第3話

心の中では雲翔を恨んでいたが、理性は彼に私を助ける義務はないと言っていた。彼を責めるべきではないと分かっていた。

しかし、抑えられなかった。彼は私の彼氏だ。結婚の約束までしたんだ。せめて数秒間でも、一言だけでも聞いてくれればよかったのに。忙しいと言って電話を切るだけじゃなかったら。

あるいは、その夜に私が帰ってこないことに気づいて、電話をかけてくれれば良かったのに。

普段なら絶対に徹夜で帰らない私なのに。

彼も私がどこに行ったか知っているはずだ。私はちゃんと伝えたんだ。本当に伝えたんだ。

床一面に散らばった絵の紙が、私の愚かさを嘲笑っているようだった。私の執着がまるで笑いもののように感じられた。

子供の頃から絵を学んできたが、誰も応援してくれず、一人で進んできた。今では少し名前が知られるようになった。

しかし、運命は私に冗談を言って、これまでの成功や幸せは一時的なもので、取り戻す時間だと教えてきた。

私は画具を全部ゴミ箱に捨て、絵を袋に入れて、明日ゴミに出すつもりで準備した。

深夜、友人からメッセージが来た。雲翔が晩餐会で私たちの結婚を発表したそうだ。

彼はまだ私の状況を知らないのだろう。

絵が描けなくなった人がどうしてコンペに参加できるのか？

彼は晩餐会で自分の成功を祝い、ついでに結婚の発表をしたが、花嫁の名前は明らかにしなかった。みんな祝福し、彼の隣にいる月野千佳に微妙な視線を集めた。いいカップル、よく似合っていると。

私は狭いアパートの床に寝転がり、周りには破れた絵と荒唐無稽な紙が散乱していた。

翌日、ニュースサイトには彼らの名前と動画が掲載された。

ピアノの天才雪村雲翔が、師匠の娘である月野千佳との結婚を発表。

祝福の声で溢れていた。

午後、雲翔がやってきた。おそらくここへ初めて来たのだろう。

私も話をつけるつもりだった。

私はドアを開けた。彼は空っぽの部屋を見て驚いた。「お前の絵はどうしたんだ？」

「描けなくなったんだ」

「何言ってんだ？何があったんだ？なぜ僕の連絡先をブロックしたんだ？」

雲翔は不満そうに私を見つめ、まるで反抗する子供を叱るように言った。「夏希、もうやめろ。1ヶ月後に結婚式なんだぞ。

この間、お前のこと無視してしまったのは認める。だけど、お前もそんなに子供じゃあるまい。きちんと身支度して家に帰