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45.2人の思いと誓い

last update Last Updated: 2025-03-24 21:05:26

「あ゛――――――――――――――――――⁈」

 と、同時に湯船の中で学の絶叫が静かにこだまする……。

 そ、そのお陰で俺は現状を視認出来た。

 夢見心地の中、そっと雫さんの唇は離れていく。

 更には再び俺の肩に自身の頭をそっと置く雫さん。

 だからか、否応が無く先程の唇の感覚が俺の脳裏に鮮明に蘇って来る! 

「あ、あの……? 雫さん?」

「えへへ、その言葉ずっと待ってたんだ……」

 雫さんは顔を真っ赤にしながら、少し照れくさそうはにかむ……。

 俺もそれにつられて顔が真っ赤になるんですが? 

「あ……」

(よく考えたら、今さっきの俺の言葉、ほとんど告白じゃねーか……!) 

「えっ、え゛っぐ……う、うっうっ……」

(ううっ、い、嫌な予感がする……)

 当然、嗚咽を漏らしていたのは学だったが……。

「ま、ま、学さん……?」

 俺はもう訳が分からず思わずさん付けをしてしまうくらい狼狽えてしまっていた。

「雫が雫が、守のファーストキスを取った―――! 俺なんか幼いころから好きだったのに、告白しようとして断られたのに―――!」

 学は俺の肩に突っ伏し、号泣しだす始末!

 その俺の肩には涙やら、鼻水やら、何やら生暖かい液体がポタポタと流れ落ちてますが?

 うん、その一滴一滴が何やら重い、いや思い?

 俺は孤児院時代の幼い頃の記憶を思い出し、友達認定して別れた頃を思い出していた……。

(あ、ああ、あれはそう言う事だったのか……! いや、だってねえ? ホラ? 昔は男みたいだったじゃん? あ、でも、今

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    Last Updated : 2025-03-30
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    Last Updated : 2025-03-31
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    Last Updated : 2025-04-01

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  • 月神守は転生の輪舞を三度舞う   59.全てはこの時のために

    「はっはっはっ! 守様、大人しく寝ていれば良いのに!」「ぬかせ、ガウス! お前に美味しいとこだけ持っていかれてたまるか! 冗談言ってないで、挟み込むぞ!」「ははっ!」 俺とガウスはスカードを挟みこむ様に左右に別れ、上手く連携し、追い込んでいく!「ぬっ! ぐうっ!」 それに対しスカードも懸命に対応しているが、正直分が悪すぎると俺は思う。 というのも俺とガウスの師弟コンビの息の合った連携、更には雫さんと学の息の合った支援、そしてファイラスが誇る各将と粒ぞろいの人材のバックアップがあるのだから……。 そしてこの猛攻に耐え切れず、スカードのアーマーアームドに細やかなヒビが増えてきているのが分った。(よしよし! 間違いなく追い込んできている証拠だ!)「守さん! 今、サイファーの解析が終わったわ! サイファーはもう体力、魔力共につきかけている! やるなら今よ!」「分かった、ありがとう雫!」(……あ、雫さんのこと初めて呼び捨てしてしまった……。そして雫さん、顔若干赤くなってんな、うん……) これは恥ずい。 が、今はスカードに集中したいところ。『てことで、手筈通り頼むぞ学!』『はいはい……』 俺と学は心の会話を終え、右手以外の全身の主導権を学に任せる。 そう、この時の為に取っておいたとっておき! それをスカードに食らわす為にね……! 刹那、そのチャンスが訪れる! スカードの鎧の隙間に雫さん達が射た弓矢が数本刺さり、奴の動きが極端に鈍くなる!「うぐうっ……!」 だからか、スカードが苦しそうに呻いている! そして、ガウスは当然そのチャンスを逃さない!「はああっ!」 ガウスはここぞとばかりに気合の入った必殺の

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     弓が飛んできた方向を瞬時に追うと、遠目に見えるは雫さんとヒューリが弓を構えるその姿。「ぐうっ!」 だからか、スカードは苦痛の呻き声を上げていた。 その痛みのせいか一瞬スカードの体が浮き、俺の腰にまわしていた手の力も緩む!(い、今がチャンス!)「お、おおおっ!」 俺達は気合を入れ、スカードの両手を勢いよく振りほどく! と同時に奴のアゴに向かって頭突きを食らわせる!「がっ!」  スカードは呻き、たまらずよろける。 続いて体勢の崩れたスカードに勢いよく体当たりをかまし、俺達はやっとのことスカードから解放される結果となった。 (はあ、はあ、あ、危なかった……。ありがとう、ノジャ……)  というのもノジャの加護が無ければ、俺達は恐らくとっくの昔に感電死していただろう。(もっとも今のスカードの電撃を食らい、加護が切れてしまったけどね……)  雫さんを見ると、あちらもその加護は切れていた。 なるほど、この効果は2人で共用しているものだったんだろう。「うっ? くっ!」 俺達は気合で立ち上がろうとするが電流のせいで体が痺れているため、よろけ情けないことにその場にへたり込んでしまう。「守様、だ、大丈夫ですか? 今、状態回復魔法をかけますので、しばらく大人しくしといてください……」 小走りで駆け付けたウィンディーニが状態異常回復魔法を俺達にかけていく。「あ、ああ……」 素直にありがとうと言いたかったけど、申し訳ないが麻痺している為か舌も回らない状態だ。「……スカード申し訳ないけどこれは決闘じゃない、国単位の戦争なのよ……」「……然り……」 雫さんとヒュ

  • 月神守は転生の輪舞を三度舞う   57.魔虎神雷

    「ク、クククク……」 スカードは怒りとも歓喜ともとれる不敵な笑みを浮かべている? その為か、スカードの肩が若干揺れている様にも見える……って⁈ よく見るとスカードが装着しているアーマーアームドを覆っていた青白い光が更に強くなり、なにやら激しい異音が響き渡っているのだが……?(な、なんだ、こ、これは……? なんだがとっても嫌な予感がするんだけど?)  俺は雫さんを見つめるが、その雫さんは静かに横に首を振っている。(雫さんの未解析の技か。なるほど、スカード達のとっておきってわけか……⁈) 「……数百年ぶりだな……。この状態になるのは……」「何ッ⁈」「……この状態になるのは、お前で2人目だということだっ守っ!」 スカードはその咆哮と同時に俺達に急接近してくる!(は、はやっ……?)  一瞬消えたかのように見える程の移動スピード! が、俺達は瞬時に迎撃体勢を取る。「……お前何処を見ている?」(なっ? 後ろ? 今確かに正面から向かってきていたはずっ! が、大丈夫だ、学がしっかり防御してくれる……)  「遅いな……?」「かはっ?」 俺は俺の左わき腹にスカードの重い拳が突き刺さりのを感じ、たまらず呻き声を上げる。(なっ? ひ、左?)  「くそっ!」 俺は捨て身の食らいうち狙いで、右手に握った剣をスカードに向かって突きを繰り出す! が、もうそこに奴はいない。(こ、これは……ざ、残像現象……?) 

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