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2ー5.調レイカは4年ぶりに辻沢に帰る

last update Last Updated: 2025-03-16 18:00:22

 なんか疲れた。駅舎の中なつかしー。お、このニオイは。山椒販売店。

「宮木野神社ってどっちですか?」

 あれはゲリ男改めセーヘキ持ちが一緒に下りてた。あー。手提げカバンも制服キャラだ。カンペキ制服系のセーヘキ持ち。なんかやだな、宮木野神社行くならしばらく方向一緒だよ。人を見た目で言うのもあれだけど、あいつの目、ゾゾゾってするんだよね。ウチのチョッカンよく当たるんだよ。マジで。あいつ行っちゃうまで山椒販売店ひやかして時間つぶそ。

 駅舎にいっぱい飾ってあるノボリ、「ゴマスリで町おこし」ってキャッチフレーズはさすがに卑屈すぎるだろって、ここ出るときは思ってたけど、今はまあ、ありかなって。ちゃんとしたスリコギだと山椒の木で出来てていい香りするんだよね。心が安らぐっていうか、ほっこりするっていうか、幸せな気持ちになるから、ウチは大好き。まあ、辻沢で山椒嫌いなのはヴァンパイアだけって言うからね。辻っ子ならみんな好き。

 スリコギ棒も売ってる。辻沢産の山椒の木だって。ゴマスリセット直販か。ふーん。今の辻沢はどっちかつーと山椒の実よりスリコギ棒押しなのかな。

「そこのお姉ちゃん」

 ビックしたー。トートツに話しかけて来ないでよ。って、お店のオジサンか。

「大きな荷物持って、お迎え待ちかい?」

 子ども扱いすんな。こう見えても3年ぶりの帰省ってやつだよ。ウチを知らないなんてモグリだね。なんてね。

「なら、ゴマスリセット、お土産に買っていきなよ」

 本格ゴマすりセット(スリコギと鉢ともに)(5400円)、MYゴマすりセット(1080円)、ゴマすりストラップ(540円)か。ショージキ、どれもイラナイ。

「これはお姉ちゃんにはちょっと高過ぎるかな。でもおすすめ。本格ゴマすりセット。もしもの時、攻撃と防御にも役立つし、ってね」

 オジサン、すり鉢かぶってスリコギ構えて、どんな勇者だっての。それで何撃退すんの? オカシイ。おっと、あのセーヘキ持ちが頭よぎった。

「じゃあ、これはどう。MYゴマスリセット。こんなでも、本物の山椒のスリコギ棒なんだよ」

お、ぐいぐい来るね。でも、イラね。

「これ! お姉ちゃんぐ
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     志野婦神社の神輿完成報告して社長によろこんでもらうはずが、あたしが余計なこと言ったせいで、社長室の温度、2度くらい下がった感じ。「ヒビキ、あんた何言ってるの? 宮大工が一生懸命仕事するのは当たり前、納期までに完璧に仕上げるのは当たり前。違うか?」「そうです」「なら、どうしてご祝儀をはずまなきゃならない? わが社は仕事に見合った金を払ってないとでも?」「いいえ。十分払ってます」「あまいぞ、ヒビキ。《《ひさしぶりに女バス仲間に会って》》、仲良しごっこが懐かしくなったか?」 ユサのこと? ひさごのことまで知ってる? まさかね。「すみません」「どうせ、現場に言っちまったんだろ」「いいえ、それはしてません。社長に相談してからと」 今のは、ほんの軽口のつもりですし。「まあ、いいよ。とにかくおまえがやってるのは、ビジネスだ。金儲け。わかった?」「わかりました」「わかったら、行っていいよ」「しつれいします」 何年ぶりだろ怒られたの。 社長室出たらカワイがすり寄ってきた。「ねーさん。めずらしいですね。社長、昨日からナンカ機嫌悪いみたいっすよ。御神輿見に行ったらしいんすよ、できあがったの。それ見て怒ったんじゃないっすかね。だからあんだけ僕がチ〇コはまずいって……」 まとわりつくなよ。一人にしてくれねーかな。そっだ、厚生室行こう。なるほど、こういう時こうやってあの部屋が呼ぶんだ。知らなかったよ。あった、バランスボール。紫の復活してる。こっちは北村シニアマネ専用だから、あたしは黄緑のにしよー。ぶーらぶーら。ケツがこそばゆい。これ、本当に心の水平リーベ棒になるのかな。もちょっと、やっててみるか。そっだ、お師匠さんのベンベン節聞きながらやってみよう。〈ビエン、ビエン。なげきのむちもあにぇはなおー、ビエン。いもとがしぇなを、ビ、なで、ビ、おろしー、ビエン、おーお、そなやにおもやるももっとも。しかし。そなたがちちははに、なごおそやったみのかほおー。これこのあねをみやいのおー……〉やっぱ癒される、

