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34.交渉の結果は如何に

last update Dernière mise à jour: 2025-03-15 21:05:28

 数十分後……。

 周囲の山は消し飛び、岩は砂に変わり、木は無くなり、そこには何も無くなっていた……。

 当然周囲に潜んでいたであろうエルフ達の姿もだ。

「ふむ、やはり奴らはそこの魔法陣で集団転送してきていたか……」

「えっ!」

 俺達は驚きながらも魔王スカードの視線を追う。

 なるほど、魔王スカードが敢えて残したと思われる魔法陣が地面には描かれていた。

「えっと、結果的に俺達を助けてくれたのかな?」

「……そうなる。まあ、こいつらがスイと連動して動き姿を消し、ここに潜み機を狙っていたのは感知していたしな……」

(あっ! ……も、もしかして魔王スカード達が目を閉じていたのって、それをこいつらに悟らせないため⁉ カッコつけていたわけでも余裕こいていたわけでも無かったのか) 

 魔王スカード計り知れない奴だ。

 俺は魔王スカード達のその洞察力に感心してしまう。

「そっか、何はともあれ助けてくれてありがとう……」

 俺達は素直に頭を軽く下げる。

 どうやらスカード達が俺達の前に立ちふさがり武器を構えたのは、俺達を庇うためでもあったみたいだしね。

「ふむ、まあ気にするな。では、肝心な交渉の話に戻らせていただくが……」

「うん」

(さて、どうなる事やら……?) 

 正直魔王スカードの心情は深すぎて俺には読めない。

 ただ、分っている事は正直に話す人間には寛容的であるし、逆に約束を破る奴や嘘を平気で言う奴には一切の容赦がない。

 早い話、義に厚い男だという事だけは理解出来た。

「まあ、交渉は成立だ。お前達なら信用出来るしな……」

「え? や、やったあ!」

 俺達は皆と嬉しさの余り、ガッ

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     弓が飛んできた方向を瞬時に追うと、遠目に見えるは雫さんとヒューリが弓を構えるその姿。「ぐうっ!」 だからか、スカードは苦痛の呻き声を上げていた。 その痛みのせいか一瞬スカードの体が浮き、俺の腰にまわしていた手の力も緩む!(い、今がチャンス!)「お、おおおっ!」 俺達は気合を入れ、スカードの両手を勢いよく振りほどく! と同時に奴のアゴに向かって頭突きを食らわせる!「がっ!」  スカードは呻き、たまらずよろける。 続いて体勢の崩れたスカードに勢いよく体当たりをかまし、俺達はやっとのことスカードから解放される結果となった。 (はあ、はあ、あ、危なかった……。ありがとう、ノジャ……)  というのもノジャの加護が無ければ、俺達は恐らくとっくの昔に感電死していただろう。(もっとも今のスカードの電撃を食らい、加護が切れてしまったけどね……)  雫さんを見ると、あちらもその加護は切れていた。 なるほど、この効果は2人で共用しているものだったんだろう。「うっ? くっ!」 俺達は気合で立ち上がろうとするが電流のせいで体が痺れているため、よろけ情けないことにその場にへたり込んでしまう。「守様、だ、大丈夫ですか? 今、状態回復魔法をかけますので、しばらく大人しくしといてください……」 小走りで駆け付けたウィンディーニが状態異常回復魔法を俺達にかけていく。「あ、ああ……」 素直にありがとうと言いたかったけど、申し訳ないが麻痺している為か舌も回らない状態だ。「……スカード申し訳ないけどこれは決闘じゃない、国単位の戦争なのよ……」「……然り……」 雫さんとヒュ

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    「ク、クククク……」 スカードは怒りとも歓喜ともとれる不敵な笑みを浮かべている? その為か、スカードの肩が若干揺れている様にも見える……って⁈ よく見るとスカードが装着しているアーマーアームドを覆っていた青白い光が更に強くなり、なにやら激しい異音が響き渡っているのだが……?(な、なんだ、こ、これは……? なんだがとっても嫌な予感がするんだけど?)  俺は雫さんを見つめるが、その雫さんは静かに横に首を振っている。(雫さんの未解析の技か。なるほど、スカード達のとっておきってわけか……⁈) 「……数百年ぶりだな……。この状態になるのは……」「何ッ⁈」「……この状態になるのは、お前で2人目だということだっ守っ!」 スカードはその咆哮と同時に俺達に急接近してくる!(は、はやっ……?)  一瞬消えたかのように見える程の移動スピード! が、俺達は瞬時に迎撃体勢を取る。「……お前何処を見ている?」(なっ? 後ろ? 今確かに正面から向かってきていたはずっ! が、大丈夫だ、学がしっかり防御してくれる……)  「遅いな……?」「かはっ?」 俺は俺の左わき腹にスカードの重い拳が突き刺さりのを感じ、たまらず呻き声を上げる。(なっ? ひ、左?)  「くそっ!」 俺は捨て身の食らいうち狙いで、右手に握った剣をスカードに向かって突きを繰り出す! が、もうそこに奴はいない。(こ、これは……ざ、残像現象……?) 

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