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第562話

進はようやく峻介の考えを理解した。最初から峻介は本気で優子を試練に送り出すつもりではなく、彼女に薬を注射する機会を探していただけだった。

しかし、進はその方法に疑問を抱いていた。

「でも、佐藤総裁、奥様がどれだけ過去に傷を負ってきたとしても、彼女には忘れるかどうかを決める権利があります。彼女の意思を無視してこっそり薬を注射して、もし彼女が記憶を取り戻したら、あなたを恨むことはないでしょうか……」

「そのことを考えなかったと思うか?優子がどれだけ辛い道を歩んできたか、彼女の頭の中は復讐しかなくなってしまった。彼女は異常に敏感になり、夜もろくに眠れない。少しの物音にも敏感で、眠れたとしても悪夢ばかりだ。そして、僕たちの間には深い溝ができてしまった。僕にはもう他に方法がないんだ」

峻介は自分の結婚指輪を掲げた。銀色のシンプルな指輪が太陽の光を浴びて冷たく輝いた。

「ようやく打開策を見つけたんだ。優子にM・1を注射させれば、過去のすべての苦しい記憶、そして僕が彼女に与えた傷も忘れるだろう」

彼の顔には狂気を帯びた喜びの表情が浮かんでいた。「彼女はまた、僕だけを見つめるあの純粋な少女になるんだ。僕たちの結婚は完璧で、誰にも壊されることはない」

進は口を開けたが、何も言えなかった。何を言っても無駄だと感じたからだ。

ただ、峻介の望む通りになることを祈るばかりだった。

優子についていった男は屈強で、日に焼けた黒い顔をしていた。

「優子さん、あなたがここに来た理由は分かっています。全力であなたを守ります。僕のことは遥斗と呼んでください」

優子は軽く頷いた。「ありがとう」

「ここは赤道に近い熱帯気候で、湿気が高く、雷雨が多い地域です。

つまり、ここには豊富な資源があるが、毒を持つ生物も多い。

昆虫から植物、動物まで、あらゆるものが危険です」

優子は事前に大量の資料を調べており、峻介から地図も入手していた。彼女はすでに万端の準備をしていた。

「私はあらゆる動植物について研究しています。心配しないでください」

「分かりました。しばらくしたらあなたを監獄に入れます。死刑囚のふりをしていればいいんです。一か月間の訓練を終えた後、島に放り込まれてサバイバルを始めます」

訓練とは、実際には彼女たちが仲間を見つけてチームを組むための時間だった。

最初に教官は、
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