しかった。私は子供を抱えているのに、彼の本命彼女のために600ccの血を提供しても、澤村勝雄は私を無視した。

澤村勝雄が看護師に本田暖子の様子を焦りながら尋ねている姿を見つめ、私は視線を下に落とした。

私は唇を噛み締めながら看護師の言葉を聞こうとするが、その声が遠く感じた。

私の心臓が苦しく、頭がくらくらし、視界が急に暗くなって意識を失ってしまった。

目が覚めると、外はすでに暗くなっていた。私は体を支えながら病床から起き上がり、下から温かさを感じた。布団をめくると、真っ赤な血の跡を見て、恐怖に駆られて叫んでしまった。

私はスマートフォンを握りしめたが、長く迷ってから、澤村勝雄に電話をかける勇気を振り絞った。

電話の呼び出し音が響く中、心が不安でいっぱいだった。

澤村勝雄が早く電話に出てくれるよう、何度も心の中で祈った。しかし、十回以上かけても、彼は出なかった。

夜中、看護師が来て体温を測ってくれた。私は彼女に哀しげな声で尋ねた。「私の子供は......」

看護師はため息をつき、私の布団をかけ直してくれた。「妊娠しているのに、どうしてそんなに輸血しましたの。妊娠初期は流産しやすいですから、体を大切にしないと」

子供を失った......

私はやっとお腹に子供がいることを知ったばかりなのに、もういなくなってしまった。彼の父親すら彼の存在を知らないまま、彼は消えてしまった......

私は苦しみながら顔を覆い、涙が指の隙間から流れ落ちていった。

多分、この子供も自分の運命を知っていたのだろう。だからこそ、こんなにも決然と去ってしまったのだった。

彼は自分から去ったのだから、父親に強制されて去るよりは良かったのかもしれなかった。

夜中、再び澤村勝雄に電話をかけたが、彼は依然として出なかった。朝が来ると、医者が処方してくれた薬を飲み、病衣を履いて体を動かし、病室を出た。

一つ一つの病室を探し、何人かの看護師に尋ねて、ようやく本田暖子のいる病室を見つけた。私は病室の入口で、ガラス越しに中を覗いた。

澤村勝雄は優しく本田暖子に物語を語りかけていた。彼はうつむきながら、ページをめくっていた。本田暖子は酸素マスクをつけて、優しい視線で澤村勝雄を見つめていた。

本田暖子の顔色はだいぶ良くなり、元気そうに見えた。多分、身体はもう問題ないだろう。

澤村勝雄がリラックスしている様子を見て、彼も安心できたのだろうと思った。

私のことなら......

私もその場を離れようと振り返ったが、手がドアノブに当たってしまった。

澤村勝雄はその音に反応し、すぐに振り向いて私を見た。

彼の目と合うと、私は慌てて逃げようとしたが、足が動けなかった。

澤村勝雄が病室のドアを開けて、私の目の前に立った時、私は恥ずかしさと困惑で頭を下げた。どうしてさっきもっと早く離れなかったのか、心の中で自分を責めた。

今、澤村勝雄に彼と本田暖子の様子を覗いているところを見られてしまって、本当に恥ずかしい思いをした。

澤村勝雄は眉をひそめて私を見つめ、ポケットから一枚の報告書を取り出して私に投げつけた。

報告書が床に落ち、私はそれを見下ろした瞬間、心臓がドキリとした。猛然と澤村勝雄を見上げようとしたが、「私......」と説明しようとした。

「雪下凛、よくも俺を騙して、俺の子供を堕したな!」

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status