  • ザ・ラストゲーム・オブ・ 辻女ヴァンパイアーズ   7ー1.ヒビキは仕事に戻る

     女子会、結局参加した。シラベは置いといてみんな変わってなかった。修学旅行でフスマ破った張本人がシラベだったってのには納得。夜中に暴れ出したから、スオウさんとセンプクさんの二人掛かりで取り押さえたって、ははは。笑えない。高2の秋だよ、修学旅行って。例の件、センプクさんせっついたら餌やってるとこって、イミフ。 休み明け、出社早々やられた感。三社祭の公式飲料に乳製品だと? どこの誰が神輿担いで汗かいてミルクをがぶ飲みする? そこはビールとかせめてスポドリだろ?「でも、風呂上りの牛乳は格別って」 そうやってすぐに迎合するのは悪い癖だぞ、カワイ。「風呂上りじゃねーの、祭りなの」「ねーさん。とりあえず、名前考えましょ、これの」 名前すら決まってねーのよ。ついでに。ラベルとかポスターとかどうすれっての? 今から間に合わねーだろ。だれのごり押しだよ。「社長っす」 だよな。社長以外ないな。このタイミングでこれぶっこんで来れるのは。あ、社長出て来た。「ヒビキ、ゴメン。懇意の人がこれをどうしてもってさ」「商品名もまだないって」「できたばっかなんだよ。昨日。でも、おいしいから飲んでみてごらん、ホントに」 そーですね、「自分の体験を売れ!」(BY ジュース・ウェルチ)でした。うそ、ウェルチそんなこと言ってない。 ただの牛乳じゃないのは分かってる。やばい色してるんだけど、大丈夫なのかなホント。うえー、何これ。ミルクって言うより、チーズのような豆腐のような、それでいて甘くて、酸っぱくて、呑み込めない。「どう、おいしいでしょ」 おいしいですって、言いたいデスけどいまちょっと口の中に残ってるんで感想ひかえさせていただいていいですか?(無声) カワイ、お前、何とか言えよ、ん? どうした。ねーさん、苦しい(無声)。鼻から出てんぞ、牛乳。「とにかくうちはこれを大々的に売り出す。分かった?」「「ほぇーいす。」」 社長、宣言だけして帰って行った。「社長逆切れだったな。カワイ、名前何てしようか?」 「窒息牛乳。窒息ミルク。窒息ちち」 窒息から離れろ

  • ザ・ラストゲーム・オブ・ 辻女ヴァンパイアーズ   6-4.レイカ、女バスな人たちとご一緒する

     ウチはセイラの本棚物色。うーん、ブンガクな本ばっかり。ダザイオサム。ニンゲンシカクの人。サカグチヤスゴ? 誰だっけ。サクラノシタとかの人か。ナカジマアツシ。おー、サンゲツキの人。高二の現代文で冒頭の文章を暗記させられた。「ロウセイノリチョーハハクガクサイエー、テンポーノマツネン、ワカクシテナヲコボーニツラネ、ツイデコウナンイニホセラレタガ、セイ、ケンカイ、ミズカラタノムトコロスコブルアツク、センリニアマンズルヲイサギヨシトシナカッタ」。覚えてるねー。この人発狂して虎になっちゃうんだけど、それが妙にリアルでみんなすごく真剣に授業受けてたよね。 ウチはしばらくの間はうとうとしながら、カリンとセイラがゲームしてるのを遠くのほうの出来事みたいに感じてた。ときどき、「すごい。カーミラ・アシュ、カイ・ドラキュラ、一撃」 とか、「こんなに早くメアリー・シェリーにたどり着くって」 とか、「黒幕はバイロン卿だと思ってたのに」「どうしてここで、ポリドリ?」 って、気になる名前が聞こえてた。トム・ホランドの『真紅の呪縛』面白かったな。パパの本棚にあったヴァンパイア小説で3番目くらいに。 なんて考えてたらウチはいつの間にか寝落ちしちゃってて、カリンが、「よっし裏ゲーム、ゲットー! 『スレイヤー・R』」 って叫んで、ビックリして起きた。いま何時ですかね。お日様出てますね。「3時間でクリアだって。さすがチート・モード」「『スレイヤー・R』はどんな感じ? カリン」「位置ゲーみたいだけど」「カリン見て。この地図、どこか分からないように省略してあるけど、位置許可してやると、ホラ、この地形、青物市場っぽい」「フィールドロケーションは辻沢なんだ」「辻沢で何をするゲームだと思う? モンスター集めて回るとか?」「まさか。モーケモンGOじゃないよ」 お二人さん、ウチには分からない世界の住人になってる。このままゲームをやり続けるって言うけど、ウチそろそろ。「どうしたの? 用事?」「ううん。PK」「なにそれ」「パンツ変えたい」

