第3話

実は、私が幼い頃から厳しく教育されてきたのには理由がある。

その最大の理由は、生まれつきの怪力と自分ではどうしようもない暴力的な衝動だ。

五歳のとき、近所の叔父が私にいやらしいことをしようとしたが、その下半身を叩き潰してしまった。

その一件で、病院で私の両親は背筋が凍るような光景を目の当たりにした。

それ以来、両親の私を見る目には、どこか恐怖が混ざるようになった。特に父は、私をまるで怪物扱いしていた。背後で母を罵る声を、私は何度も耳にしてきた。

「お前の腹からなんて化け物が生まれたんだ！力が強すぎて怖い！こんなのがバレたら、俺の名誉が台無しだ！」

母が私を嫌っていることも、父が私を忌み嫌っていることも分かっていた。だから私はずっと大人しく言うことを聞いてきた。

彼らが何を言おうと、何をさせようと、たとえそれが嫌なことでも、少しでも愛をもらえるなら私は喜んで従った。

実際、言うことを聞いている限り、確かに多少なりとも愛情を受け取ることができた。それが弟の十分の一でしかなかったとしても。

だから、義父がこの家は武力で支配すると言ったとき、私の心の中では大きな花火が上がったかのようだ。

長年封じ込めていた「自由」への望みが義父の言葉によって一気に解き放たれた。義父が義母を叩きのめしている姿にすら、注意を向ける余裕がなかったほどだ。

おそらく、私はその場であまりにも長く呆然としていたのだろう。彼らは、私が恐怖で怯えていると勘違いした。

義父は最後の一発を打ち終え、得意げな顔で朝食を取り始めた。

そして、私はその三十分後、夫の周防敬と旅に出た。

出発の際、周防敬は私に説教を始めた。

「君、これからは父さんが話してるときは口を挟むな。年長者のやることにはそれなりの理由があるんだから、黙って聞いてりゃいいんだ」

彼は延々と周防家の「男尊女卑」の掟を私に吹き込もうとしていた。

「ねえ、あなた。お義父さんが言ってたじゃない、うちの家は力で支配するって」

私は彼の言葉を遮った。

「つまり、拳が強い方の言うことを聞くってことよね。もしお義母さんが抵抗できたら、全部お義母さんの言う通りになるんじゃない？」

その言葉に、周防敬は一瞬驚いたように固まったが、すぐに鼻で笑い、私を見下すような目つきを向けてきた。

「ああ、そうだよ。君の言う通りだ。でもな、男と女はそもそも違うんだよ。だから君も言うことを聞け、わかったか？聞かないなら、僕もお父さんみたいにお前を教育するぞ」

私はそれ以上何も言わなかった。ただ心の中で抑えきれない興奮が渦巻いていた。長年感情を抑えてきた癖がなければ、笑い出していたかもしれない。

周防敬は「聞かないなら」私を義父のように叩きのめすと宣言した。

それが現実になれば、私は長い間封じ込めていた悪魔を解放する理由ができるのだ。

この旅の間中、私は敢えて「聞き分けのいい妻」の仮面を捨て、彼の話にそっけない態度を取り続ける。その光景、みたいだね。

これはこれまで受けてきた親の教育に反する最も大胆な行為であり、少し不安もあった。

だが、夫と力で一度決着をつけられるという期待が、その罪悪感を吹き飛ばしてくれた。

初めは彼も穏やかに話しかけていたが、次第に苛立ちを隠せなくなり、ついには険しい顔を見せ始めた。

飛行機を降りてホテルに着いた頃には、彼の我慢は完全に切れていた。

「これが君の予約したホテルか？何だこのボロい宿は！駐車係もいないのか！？」

「いるわよ。ただ他の車を止めに行ってただけ」

「この部屋を見ろよ、海が見えもしないじゃないか！今すぐ退室して他のホテルを探せ！」

「観光シーズンなんだから、このホテルが取れただけでもありがたいと思わなきゃ」

周防敬は、前日まで甘い態度を取っていた私が新婚二日目にして態度を急変させた理由を理解できないまま、眉をひそめて怒りの目を向けてきた。

私はゆっくりと荷物をまとめながら、彼をさらに煽るような言葉を投げかけた。

「ねえ、あなた。要求が高すぎるんじゃない？これはホテルの問題じゃなくて、あなた自身の問題でしょ。

もしホテルを変えたいなら、自分で予約すればいいでしょ？何でもかんでも私に任せないでよね。私はあなたの妻であって、家政婦じゃないのよ。それに、あなたは男らしい立派な夫でしょ？」

彼はついに怒り、拳を握りしめた。

荷物を片付けるふりをしながら、私はずっと彼の様子を伺っていた。

彼がそれまでの温和な仮面を引き裂き、怒りで顔を歪めてこちらに迫ってくるのを目の端で捉えた。

「柔！貴様を今日、僕が教育しなきゃならないとはな！」