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第159話

葵は電話を切ると、再び携帯を手に取り、ここの住所を昇に送信した。

別荘の中で、唯は少し離れたところから隠しカメラを取り出した。

「紗枝ちゃんはやっぱり賢い。彼女が公開謝罪しないことを見越して、謝罪の映像を撮らせるなんて」

彼女はそう言うと、携帯でさっき録画した映像を再生した。

そこには、葵が謝罪して盗作を認める場面と、自分を買収しようとした場面が完璧に記録されていた。

「彼女のことをよく知ってるの。表面上は屈辱を耐えているように見えるけど、それはすべて利益のためで、本当に窮地に追い込まれない限り、公開謝罪なんてしないから」

「今すぐこの映像をネットに公開するわ」

唯は興奮気味に言った。

紗枝は彼女を制止した。

「まだだ。今はその時じゃないの」

今、葵は勢いに乗っていた。たとえこの映像を公開しても、彼女の名誉が傷つく程度で終わるかもしれない。下手をすると、唯が逆に報復を受ける可能性だってある。

「わかった、紗枝ちゃんの言う通りにするわ」

唯は彼女が何を心配しているのか理解していた。

紗枝は彼女と今後の対応について話そうとしたその時、電話が鳴り響いた。

携帯を取り出してみると、辰夫からの着信だった。

電話の向こうから彼の低い声が聞こえた。

「紗枝、今飛行機に乗るところだ。今夜11時に桃洲に到着する」

「わかった」

夜11時か…

紗枝は彼を迎えに行けるかどうかわからなかった。

一方で、辰夫は携帯を握りしめ、青空を見上げていた。

「明日は君の誕生日だろ?」

紗枝は驚いた。

自分の誕生日をほとんど忘れていたのだ。

紗枝が生まれた日が、母の美希にとって災難の日であり、桃洲に戻ってからは両親と一緒に暮らしていたため、一度も誕生日を祝ったことがなかった。

その後、啓司と結婚してからは、毎年の誕生日を一人で過ごしていた。

そのため、いつの間にか誕生日を祝うこともなくなっていた。

「うん」

「今夜は一緒に過ごそう」

辰夫は言った。

紗枝は少し考えた後。

「うん、夜は迎えに行くよ。今日は友達の家に泊まってる」

辰夫はそれを聞いて、「友達の邪魔にならないかな?」と心配そうに聞いた。

紗枝は隣で聞き耳を立てている唯を見て、彼女が首を大きく振るのを見た。

「邪魔じゃないって、来ていいよ」

「それなら良かった。じゃあ、ま
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