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第96話

「さらに、和泉夕子と桐生志越は幼なじみで、成人後には恋人同士になったようです」

「しかし、5年前、桐生志越が事故に遭い、当時卒業したばかりの和泉夕子はお金がなく、彼を救うために身を売るしかなかったのです」

「彼を救うことはできたものの、桐生志越は記憶を失い、和泉夕子のことを覚えておらず、その後二人は疎遠になったようです」

相川涼介が調べたのは、あくまで概要に過ぎず、細部はそれほど詳しくない。彼らがその後、疎遠になった理由も、よくわからないため、これ以上の説明は控えた。

霜村冷司は、手元の資料をめくりながら、その精悍な顔立ちが徐々に冷え切っていくのを感じた。桐生志越が望月景真であると気づいた時点で、彼女が身を売ったのは彼を救うためだと察していたが、それを目の当たりにし、耳にすることで一層、心がざわつき不快感が募る。

自分が求めているのは、心身ともに純粋な相手だ。だが、彼女の心は他の男に囚われ、彼女の体ですら清潔かどうか疑わしい。

「彼女を俺の部屋に送る前に、検査はしていたか?」

霜村の問いに相川は一瞬驚いたが、すぐに首を振った。

「あのとき、和泉夕子を買い取った後、公邸に送りました。清潔にするようにとの指示だけで、検査の指示は……」

あの夜、社長は夜の街を歩いていた際、雨に濡れてみすぼらしい姿で跪いていた和泉夕子に一目惚れした。急いで彼女を自分のものにしたいと望み、検査など気にも留めず、すぐに彼女を部屋に連れ込んだのだ。

誰が予想できただろう、彼女が初恋の相手を持っているなんて。

だが、まさか自分の社長が相手が初めてかどうかを気づかないはずがあるまい。そんな思いが相川の脳裏に浮かんだが、その瞬間、霜村冷司の鋭い視線が彼を冷たく睨みつけ、全身に寒気が走った。

「し、霜村社長……まさか、和泉夕子が手術を受けたのではと疑っておられるのですか?」

もし、彼女が初めてでなかったら、霜村冷司は絶対に彼女を手に入れることはなかっただろう。今まで何年も彼女を囲うことなどあり得ない。

霜村がその事実を疑っているのなら、彼女が過去に手術を受けたのかどうかが焦点となる。

相川はこの状況をすぐに理解し、急いで時系列を照合した資料を取り出し、彼に示した。

「霜村社長、桐生志越が事故に遭い、和泉夕子が身を売ったのは同じ夜に起こった出来事です。彼女は桐生志越を病院に
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