第8話

「さあ、ろうそくを吹いて、お嬢ちゃん」

父の目にはまだ涙が残っていたが、より愛情深い眼差しだった。

皐月に対して、父はいつも寛容だった。

同じような悪戯を何度もしているのに、一度も怒ることはなかった。

「皐月は幼い頃に実の親に捨てられて、不安なだけなんだ」

「だから、何度も何度も自分が愛されているか確かめたいのさ」

でもパパ。

私は一体何をしたというの？

彼女に中傷され、濡れ衣を着せられ、殺されてバラバラにされた私が、今でも目の前で何度も何度も確認させられている。私の両親と私を殺した犯人が——

三人で幸せな家族だということを。

私の命には価値がないからなの？

皐月はろうそくを吹き消すと、わざと落ち込んだため息をついた。「はぁ、雅が家出なんかしなければよかったのに、私たち......」

「何が家出よ」

「あの恩知らずの畜生は、罪から逃げ出しただけよ！」

母の綺麗な化粧をした顔が一瞬で歪んだ。「あの子を産んだことは、私の人生で最も吐き気がする出来事だわ」

「もし時間を戻せるなら、すぐにでも絞め殺してやるのに！」

「もう彼女の話はするな」

皐月は悩ましげな表情を浮かべた。「でも、あの人もあなたたちの娘なのに......」

「その資格なんてないわ」

父も冷ややかに鼻を鳴らしたが、目は相変わらず優しかった。「もういいよ宝物、今日は楽しい日なんだから、そんな縁起の悪い話はやめよう？」

皐月は渋々頷いた。

でも、その唇の端に一瞬浮かんだ得意げな表情が、私の魂を痛く震わせた。

でも、誰が気にかけてくれるというの？

優雅な音楽に合わせて、父は自ら男性役となり、皐月と成人式の最初のダンスを踊り始めた。

母は幸せそうな顔でビデオを撮っていた。

そんな時、突然の激しいノックが、とても場違いに響いた。

家政婦が戸口に向かう時も、不機嫌な顔をしていた。「どちら様？」

「私です！」

山田家斉が息を切らして外に立っていた。

彼は焦った表情で、すぐに父の姿を探し当てた。「所長、見てください！大家さんから預かった雅さんの身分証のコピーです！」

「家賃を払わずに連絡が取れなくなった女性、雅さんです！」

「それに、アパートには彼女の持ち物が全部残されています。これじゃ家出には見えません。何か事件に巻き込まれた可能性が！」

なんて皮肉なんでしょ