第1話

娘と私が交通事故に遭い、別々の病院に運ばれた。担当医が到着しないため、手術はなかなか始まらなかった。

どうしたことか、衝撃で気を失った後、まるで魂が抜け出してしまったかのような感覚があった。私の体はベッドの上に横たわっていたが、魂は娘の側でただ焦りを感じていた。

私はどうして落ち着くことができなかった。救急のナースも急いでいる様子だった。

「花澤先生、どうしてまだ来ないの？この子はかなり危険な状態です！」

傍らの人々は困った様子で言った。「催促に行ったんだけど、花澤先生がもう少しおくれて来るって。あの子は公園でわがままを言っていて、くじ引きに参加したいって騒いで、一等賞が取れるまで戻らないって言ってるんだ」

「花澤涼介ったら、何考えてるの？この子はもう限界みたいなのに！」

花澤涼介？

聞き慣れた名前に気づき、娘が交通事故に遭って運ばれたのが、夫が勤める病院であることを思い出した。

彼はこの街で最高の小児科医だ。彼がいれば、娘はきっと助かるはずだ！

隣に立っていた若いナースは足を踏みならし、唇を噛みしめてから、走り出した。

「公園は病院の近くだから、私が直接行ってくる」

私はそこでようやく気づいた。病院からの電話などではなく、彼は秋月莉子とその息子と一緒にいることを選んだのだ。

しかし、走り出すナースを見て、私は娘の側を離れられず、心の中で涼介が早く戻るように祈った。

公園では、

「おめでとうございます、坊ちゃん、また二等賞ですね」

「なんでまた二等賞なの、いやだ、いやだ、一等賞がほしい！」

公園に来たばかりで、看護師さんは涼介と彼の初恋の人が一緒に立っているのを見た。彼の初恋の人の息子である隼人は、くじ引きで一等賞がもらえなかったことで不満をもらしていて、その子をなだめているところだった。

今日、娘の誕生日で、食事の前に、夫は病院からの電話で家を出た。

娘はこっそり家を出て、病院に呼ばれた父を探しに行った。

私は道路脇で彼女を見つけたとき、一台の車が彼女に向かって猛スピードで迫っていた。

私は全力で駆け寄り、押しのけようとしたが、間に合わなかった。

小さな影が車に弾き飛ばされるのをただ見ているだけだった。

娘の顔は重傷を負い、朝作ったツインテールは乱れ、血と混ざっていた。

彼女のうさぎのワンピースは血と泥で汚れ、手術台に横たわる小さな姿を思うと、私の胸は引き裂かれるように感じられた。

なぜ？

なぜ娘を守れなかったのか？

一瞬にして、大きな罪悪感と後悔が私を飲み込んだ。

しかし、担当医が夫であること考えると、私の緊張がほぐれた。

良かった、彼がいてくれて。

私は一日中手術室のドアの前で待っていた。ようやく娘が重篤な状態でICUに移された。

彼女の頭には真っ白な包帯が巻かれており、私の心は鋭い痛みに貫かれた。

自分の命を差し出してでも彼女が元気になればと思う。

涼介は娘の検査結果を見ながら、ナースに尋ねた。

「患者の家族はまだ見つからないのか？」

ナースは首を振って答えた。

この子は衝突後、加害者は逃走し、通りすがりの人が警察に通報した。子供はパジャマ姿で、身元を証明するものは何一つ持っていなかった。

警察は行方不明者の情報を発表しているが、まだ誰も連絡をしていない。

夫は眉をひそめた。「自分の子供が行方不明になって気づかないなんて、親としてはどうかと思う？」

私はその言葉を聞いて、自分への罪悪感がさらに深くなった。