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第8話

「色仕掛けね。確かに、色仕掛けはあるわ。でもそれは私じゃない」

話しながら、私たちは701号室の前に到着した。

私はスタッフに軽く頷くと、彼女はカードキーを取り出し、ピッという音とともにドアが開いた。

「誰かいるの?」

部屋の中は一瞬静まり返り、しばらくしてから安藤美月の声が聞こえてきた。

望月悠介はその場で呆然とした。

「美月?お前、なんでここにいるんだ?」

彼は大股で部屋に入ろうとしたが、安藤美月はバスタオルで体を隠し、恥ずかしそうに彼を止めた。

「ちょっと、何してるの?今シャワー浴びてたのよ」

望月悠介は部屋の中を一瞥しながら尋ねた。

「どうしてこんなところで部屋を取っているんだ?」

私はドア枠にもたれかかりながら言った。

「望月悠介、この状況、まだ説明が必要かしら?」

安藤美月は私を鋭く睨みつけ、ドアを閉めようとした。

「今日はホテルで会議があったの。会議が終わって、ちょっと休んでただけよ……もう少し待ってて、服を着るから」

私は素早く彼女の動きを阻止し、スマホを取り出した。

「まあ、言葉だけじゃ証拠にならないわね。これを見たらどうかしら」

スマホで再生したのは、以前病院で手に入れた監視カメラの映像だった。

今回は背景が田中院長先生のオフィスだった。

「君は本当に優秀だな。この主任のポストは君が取るべきだよ」

安藤美月は服が乱れた状態で田中院長先生の胸に寄りかかり、指で胸元に円を描いていた。

「もう、あなたも元気すぎるわね、年を取ってもなお精力的で」

田中院長先生はいやらしい目つきで安藤美月の顔を撫でながら、

「君も随分頑張ってるよ。望月悠介と一緒にいるのも、もう何年になる? まあ、俺のような年寄りに興味がないなんて言わないよな?」

安藤美月は恥ずかしそうに肩を叩きながら言った。

「何言ってるのよ。あなたが離婚しないんだから、私も自分なりに考えなきゃならないでしょ」

「それに、望月悠介なんて貧乏人で、一緒にいても苦労ばかり。こんなホテルだって、まともな部屋を取ることすらしないんだから!」

その後の会話は耳を塞ぎたくなるような内容だった。私は全身を震わせる望月悠介を見ながら、スマホの再生を止めた。

「望月悠介、お前はまるで獣だ。でも、お前よりもっと冷酷な奴がいるとは思わなかったわ!」

「このショー、楽し
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