  • ザ・ラストゲーム・オブ・ 辻女ヴァンパイアーズ   6-3.レイカ、女バスな人たちとご一緒する

    「十二時か、Vフェス終了。今回もだめだった」 ひさご出て三人で町をプラプラした。というより、セイラの家に行こうってことになって歩いてた。そしたら、道の向こうから、若い男が走って来て、「おーい、いたぞ!」 って、駅舎で山椒屋のオジサンがやったみたいな格好してる。すり鉢を頭に乗せてスリコギ持って。そしたら脇道からもおんなじよーなのが三人出てきてウチらを取り囲んだ。駅舎で見たときはなんかおかしかったけど、街なかだとあまりのぶっ飛びようにかえって怖い。「ターゲット!」「パツキン。真ん中のヤツ!」 セイラのこと?「いかにもだな」「どこの制服だ? 超レアなんじゃないか?」「おう、俺が見たことないってことは、かなりだ」 制服じゃないっしょ、明らかに。ぽいはぽいけど。「宮木野制服図鑑には載ってないぞ」 本のページ必死にめくってるやつ。「県北女子高御三家でもない」「他県のだろ?」「横の君たち! 今、僕らが助けてあげるから!」「さー、本性を現せ! このヴァンパイア」「バーカ! セイラは人間だよ」「しゃべった? ヴァンパイアが?」 向うがひるんだ瞬間、カリンが、「こんっの、キャベツに代わってお仕置きだ!」 って、キャベツの半キレ、先頭の男にぶん投げた。そのキャベツどこにあった?「いった!」「ちょっと、なにすんの」 スマフォ出した。なんなの? トーサツ?「待った。ピンの場所間違ってないか?」「あ、住所違ってる。ここ青物市場だってジャン」「おいおい、青墓だぞ、今夜の出現場所は」「青しかあってねーし」「マップ担当、しっかりしろよ」「ターゲット誤認。本隊は撤収する!」「「「スレイヤー!」」」「紛らわしいカッコすんな。ブスが!」 カリンが長芋を握りしめてる。だから、それどこに落ちてた?「やっかましー。なめてっとすり潰すぞ! こら!」「「「こえー」」」「先を急ぐぞ。夜は

  • ザ・ラストゲーム・オブ・ 辻女ヴァンパイアーズ   6-2.レイカ、女バスな人たちとご一緒する

     「十二時か、Vフェス終了。今回もだめだった」 ひさご出て三人で町をプラプラした。というより、セイラの家に行こうってことになって歩いてた。そしたら、道の向こうから、若い男が走って来て、「おーい、いたぞ!」 って、駅舎で山椒屋のオジサンがやったみたいな格好してる。すり鉢を頭に乗せてスリコギ持って。そしたら脇道からもおんなじよーなのが三人出てきてウチらを取り囲んだ。駅舎で見たときはなんかおかしかったけど、街なかだとあまりのぶっ飛びようにかえって怖い。「ターゲット!」「パツキン。真ん中のヤツ!」 セイラのこと?「いかにもだな」「どこの制服だ? 超レアなんじゃないか?」「おう、俺が見たことないってことは、かなりだ」 制服じゃないっしょ、明らかに。ぽいはぽいけど。「宮木野制服図鑑には載ってないぞ」 本のページ必死にめくってるやつ。「県北女子高御三家でもない」「他県のだろ?」「横の君たち! 今、僕らが助けてあげるから!」「さー、本性を現せ! このヴァンパイア」「バーカ! セイラは人間だよ」「しゃべった? ヴァンパイアが?」 向うがひるんだ瞬間、カリンが、「こんっの、キャベツに代わってお仕置きだ!」 って、キャベツの半キレ、先頭の男にぶん投げた。そのキャベツどこにあった?「いった!」「ちょっと、なにすんの」 スマフォ出した。なんなの? トーサツ?「待った。ピンの場所間違ってないか?」「あ、住所違ってる。ここ青物市場だってジャン」「おいおい、青墓だぞ、今夜の出現場所は」「青しかあってねーし」「マップ担当、しっかりしろよ」「ターゲット誤認。本隊は撤収する!」「「「スレイヤー!」」」「紛らわしいカッコすんな。ブスが!」 カリンが長芋を握りしめてる。だから、それどこに落ちてた?「やっかましー。なめてっとすり潰すぞ! こら!」「「「こえー」」」「先を急ぐぞ。夜

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