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第3話

Auteur: 丁度いい
両親の動機についての疑問は、すぐに解けた。

志津恵の誕生日パーティーが終わると、皆それぞれの部屋に戻っていった。

私は行く場所がなく、両親の後をついて行った。

父はソファに腰を下ろし、疲れた様子でこめかみを揉んでいた。

母はスーツケースからたくさんの薬を取り出し、父の前に並べた。

「あなた、早く入院した方がいいわ」

「さっき病院から連絡が来たわよ。由香里の適合検査の結果が出たって。彼女の型が一致したのよ」

「これで腎臓が手に入ったんだから、手術ができるわ」

父はため息をついた。

「由香里は自己中心的だから、もし彼女が腎臓を提供するのを拒んだらどうする?」

母は鼻を鳴らし、手に持っていたコップをテーブルに乱暴に置いた。

「彼女に拒む権利なんてないでしょ!腎臓ひとつくらい、一生面倒見てやれば済む話じゃない?」

「こんな性格の悪い子、あなたが病気じゃなければ、家に置きたくもないわ」

「彼女が戻ってきてから、志津恵がどれだけ苦労したか、あなたもわかってるでしょ」

私の話になると、母の不満が止まらなかった。

父の顔色もよくなかった。

「もういいだろう、あまり言うなよ。彼女も一応、俺たちの実の娘なんだから」

「志津恵の母親があんなことをしなければ、彼女が孤児院に送られることもなかったんだ」

「苦労はしていないようだけど、それでも彼女は辛い思いをしたんだ」

母は目を大きく開き、あきれたように言った。

「辛い思いって?あの時、院長が言ったことを聞かなかったの?由香里を実の娘のように扱ったのに、結局、由香里のせいで死にかけたって言ってたじゃない!」

「こんな非情で恩知らずな子、辛い目にあうのも当然よ」

「それに志津恵の母親がやったこと、志津恵に関係ないでしょ?」

父も母の言うことに一理あると思ったのか、テーブルの上の薬を飲んでから再び口を開いた。

「俺も志津恵を責めてるわけじゃないんだ」

「由香里の運が悪かったせいだ」

「お前の言う通り、彼女が腎臓を提供したら、家を買って一生面倒を見てやろう」

母はようやく満足したようだった。

「それならいいわ。私の娘は志津恵だけよ。家は遠くに買ってね。彼女と頻繫に顔を合わせたくないから。いつか私まで殺されるんじゃないかって心配だもの」

二人はしばらく雑談した後、電気を消して眠りについた。

誰も知らなかった。私はその場に立ち尽くし、30分以上も呆然としていたことを。

そういうことだったのか。

彼らが私を見つけたのは、私の腎臓が欲しかったからだった。

彼らが私を遠ざけたのは、あの孤児院の院長のデタラメを信じたからだった。

彼らは本当に、私のことを少しも愛していなかった。

私は突然、自分が滑稽に思えて、腹を抱えて笑った。

でも、笑っているうちに、涙が止まらなくなった。

何故だ。

本当に、もうすぐ愛されるだろうと信じていたのに。

すべてがただの嘘だった。

気持ちを落ち着かせてから、私は両親のベッドのそばに立ち、彼らの寝顔を見つめた。

彼らは私が幼い頃に想像した両親に似ていた。父は背が高くてかっこいいで、母は優しくて美しい。

だけど、今の私には、彼らの顔が憎らしく見えた。

彼らは私の両親ではなく、志津恵の両親だった。

彼らは私を守ることはなく、志津恵だけを守る。

そして、初めから一度も私を信じたことはなかった。

怨念が心の中で広がり、私は手を伸ばして母の細い首に触れた。

だけど、結局、手を下すことはできなかった。

あの言葉が正しい。

親にはたくさんの子供がいるかもしれないが、子供には親は一組しかいないって。

両親に愛されない時、どうすれば愛を捨てられるのか、誰も教えてくれなかった。

私は部屋の隅で身を縮め、少しでも楽になろうとした。

父の携帯の着信音が、夜の静けさを破った。

彼は半分眠ったまま電話に出た。

私は電話越しに声を聞いた――

「もしもし、夢野さんですか?ご自宅でガス漏れによる爆発が発生し、現場で女性の遺体を発見しました。今、お戻りいただいて捜査にご協力いただけますか?」
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