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第25話

契約書にサインをもらい、美羽は一方で契約書を持ち、もう一方でほとんど歩けない花音を支え、悠介と一緒に個室を出た。

悠介は廊下で左右を見回したが、翔太の姿が見当たらず、頭を掻きながら振り返って聞いた。「君たち、大丈夫だったか?」

「私たちは大丈夫です。先ほどは千早若様、ありがとうございました」美羽は心から感謝の気持ちを込めて言った。最後の二杯もどうにか飲み干せただろうが、確実に苦しくなるところだったので、悠介に助けられて本当にありがたかった。

悠介は初めて美羽にこんなに真剣な目で見られ、少し照れくさそうに八重歯を覗かせて笑いながら言った。「どういたしまして、ただ、僕のところで働くことをちゃんと考えてくれればそれでいいよ」

美羽は「必ず考える」と答えた。

悠介が二人を送ろうとするのを丁重に断った後、美羽は花音を支えながらその場を離れた。

悠介は、善行をして感謝されることの満足感に浸りながら、嬉しそうに自分たちの個室へと戻っていった。

翔太が座っていたのを見つけると、悠介は不満げに言った。「翔太兄さん、なんで僕を押したんだよ?」

翔太は淡々と彼を一瞥した。

悠介は笑いながら言った。「まあ、いいけどさ。真田秘書を助けたし、真田秘書から感謝されて、僕の話も真剣に考えてくれるってさ」

直樹は翔太を一瞥し、何かを理解した。

ウェイターが翔太のそばに来て、軽くお辞儀して言った。「夜月様、運転手がもう車を玄関にお待ちしています」

……

美羽と花音はお互いを支えながら西宮を出て、道路脇で予約した車を待っていた。

その時、花音はついに我慢できなくなり、わんわん泣き始めた。「ごめんね、美羽、私が迷惑かけちゃって!」

「本当に迷惑だったよ。だから、もしこの契約で手数料をもらったら、高級な食事をご馳走してね」美羽は笑いながら言った。

花音はすぐに百回も頷いて約束した。

二人ともたくさん酒を飲んで、かなり気分が悪かったため、早く家に帰って休みたかった。花音は顔を青白くしながら聞いた。「美羽、私たちが呼んだ車のナンバー、いくつだっけ?」

美羽は携帯を確認して答えた。「末尾は429だよ」

言い終わった瞬間、美羽は一瞬止まった。末尾が……429?

花音は目を輝かせ、ふらふらと進んでいきながら叫んだ。「あっ、ここだ、ここだ!」

でもシステムでは、車はまだ二キロ先
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