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第4話

著者: 杏田優
last update 最終更新日: 2024-12-25 11:16:34
その瞬間、私の中で過去の記憶がよみがえる。

目元に浮かんだ彼女の涙が、前世のような懐かしさと共に私の記憶を引き起こした。

前世で、私はその「弱さ」を見せられて、心から彼女と誠司のために色々と策を練っていた。

私は白川家の一人娘で、誠司でなければならない理由などなかった。

水無月綾香の登場で胸は痛んだが、それでも私は冷静さを失うことなく、自分を保った。

婚約解消を決めた誠司に対し、私は騒ぎ立てることなく、友情に免じて真摯に提案をした。

「水無月さんはA市ではまだ土地勘もなく、声も出ない状態よね。彼女が誠司の命を助けた恩人であるにしても、桐島家の若奥様になるには、いくら誠司が全取締役に働きかけても、桐島会長はきっと認めないと思う。むしろ、彼女自身に余計なトラブルを招きかねないわ。

だから、彼女をインターンとして会社に迎え入れるのはどう?」

そう提案した私は、少し意味深な口調で続けた。

「その後のことは、あなたが決めることだと思う」

結果として水無月綾香はその場を切り抜けたが、私自身は困難な立場に立たされた。
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