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血の真実-2

مؤلف: よつば 綴
last update آخر تحديث: 2025-03-26 06:00:00

 甘い血を求めるのは吸血鬼の本能。ローズが言う恋の成分を含んだもの、それを探知する為の能力らしい。

 けれど、ほんのりと甘く絶品なのは片想いの間だけ。両想いになると、喉が焼けるほど甘く感じるようになる。曰く、恋い慕う人間の愛を手に入れる代償なのだと言う。

 それはおそらく、人間と吸血鬼が交わる禁忌への戒めでもあるのだろう。混血は禍いをもたらすという、古代人の意味不明な迷信に過ぎないが。現に、ノウェルは特段禍いの種になどなっていないのだから。

 だが、より甘くなるなら代償とは言わないのではないだろうか。吸血鬼の感性はよく分からん。

「なぁ、なんでもっと甘くなるのがいけないんだ? 吸血鬼って甘いの苦手なのか?」

「いえ、本当に喉が焼けるんですよ」

「はぁ!? いや、待て。ローズの喉は焼けてないぞ。そんな話、一度も····」

 俺が取り乱すと、ヴァニルは不機嫌そうに顔を歪めた。

「チッ··ローズって誰ですか? その方の事は知りませんが、きっと喉は焼け爛れている筈ですよ」

「そんな事····」

 愕然とした俺を見て、歪めていた表情を戻したヴァニル。今度はとても穏やかな表情で、そして、慈しむような声で囁くように言葉を置く。

「それでも飲み続けるという事は、よほど番を愛しているのでしょうね」

「番って····。つぅか、喉が爛れて飲めるものなのか?」

 半信半疑な俺を見て、ヴァニルはフンッと鼻を鳴らした。

「まぁ、吸血鬼ですし回復はお手の物ですから」

「なるほどな」

 納得している俺に、ヴァニルは注釈を添えるように言う。

「····ただ、尋常ではない痛みに耐えている筈ですけどね。何度も自ら焼く覚悟、それはもう至極の愛ですよ」

 うっとりとした表情を浮かべ、胸の前で指を絡めて語るヴァニル。

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     甘い血を求めるのは吸血鬼の本能。ローズが言う恋の成分を含んだもの、それを探知する為の能力らしい。 けれど、ほんのりと甘く絶品なのは片想いの間だけ。両想いになると、喉が焼けるほど甘く感じるようになる。曰く、恋い慕う人間の愛を手に入れる代償なのだと言う。 それはおそらく、人間と吸血鬼が交わる禁忌への戒めでもあるのだろう。混血は禍いをもたらすという、古代人の意味不明な迷信に過ぎないが。現に、ノウェルは特段禍いの種になどなっていないのだから。 だが、より甘くなるなら代償とは言わないのではないだろうか。吸血鬼の感性はよく分からん。「なぁ、なんでもっと甘くなるのがいけないんだ? 吸血鬼って甘いの苦手なのか?」「いえ、本当に喉が焼けるんですよ」「はぁ!? いや、待て。ローズの喉は焼けてないぞ。そんな話、一度も····」 俺が取り乱すと、ヴァニルは不機嫌そうに顔を歪めた。「チッ··ローズって誰ですか? その方の事は知りませんが、きっと喉は焼け爛れている筈ですよ」「そんな事····」 愕然とした俺を見て、歪めていた表情を戻したヴァニル。今度はとても穏やかな表情で、そして、慈しむような声で囁くように言葉を置く。「それでも飲み続けるという事は、よほど番を愛しているのでしょうね」「番って····。つぅか、喉が爛れて飲めるものなのか?」 半信半疑な俺を見て、ヴァニルはフンッと鼻を鳴らした。「まぁ、吸血鬼ですし回復はお手の物ですから」「なるほどな」 納得している俺に、ヴァニルは注釈を添えるように言う。「····ただ、尋常ではない痛みに耐えている筈ですけどね。何度も自ら焼く覚悟、それはもう至極の愛ですよ」 うっとりとした表情を浮かべ、胸の前で指を絡めて語るヴァニル。

