第7話

その「云子ちゃん」という少女は、櫻とほぼ同じ年齢で、望月悠介の車の後部座席に座り、溶けかけたアイスクリームを手にしていた。

安藤美月は助手席に座り、わざと怒ったふりをして望月悠介の胸を軽く叩いた。それを見て、云子ちゃんは大笑いし、アイスクリームがシートにポタポタと垂れていた。

しかし、望月悠介は怒ることなく、三人ともさらに楽しそうに笑っていた。

望月悠介はいつも清潔好きで、私や娘が彼の車で食べることは許されなかった。

ある日、渋滞中に娘が長い時間空腹を感じていたため、私はこっそり彼女にチョコレートを与えた。チョコのかけらがシートに少し落ちただけで、望月悠介はその場で激怒し、私と娘を車から降ろした。

私は櫻を抱きしめながら、渋滞する車の中で進退窮まっていた。望月悠介は車を運転して立ち去り、櫻は泣きながら懇願した。

「お父さん！ママと私を置いていかないで！全部私のせいだよ！私、いい子になるから、もう絶対にパパの車を汚さない！」

そのことを思い出すと、私は苦笑し、目を閉じた。そして、涙が溢れ出てきた。

私は彼との深い愛情を信じていたが、その信念こそが彼に娘を殺す機会を与えたのだ。

再び目を開けたとき、私の目は決意に満ちていた。

「心配しないで、兄さん。まだ終わっていない。彼らには相応の代償を支払わせるわ」

私はICUの外で3日3晩見守り続け、ついに櫻の症状が改善し、普通病棟に転院できるという知らせを受けた。

この瞬間、ようやく私は安堵し、娘の小さな顔に少し生気が戻ってきたのを見て、そっと彼女のおでこにキスをした。

「兄さん、櫻のことは、しばらくの間あなたたちに任せるね。私は一度家に戻って、荷物を片付けてくる」

兄は少し心配そうに言った。「何人か連れて行こうか？」

私は首を振った。

「大丈夫、兄さん。私はもう迷わない」

「ただ、いくつか手伝ってほしいことがある。それを準備しておいてね」

数時間後、私は家に戻り、まず最初に離婚協議書をテーブルの上に放り投げた。

望月悠介と彼の母親はまだ家にいなかったので、私はスーツケースを手に取り、私と櫻の荷物を詰め始めた。

衣類はあまり多くなかった。望月悠介と一緒に過ごしたこれらの年々、私たちはいつも質素な生活をしていたからだ。

ただ、櫻が作った手作りの品々だけは、丁寧に梱包してスーツケースに詰めた