  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   血の真実-1

    ──コンコンッ 静かなノックの音に驚く。俺は、ノーヴァにつられて扉の方を見た。「やめておきなさい、ノーヴァ」 いつの間に来たのか、開け放たれた扉へ寄り掛かったヴァニルがノーヴァを制止した。 卒業の機会《チャンス》と覚悟を奪いやがって、と言いたいが、声を荒らげるような雰囲気ではない。ヴァニルの深刻そうな様子に、心臓がドクンと嫌な跳ね方をする。「ヴァニル····どういうつもり? 何邪魔してくれてんの」 ノーヴァが睨みをきかせて言った。けれど、その鋭い視線にも怯む事なく、ヴァニルは意味のわからない事を言い出す。「今のまま彼と交われば、確実に血の味が変わりますよ」「······何それ。そんなわけないでしょ」「まったく、貴方は未だ自覚がないんですか?」 やれやれと溜め息を吐くヴァニル。ムッと頬を膨らませているノーヴァと交互に見て、俺はイラつきをぶつける。「お前ら、さっきから何の話してるんだよ。俺にはさっぱりなんだが」「お前は知らなくていいよ」「え····俺、当事者じゃないの?」「ははっ、しっかり当事者ですよ。それはもうガッツリと」「だよなぁ。そうだよなぁ。で、俺は知らなくていいと?」 ノーヴァは苛立ちながら、何故かまたモジモジし始めた。頬を赤らめて、どういう感情なんだよって表情《かお》をしている。 ヴァニルは、ノーヴァを揶揄うように薄ら笑み、呆れた目を俺たちに向ける。「ヌェーヴェル、貴方は我々の事をどう思っていますか?」「どうって、何だよ唐突に。漠然としてるな····」「ヴァニル、はっきり言いなよ。甘い血は、こ、恋の証なんでしょ」「ふふっ、そうですよ。ノーヴァ、貴方の初恋ですね」「ハツコイ·&mid

  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   血と想いの繋がり-3

     ノーヴァは俺に跨り、豊満な躯体をこれでもかと密着させてくる。動揺している俺の顎へ指を掛け、クイッと持ち上げた。「こっちのほうが喜ぶのかなって思ったんだよ。男に興味無いとか言ってたらしいし」「い、言ったけど、そういう事じゃ····」「あ。それとねぇ、昔の約束なんてボク知らなぁい」 普段と変わらない口調なのに、艶やかな微笑を浮かべてねっとりと話すだけで、随分と雰囲気が変わるものだ。 「知ってんじゃねぇか」 呆れて言葉遣いが荒れた。貴族らしい振る舞いを心掛けているのだが、コイツらと関わっていたらつい素が出てしまう。「はぁー··お前さ、何考えてんの? 何がしたいんだ? 俺の尊厳イジめんじゃねぇよ····」「尊厳··か。んー······ヴェルって童貞だよね?」 俺の顔をまじまじと見つめ、溜めに溜めて放った一言がコレ。何なんだコイツは。 何でどいつもこいつも、デリカシーの欠片も無いんだ。そもそも童貞の何が悪いってんだ。くだらない女にくれてやるくらいなら、一生童貞のままでいいじゃないか。「な、なんで知ってるんだよ」「わぁ、本当に童貞だったの? ウケる〜」「····出てけ」「はぁ?」「出てけよっ!! どうせ俺は童貞だよ! 顔が好きだの、中身とのギャップだの、金目当てだのってロクな女がいねーんだからしょうがねぇだろ! 俺だってさっさと卒業してぇよ! でもそんなの好きな女とヤリてぇだろ! 童貞が何だよ、悪いのかよ!?」 あぁ、盛大に心の内をぶち撒けてしまった。終わりだ。絶対に笑われる。もういっそ殺してくれ····「じゃあ、ボクで卒業していいよ」「&mid

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